ぺんぎんぺーぱーちぇーす -PennLawLL.M.留学記-

University of Pennsylvania Law School LL.M.(ペンシルベニア州フィラデルフィア)を修了し、日本に帰ってきました。留学時代のことやアメリカのことなどを細々と書いていきます。

平成30年司法試験刑法再現答案

設問1
1 乙がA高校の役員会において「2年生の数学を担当する教員がうちの子の顔を殴った」と発言したことにつき、丙に対する名誉毀損罪(刑法230条(以下略す。))が成立しないか。
(1) ア「公然と」とは不特定又は多数人が認識しうる状態をいう。もっとも、同罪の保護法益が人の名誉に関する外部的社会的評価であるところ、これは特定少数に対するものでもそれを通じて不特定又は多数の者に伝播する可能性がある場合は害されるから、その場合はなお「公然と」に当たると解する(伝播性の理論)。
本件ではA高校の保護者と校長と特定され、かつ4人という少数に対して発言が行われており(判例は8人で少数としている)、この要件を満たさないとも思える。
 しかし乙が上記発言をした際特に口外しない旨告げていないし、役員会にそのような規定は見られない。実際に、乙の「徹底的に調査すべきである」との発言に基づき校長が丙や他の教員に対する聴き取りを行い、A高校の教員25名全員という多数人(判例は25名で多数としている)に噂が広まっている。
 したがって、多数の者に伝播するおそれがあったから、「公然と」の要件を満たす。
イ「事実を摘示し」とは事実が真実か虚偽かは問わない。
本件で乙は上記のように暴行の「事実を摘示し」ている。
ウ 「人の名誉を毀損した」とは、特定人の外部的社会的評価が低下するおそれを生じさせることをいい、実際に低下したことは要しない。
 本件で、「2年生の数学を担当する教員」と言っており特定の人に対するものであるか問題となるが、A高校2年生の数学を担当する教員は丙だけであり、保護者や教員は発言が丙を指していると容易に特定できるから特定性には欠かない。
 そして、教員にとり体罰をふるったという事実はその生徒を監督する立場としての丙の外部的社会的評価を低下させるものであるから、上記発言により「名誉を毀損」している。
 したがって、「人の名誉を毀損した」といえる。
(2) また、乙は上記事実を真実と信じていたものの、丙に対する恨みを晴らすために事実を摘示しており、同罪の故意が認められる。
(3) また、乙には「公益を図る」目的はないから230条の2第1項の適用はない。
(4) 以上より、同罪が成立する。
2 上記行為に丙に対する信用毀損罪(233条)が成立するかにつき、同罪にいう「信用」とは人の経済的側面での信用をいうから、これに当たらず、成立しない。
3 よって、乙には丙に対する名誉毀損罪一罪が成立する。
設問2
1 小問(1)
(1) 甲が乙の救助を行わず去ったところ、乙は意識を取り戻し崖に向かって歩いたことで転落し重症を置負い、そのまま放置されれば死亡する危険があった。
 そこで、甲が乙を救助しなかったことにつき殺人未遂罪(203条、199条)が成立しないか。
(2) ア 殺人罪(199条)の実行行為は、人の死亡結果を発生させる危険を有する行為をいう。これは原則作為によって行われるが、不作為によっても実現できる。もっとも、罪刑法定主義の見地から、不作為が作為と同価値といえる程度に限定される必要がある。
 そこで、①法令・条理・先行行為・排他的支配・危険の引受け等から作為義務が認められ、かつ②作為の容易性・履行可能性があるときにのみ、不作為が殺人罪の実行行為に当たると解する。
イ ①について
 まず、甲と乙は他人ではなく同居の親族である以上一定の条理上の義務は肯定しうる。そして、乙の死亡結果の危険が生じたのは甲が崖近くで意識を再び喪失し、更にそこで起き上がろうとして転落したことによるところ、乙が崖近くまで歩いたのは甲が「親父。大丈夫か」と声をかけた行為によるのだから、乙に危険発生の先行行為が認められる。
 そして、現場は町外れの山道脇の駐車場で、時間も午後10時30分と夜間で、車や人の出入りはほとんどなかった。仮に出入りがあったとしても、乙が転倒した場所は草木に覆われた死角となっており、山道・駐車場からは乙が見えなかったこと、そして駐車場には街灯がなく深夜で暗かったことからすれば、第三者が乙を発見する可能性は極めて低い。そうすると、乙を救助できたのは甲だけであり、一定の排他的支配が認められる。
 以上から、甲に、乙の自動車に乙を連れて行く作為義務が認められる。
 ②について
甲が乙の自動車に乙を連れて行くことは容易であり、かつそれによって乙が崖下に転落することが確実に防止できたのだから、作為の容易性・履行可能性が認められる。
ウ したがって、甲の不作為は殺人罪の実行行為に当たる。
(3) 殺人における故意(殺意)とは、死の結果発生を認識・認容していることをいうところ、甲は、乙が点灯した場所のすぐ側が崖となっており、崖下の岩場に転落する危険があることを認識した上で、殴られたことを思い出し助けるのをやめているのであるから、崖下転落による死亡の結果発生を認識し、のみならず認容していたといえる。
 したがって殺意が認められる。
(4) 乙は一命を取り留めて死亡しておらず、「未遂」に終わっている。
(5) 以上より、甲に乙に対する不作為による殺人未遂罪が成立する。
2 小問(2)
(1) 保護責任者遺棄等罪(不保護罪。218条)は「保護する責任のある者」が「生存に必要な保護をしなかった」ことにより成立する。
不作為による殺人とは、①作為義務の程度と死亡結果発生の危険の程度による実行行為性の有無、及び②殺意の有無により区別される。
(2) ①について
ア 親が子の監護義務を有するのに対して(民法820条)子にはなく、また乙の意識喪失は丙との話し合い中に発生しており甲は関与しておらず、法令や先行行為から作為義務を肯定することは困難である。
 そして、たしかに乙が崖の方に10メートル歩いたのは甲の声掛けによるものだが、これ自体は乙の安否を憂慮して行ったものであり違法な先行行為ではないし、危険状態に置くことを意図したわけでもない。
 そして、たしかに第三者が乙を発見する可能性は低く一定の甲による排他的支配は認められる。しかし、乙の怪我自体は軽傷であり、そのまま意識を回復して自力で自動車に戻ることも考えられるのだから、甲が乙の危険をコントロールできたわけではない。

 そして、乙は甲自身の声掛けに対して甲がいることすら気づかず、意識がハッキリとせず自動車と反対方向に歩いたりしているのだから、再び意識を回復し崖下の方向に歩いて転落する危険はあるが、あくまで一定の危険というレベルに留まり、落下の蓋然性は必ずしも高くない。仮に落下したとしても、5メートルの高さであれば必ず死亡するわけでもない。
 そうすると、甲が乙を排他的に支配し死亡結果発生の危険を創出したとはいえない。
イ 以上より、乙死亡の危険は低く、不作為の殺人罪における作為義務は肯定できず、同罪の実行行為はない。
(3)②について
ア 殺意に必要な死の結果発生の認容とは「死ぬかもしれないが死んでも構わない」というレベルのものが必要である。
イ たしかに、甲には乙から顔を殴られ叱責されたという動機があるし、乙が転倒した場所のすぐそばが崖となっており崖下の岩場に転落する危険があることを認識していた。
しかし、上記動機は強いものではないし、乙は「助けるのをやめようと考え」ただけであることからも、死んでも構わないとまで思っていたわけではない。
ウ したがって、死の結果発生の認容はなく、殺意は肯定できない。
(4) 甲は、乙と同居の親族であること、自ら声をかけたこと、乙の危険を認識していたことなどにより「保護する責任のある者」には当たる。そして、乙を自動車に運ぶという「生存に必要な保護をしなかった」。
(5) よって、保護責任者遺棄等罪が成立するにとどまる。
設問3
(1) 甲に丁に対する殺人未遂罪は成立するか。まず実行行為該当性を①作為義務の有無と②作為の容易性・履行可能性から検討する。
ア ①について
 たしかに、丁は甲と無関係の他人であり、何らの先行行為もないのだから、丁を救助する作為義務は存在しない。しかし、乙については、親に生じた危難について子は親を救助する義務を負うとの立場に立ち、設問2(1)のように考えると、救助する作為義務が認められる。
 そして、甲の認識では丁が乙であったのだから、甲が乙(実際は丁)を救助をするためにこれに近づけば救助することができた。
 そして、乙と丁はともに人であるからそれを救護する義務は構成要件内で符合しており、さらに、甲と同じ立場にいる一般人でも丁を乙と誤認する可能性が十分に存在したのだから、甲に丁を救助する作為義務も認めることができる。
イ ②について
 そして、携帯電話で119番通報を行い手術を受けさせることは容易であった。
ウ したがって殺人罪の実行行為に当たる。
(2) 殺意につき、甲は「乙が死んでも構わない」と思っており、死亡結果発生の認識・認容が認められる。
(3) 丁は一命を取り留めており、「未遂」に終わっている。
(4) 以上より、丁に対する殺人未遂罪が成立する。
以上

 

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憲法会社法の次にやらかした感が強い科目です。問題文を開いたときの驚きは今でも忘れられません……。

設問1

名誉毀損はもちろん抽象的危険犯ということはわかっていたのですが、伝播性のところで若干現実的ぽく書いてしまったように思います。もしかしたらうっかり「25人という多数に広まったから『公然と』といえる』」と書いてしまったかもしれません……。

あと特定性は「事実を摘示し」の構成要件で論じるべきでした。一見簡単そうな問題でしたが確実・正確に構成要件に当てはめることの難しさを知りましたね…。

正当行為とか違法性阻却とかは色々頭に浮かんだのですがぐちゃぐちゃしそうなので思い切って捨てました。結果的には犯罪は成立するのだからそこまで大きなマイナスでないといいのですが。

信用毀損はつい心配で書いてしまいましたが余事記載だったと思います。

 

設問2

保護責任者遺棄との違いについて、殺意以外は知らなかったのですが、流石にそれだけではないだろうと問題文の事情等から考えて書きました。

生命に対する危険のレベルで分ける学説があるようで、それっぽいことは途中で思いついて書いたのですが、作為義務のレベルでもわけるとして書いていたところに付け加える感じになり、ぐちゃっとしてしまったと思います。とはいえここは典型論点ではないので、この程度書ければ良かったかな?と考えています。

 

設問3

何が何やらわからず混乱したのを覚えています。再現はおそらく盛っていて、本番はもっとぐちゃっとしたことを書いたように記憶しています。因果関係とかも書いてしまったような……。難しい問題でした。

 

再現を楽しみにしている方がいらっしゃるかもしれませんが(いるのか…?)少し忙しくなってきたので残り3科目はしばらくアップしないと思います。よろしくおねがいします。

平成30年司法試験会社法再現答案

設問1
1 Dの請求
(1)Dは会社法(以下略す。)433条1項1号に基づき甲社に対して総勘定元帳及び補助簿のうち仕入れ取引に関する部分の閲覧請求を行う。
(2)ア Dは甲社の発行株式1000株の五分の一に当たる200株を有する「発行済株式の百分の三以上の数の株式を有する株主」(同項柱書)である。
イ 「会計帳簿又はこれに関する資料」(同項1号)とは、閲覧請求の趣旨が株主に対する会社の情報提供を図ることにあることから広く解すべきであるところ、総勘定元帳及び補助簿のうち仕入れ取引に関する部分はこれに当たる。
ウ 「請求の理由を明らかにして」とは、株主による濫用的閲覧請求を防止し、株主の権利と会社の経営の保護のバランスを図るために求められていることから、濫用でないことが分かる程度に対象としている文書が特定でき、また拒絶事由の判断ができる程度に具体的に記載されていることを要する。
 本件で、Aが仕入先からリベートを受け取っている疑いがあり、Aの取締役としての損害賠償責任の有無を検討するためという理由を明らかにしている。これにより濫用的でないことがわかるし、上記具体性を満たしているといえる。
(3)したがってDの請求は認められそうである。
2 甲社の主張
 これに対し、甲者は同条2項の拒絶事由の存在を主張する。
(1) 3号
ア 拒絶事由による拒絶が認められている趣旨は、会社の機密情報の漏洩を防ぎ、もって会社に損害が生ずることを防ぐことにある。
 そこで、「実質的に競争関係にある事業を営み」とは、製品や市場を考慮して、両者の事業が実質的に競合しているか、あるいは近い将来競業することが明らかである客観的事実を証明すれば足り、主観的意図の証明は要しない。
イ 本件で、たしかに、甲社とDが100%株主であり実質的な経営権を有する乙社はともにハンバーガーショップを営んでおり製品は競合している。しかし、甲社は関東地方のP県で事業を行っているに対し、乙社は近畿地方のQ県でこれを行っており、市場は競合していない。また、甲社が近畿地方に出店するような予定もなく、将来的な競合もない。
 したがって、「実質的に競争関係にある事業を営」んでいる客観的事実はない。
ウ よって同号の拒絶事由はない。
(2) 1号
ア 上記趣旨から、Dが「その権利の確保又は行使に関する調査以外の目的」を有している客観的事実を証明すればよい。
イ 本件で、Dは前述のようにAの取締役としての損害賠償責任の有無を検討するために必要である旨一応Aに伝えている。しかし、その後、甲社に対して興味を失い、Aがリベートを受け取っているかどうかは本当はどうでもいいと述べ、AにD保有株式の買い取りを重ねて求めている。すなわち、Dの請求の真の目的はAを脅迫し、請求撤回と引き換えに株式買い取りを求めることという調査と関係ない不当なものである。
 そうすると、上記事実から、Dが取締役の責任追及という株主の「権利の…行使に関する調査以外の目的」を有していることが証明できる。
ウ よって同号の拒絶事由がある。
(3)以上より、甲社の閲覧拒絶の主張は認められる。
設問2
1 小問(1)
Cは本件決議1及び2の取消しの訴え(831条1項)を提起する。Cは甲社の「株主」であり、決議日である平成27年3月25日から「三箇月以内」であるから訴訟要件は満たす。
(1) 本件決議1について
ア まず、AがDの議決権を代理行使していることは、議決権の代理行使は一般に法律上認められていること(310条1項)、甲社の定款に代理人を限定する旨の定めもないことから、適法である。
イ Cを取締役から解任する旨の議案につきCが議決権を行使しているが、Cは「特別の利害関係を有する者」に当たり、同項831条1項3号の取消事由がないか。
 「特別の利害関係を有する者」とは、議決権行使により他の株主と共通しない特別の利益を得、又は不利益を免れる株主をいう。
 本件で、決議がされればCは取締役という強大な権限を有する地位を失うことになるのだから、反対票を投じることで同地位の喪失を防ぐという他の株主と共通しない特別の利益を得るのだから、「特別の利害関係を有する者」に当たる。
 もっとも、A、B、Dの代理人としてのAの投票でCは解任案は可決されているのだから、「著しく不当な決議がされた」とはいえない。
 したがって取消事由にはならない。
ウ よって、本件決議1につき取消事由はない。
(2) 本件決議2について
ア Cの株主提案は314条1項に基づくものとして有効であるが、議長Aは、Cが提案理由としてのAの不正なリベート受取について説明しようとしたところこれを打ち切っている。「決議の方法が法令…に違反」(831条1項1号)したといえないか。
(ア)314条は取締役が説明を要求された時に発生する説明義務についての規定であり、説明が打ち切られた本件には適用がない。そこで議長Aに議事整理権(315条1項)の違反があったといえないか。
(イ)議事整理権の趣旨は、株主が経営に参与する重要な機会である株主総会を適正に運営し、もって株主の権利を確保することにある。他方で、時間的制約等の都合も無視できない。
 そこで、株主総会を適正に運営する必要性が認められ、相当なものであれば、設問の打ち切りも議事整理権の範囲内として認められると解する。
(ウ)本件株主総会に出席しているのはA、B、Cのわずか三名であり、説明などに時間的制約があったとはいえない。また、CはA解任議案の提案の理由としてAが違法な行為をしていたことを説明しようとしたのであり、その説明は議案に関連し、議決権行使の判断に必須のものである。にもかかわらず、AはCの説明は議案と関連がないとし制止し、直ちに裁決に移っている。
 したがって、上記必要性・相当性は認められないから、議事整理権の範囲内と認められない。
(エ)したがって、上記違法事由がある。
イ 裁量棄却(831条2項)の有無につき、Aの行為は自らの解任議案について自らの違法行為が曝露されることを防ぎ、もって株主が議決権行使に必要な情報を遮断し、強行採決に移っているものであり、「違反する事実が重大」といえる。
 したがって裁量棄却はされない。
ウ 以上より、本件決議2は取り消される。
2 小問(2)
(1) Aに対する請求
ア 甲社の「株主」(847条2項)であるCは、株主代表訴訟(同条1項)によりCの任務懈怠責任(423条1項)を追及する。
イ 「任務を怠った」とは会社を名宛人とする法令に違反すること及び善管注意義務(360条、民法644条)、忠実義務(355条)に違反することをいうが、利益相反取引(356条1項2号3号)を行っていれば取締役会による承認(365条1項)の有無を問わずこれが推定されるので(423条3項柱書)、当該取引該当性を検討する。
(ア)直接取引(2号)
 法が利益相反取引を規制する趣旨は、取締役が会社の利益を犠牲にして自己又は第三者の利益を得る行為を規制することで、取締役の忠実義務違反を防ぎ、もって会社ひいては株主に不測の損害を被らせることを防止することにある。そして、実質的に利益が衝突するものは間接取引として捕捉すればよいから、同号の「ために」とは「契約当事者としての名義で」の意味と解する。
 本件で、連帯保証契約はあくまで甲社と丙銀行の間で行われているから、取締役Cが自己又は第三者の名義で行ったとはいえない。
 したがって直接取引には該当しない。
(イ)間接取引(3号)
 利益相反取引を規制する趣旨は前述のとおりであるが、他方で、間接取引は外部からわかりにくく、取引に入った第三者の取引安全を確保する必要性もある。
 そこで、間接取引に当たるか否かは、外形的・客観的に見て会社の犠牲で取締役が利益を得る関係にあるか否かにより判断する。
 本件で、たしかに甲社が保証したのは甲社の取締役ではないGの債務である。しかし、Gが丙銀行から借り入れた800万円はD保有株式の買取資金であり、そして、それはAにD保有株式買取り頼まれたことに起因する。そして、Aがこの買取りをGに頼んだのは、C解任の議案についてDが反対し否決されることを恐れ、買取りを対価としてDから議決権の代理権を得ることにある(本件契約(3))。そうすると、甲社がGの丙銀行に対する800万円の債務を連帯保証することは、AがDの議決権を得ることに繋がり、Aの利益となる。
 他方で、仮に甲社が保証料の支払を受けて連帯保証をする場合には保証料は60万円を下回らないものであったにもかかわらず、甲社はGに保証料の支払いを求めないとされている(本件契約(2))。これは明らかに甲社の不利益といえ、実際に、甲社は丙銀行に保証債務を800万円全額弁済し、Gが求償に応じないことで800万円の損失が生じており、甲社の不利益となっている。
 そうすると、外形的・客観的に見て甲社の犠牲で取締役Aが利益を得ているといえるから、間接取引に当たる。
 したがってAが「任務を怠った」ことが推定され、さらにこれを否定するに足りる事情はない。
ウ 上記間接取引という任務懈怠「によって」、甲社に800万円の「損害」が生じている。
エ 以上より、Aは800万円の損害賠償責任を負う。
(2) Gに対する請求
 Gは、甲社からの求償に応じないという「過失」「によって」甲社に800万円の債務を負わせるという「損害」を与えているから、民法709条により不法行為に基づく同額の損害賠償責任を負う。
設問3
1 本件請求の効力を否定するBの主張が認められるか否かにつき、174条が株式を相続により取得した者に対する株式売渡請求権を定款で定めることができるとしている趣旨が問題となる。
2 法が、株式は譲渡が自由であるのが原則であるとしながら(127条)株式に譲渡制限(107条1項1号)を設けることで非公開会社(2条5号参照)となることを認めているのは、会社が好ましくない者を株主とすることを防ぎ、もって会社や株主の利益を守る必要性を認めるべき場合があることによる。
 そうすると、174条の趣旨は、相続により好ましくない者が株主となることがあるから、この場合に会社に売渡請求を認めることで、上記利益保護を徹底することにある。
したがって、請求が認められるのは、当該株主を排除するのが会社経営上会社や株主の利益となる場合に限られると解すべきである。
3 本件で、Cは、自らが代表取締役社長の地位にとどまりたいとの自己保身という不当な目的で、自らが議決権の過半数を確保するために最低限必要な401株についてのみ上記請求を行っている。そして、BはA及びCとの合意に基づいて代表取締役社長として職務を行うことになっており、またそもそもBはもとから甲社株式を有していたのだから、Bを排除することが会社や株主の会社や株主の利益となるとはいえない。
4 したがって、本件請求は方の趣旨に反するから認められず、Bの主張が認められる。
以上

 

 

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設問1の競業は判例があったようであっさり否定すべきでなかったようです(とはいえマイナーなので出来なくても良かったと思います)。典型論点である競業の3号に引っ張られず見慣れぬ1号もきちんと検討できたのは良かったと思います。

設問2は否決決議の訴えの利益をすっかり忘れました……。特別利害関係人はこれでなるのか?と思いつつも他に書くことが思い浮かばなかったこと、論点として落としがちで気をつけろと散々言われていたので書く選択をとりました。とはいえ判例の結論はならない模様で、厚く論じるべきではなかったかもしれません。

また、利益相反を予想しすぎてかなり対策をしていたのですが、それに引っ張られて利益供与を丸々落とすという失態をやらかしました…。

本番でもあれ…ほんとに間接取引になるのか…?とは思ったのですが…。冷静になって考えてみると外形的客観的に判断するなら今回みたいに連なりあってめぐりめぐって結果的に取締役と会社の利益が衝突するような場合は外からわからないから当たらないだろうなぁと思います。実質的に判断するとかの規範立てたならあたりうるんだろうけど…。

利益供与は苦手な論点で落としがちだったのですが、今回は利益相反で決め打ちしてしまったのでそこまで頭が回りませんでした。まぁやむを得ないかな。

設問2は難問だったようですし、一応間接取引もあり得る筋のようで、致命傷となっていないことを期待します。

設問3は株式の数に突っ込めませんでしたが、現場思考問題なのでこれくらい書ければいいのでは?と思っています。

途中答案にならず最後まで書き切ることが会社法では課題だったので、その点は良かったです。

平成30年司法試験行政法再現答案

設問1 小問(1)
1 D及びEに原告適格が認められるためには、「法律上の利益を有する者」(行政事件訴訟法9条1項)でなければならない。
 「法律上の利益を有する者」とは、当該処分により自己の権利もしくは法律上保護された利益を侵害され、又は必然的に侵害されるおそれのある者をいう。そして、当該処分を定めた行政法規が不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるに留めず、それが帰属する個々人の個別的利益としても保護する趣旨と解される場合には、このような利益も法律上保護された利益に含む。
 D及びEは処分の名宛人ではないから同条2項に示された事由を勘案する。
2 Dについて
(1) 本件許可処分の根拠法規は法10条1項である。法1条が墓地等の経営を公衆衛生その他公共の福祉の見地から支障なく行われることを目的としていることから、こうした支障発生を防ぐために墓地経営を市長の許可にかからせていると考えられる。
そして、条例は法10条の許可にかかる手続等を定めたもので(条例1条)、「法令と目的を共通にする関係法令」であるからこれも参酌すると、条例3条は墓地経営者を原則として地方公共団体とし、例外的にも、宗教法人公益法人等しか認めていない。この制限の趣旨は、営利団体にも経営を認めると競争等により墓地の環境が悪化し、結果として公衆衛生等の支障が生じるからであると考えられる。そうすると、法はDが主張する墓地の経営上の公益性と安定性も保護する趣旨であると解される。
(2) もっとも、B市はこれが個別的利益としては保護されていないと反論する。被侵害利益の内容・性質を検討すると、新たな墓地ができることによる経営悪化、墓地環境の悪化という因果関係はある程度観念的であり、利益の要保護性は高くない。そして、法、条例は経営安定のための距離制限や規模制限など具体的な基準を何ら設けておらず、近くの墓地の経営上の利益が個別的利益として保護されているとまではいえない。
(3) よって、本件土地から300メートル離れたDの墓地の経営上の利益が個別的に保護されているとはいえない。
(4) 以上より、Dは「法律上の利益を有する者」に当たらず、原告適格を有しない。
3 Eについて
(1) 前述のように法は公衆衛生の維持を目的としている。
そして、墓地は水を汚染するおそれのある死体等を埋葬する墳墓を設ける区域であること(法2条5項)、条例13条2項、14条1項(2)などが飲料水の汚染や雨水の停滞を防止する旨定めていることから、特に飲料水の安全等の周辺住民の生活及び衛生を保護する趣旨であると解される。
(2) そしてこれは個別的利益として保護されているかにつき、汚染等のおそれは墓地に近づけば近づくほど上昇する性質を有する。そして、墓地経営許可を受けるに際しては墓地の周囲100メートルの区域の状況の図面提出が義務付けられていること(条例9条2項(4))、墓地は飲料水を消費する住宅や障害福祉サービスを行う施設から100メートル以上離れていなければならないとされていることから(条例13条1項)、法は、墓地から100メートル以内の住宅やこれに準じる施設の飲料水等の生活及び衛生の安全を個別的利益として保護していると解される。
(3) 本件で、Eが経営する本件事業所は本件土地から約80メートル離れたところにあり、上記障害福祉サービスを行う施設に該当する。そして、定員に近い利用者が日常的に利用し、数日間連続して入所する利用者もいたから住居に準じる施設といえるから、飲料水の安全等の生活及び衛生の安全を確保する必要がある。したがって、Eの本件事業所の同安全は個別的利益よして保護されている。
(4) 以上より、Eは「法律上の利益を有する者」に当たるから、原告適格を有する。
設問1 小問(2)
1 条例13条1項違反
(1) Eの主張
ア Eは、本件墓地はEの施設から100メートル以上離れていないから本件許可処分は上記規定に反し違法であると主張する。
イ まず、本件許可処分は、法10条1項が許可事由につき何らの条件も定めていないこと、条例13条1項ただし書が「認めるとき」という不確定概念を用いていること、及び、墓地の性質や周辺の地形や住環境などの専門的・政策的判断を要する処分であることから、市長に許可をするについての広い要件裁量が認められる。
 そこで、①判断の基礎となる重要な事実に誤認があるか、②考慮不尽・他事考慮等により著しく妥当性を欠く判断がなされた場合には、裁量権の逸脱濫用があるとして許可処分は違法となる(行訴法30条)。
ウ 本件で、まず形式的に本件墓地は施設から100メートル以上離れていない。そこでただし書の事由を検討するに、周辺住民が生活環境や衛生環境の悪化を懸念し、反対運動が激しくなっていることから公衆衛生の観点から支障がないとはいえない。
 したがって、これらの事情を考慮せず判断していることにつき考慮不尽がある。
エ よって裁量の逸脱濫用により違法であると主張する。
(2) B市の反論
ア B市は、本件事業所はDとEが本件墓地の経営許可阻止の目的で意図的に本件墓地から100メートル以内にあるD所有土地に設置した事情があるから、これを考慮した結果裁量の逸脱濫用はないと反論する。
 これにつき、このような主観的意図を許可処分につき考慮してよいか問題となりうるが、距離制限は墓地が後から設置されたことによる飲料水汚染のおそれを排除すること等に目的があるから、墓地の許可がされるであろうことを知りながらあえて制限内に来た者の利益は保護する必要がない。したがって、考慮してよい。
イ そして、たしかに周辺住民の反対運動があるという事実はあるが、周辺住民は本件土地から100メートルを超える場所に居住するものであり、その生活環境は個別的利益として保護されていないから、特に重視しなくても考慮不尽とはいえない。
ウ よって、適法であると反論をする。
2 条例3条1項違反
(1) Eの主張
ア Eは、本件墓地の実質的な経営者は宗教法人であるAでなく株式会社であるCだから、条例3条各号に該当せず、B市は法の適用を誤っており違法であると主張する。
イ 法が経営主体を宗教法人等に限定している趣旨は、墓地経営は市民の宗教感情に適合する必要があり(法1条1項、条例13条1項)公益性を要するから、利益を目的とする株式会社等の経営になじまないことにある。
 そこで、所有権で判断するのではなく、実質的に利益を目的とする主体が経営しているか否かを考慮しなければならない。
ウ 本件で、たしかに本件墓地の所有権はAにある。しかし、Cが用地買収や造成工事に必要な費用を全額無利息で融資するという好条件でAに提案を持ちかけており、実質的な経営主体は利益を目的とする株式会社Cであるといえる。
エ したがって、上記法令の適用の違反があり、違法である。
(2) B市の反論
ア たしかに、金銭的負担は全てCが行っているが、あくまで経営しているのは宗教法人であるAである。したがって実質的な経営者は「宗教法人」であるから、条例3条に違反するものではない。
イ また、B市は、Eの主張は「自己の法律上の利益に関係のない違法を理由と」する取消しの訴えであり、行訴法10条1項の主張制限にかかると反論する。
 同項の趣旨は、取消訴訟は原告の権利救済を目的とするから、それ以外の違法は主張できないとすることにある。処分の名宛人でない第三者の場合は、原告適格を基礎付ける規定についての違法のみ主張できる。
ウ Eの原告適格は飲料水の安全にかかる距離制限についての利益に基礎づけられているから、上記主張は主張制限にかかり許されない。
設問2
1 (ア)について
(1) Aの主張
不許可処分をするにあたっての条例14条1項の構造設備の要件につき、「認めるとき」という文言を用いていること、設備は墓地の規模や周辺の地形等の専門的判断を要することから、市長の要件裁量が認められる。したがって、前述の①又は②の事由があれば裁量の逸脱濫用で違法となる。 
 本件で、本件墓地の設置にあたっては植栽を行うなど、周辺の生活環境と調和するよう十分な配慮がなされている(条例14条2項)。したがって、「市民の宗教感情に適合」するといえるから、この配慮が十分になされたことを考慮しなかった不許可処分は考慮不尽による裁量の逸脱濫用があり違法である。
(2) B市の反論
 たしかに、植栽はなされているが、それは調和の配慮の一つにすぎず、実際には周辺住民の反対運動が激しくなっていることから、「市民の宗教的感情に適合し」ているとは到底認められない。
 したがって、処分は考慮すべき事項を考慮して行われており、裁量の逸脱濫用はなく適法である。
2 (イ)について
(1) Aの主張
 法10条1項に基づく許可処分・不許可処分をするに当たっては、法が保護している利益である国民の宗教感情や公衆衛生等のみを考慮すべきであり、法が個別的に保護していない墓地の経営上の利益を考慮するのは、他事考慮による裁量の逸脱濫用であり違法である。
(2) B市の反論
 前述のように、法は一定の距離にある他の墓地の経営上の利益を個別的に保護しているわけではないが、一般的公益としては保護しているのであり、考慮すべきでない事項とはいえない。そして、B市内には複数の墓地があるが、いずれも供給過剰気味で、空き区画が目立つようになっており、本件墓地の経営が始まればDの墓地のような小規模な墓地は経営が破綻する可能性もあるところ、これを保護する必要性が認められる。
 したがって、考慮すべき事項を考慮して行った不許可処分であり、裁量の逸脱濫用はなく適法である。
以上
 

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墓埋法の原告適格は答練でやったことがあったのでラッキーでした。その時は周辺住民の健康や生活環境が法律上保護されているという話だったので、おそらく経営上の利益は個別的に保護されているとはいえないだろうと考えました。とはいえ2つの利益を別途検討しなければならないので難しい問題だったと思います。

実体違法の問題は行政法では見慣れない主張反論形式で、しかも異なる2つの立場からの主張の検討が必要で難しかったです。

今年は個別法の分量は少なく読み解きは比較的容易でしたが、法律論の組み立てが難しい問題でした。行政法は一応得意科目だと思うので良い評価が得られるといいのですが。

 

 

 

 

平成30年司法試験国際私法再現答案

第1問

設問1
1 まずDC間の親子関係の成否の検討に先立ち本件遺産分割の準拠法を検討する。本件遺産分割は被相続人に属する遺産を各相続人間で分割する手続であり、相続の問題に法性決定できるから、法の適用に関する通則法(以下略す。)36条による。
同条は被相続人の本国法を連結としているところ、この趣旨は、相続は被相続人に最も密接な関係を有する本国法によるべきことにある。被相続人Dの本国法は甲国法であるから、甲国民法⑥により、Cが相続人となるにはDの嫡出子でなければならない。
2 では、DC間の親子関係の存否の問題も、相続と関連する問題として甲国民法を適用し、同⑤によりCは嫡出子の身分を獲得するとすべきか。あるいは、甲国国際私法を適用して同②により婚姻の効力の準拠法によるとすべきか。
 たしかに、両者は密接関連性を有する問題であり、前者が後者のいわゆる先決問題といえるから、両者に同一の国の法あるいはその国の国際私法を適用すべきとも思える。しかし、異なる生活関係を分解し、各々について準拠法を決定するのが国際私法の立場であるから、DC間の親子関係の存否の問題は、別途法廷地の国際私法(通則法)により準拠法を決定するべきである。
3 そこで親子関係の存否の準拠法を考えるに、親子関係は婚姻から生じることが多いから24条1項によるべきともいえる。しかし、婚姻しても子がいるとは限らないし、婚姻以外の認知等によっても親子関係は生じうるし、同条は子の利益に一切配慮していないから妥当でない。また、親子間の法律関係として32条によるべきとも思えるが、これは親権者の決定等親子関係の権利義務についての規定であり、存否の判断には適当でない。また、28条はそれにより嫡出子となる子についての規定である。本件は嫡出でない子に親子関係が成立するか否かの問題なのだから、29条によるべきである。
 同条は1項と2項で選択的連結を採用している。この趣旨は、なるべく認知が成立して親子関係を成立させ、子の福祉を実現する点にある。また、1項後段等のセーフガード条項によりさらに子の福祉を図っている。
 本件は認知によらない母との親子関係の成立だから、1項により子の出生当時における母の本国法である甲国法が準拠法となる。甲国民法⑤により、前婚の子であるCはDAの後婚によりDの嫡出子の身分を獲得する。
4 以上より、DC間に親子関係が成立している。
設問2
1 甲国民法の改正により同⑤により発生した親族関係は消滅するとされているから、これによると、CはDの嫡出子としての身分を失い、Dの相続人となれない結果となる。
 しかし、本件は甲国法という「外国法によるべき場合」であるところ、この結果は公序則の発動(42条)により無効とならないか。
2 公序則の趣旨は、異質なルールを日本で適用することで、日本の基本的法秩序が破壊されるような結果が生じることを防止することにある。他方で、国際私法は原則として法の適用結果には関知しないし、公序を乱用すれば準拠法決定過程が無意味となるから、その発動には慎重でなければならない。
 そこで、①外国法適用結果の異常性と②内国との関連性の相関関係により発動の有無を決する。
3 ①につき、嫡出子としての身分は、相続権等の基礎となるだけでなく、憲法13条後段により保障される人格権とも関連する重要なものであるところ、一度成立したこのような重要な地位を法改正により事後的に剥奪するのは、同人を極めて不安定な地位に置くものである。したがって、適用結果は異常であるといえる。
②につき、Cは日本生まれで日本に居住する日本人であり、また、Cが相続するはずのDの財産も日本に残されている。したがって、内国関連性は強い。
以上の相関関係から、公序則を発動させるべきである。
4 公序即発動後の処理により、法改正による嫡出子身分の剥奪という結果のみを排除すればよいから、新たな法の適用を考慮する必要はない。
5 以上から、CはDの相続人となる。
設問3
1 Cの売却による持分の移転の準拠法が問題となる。
 たしかに、持分権は遺産分割の前提状態における権利であるから、相続財産の帰趨の問題として36条を適用すべきとも思える。しかし、持分権の移転においてそれは間接的関係でしかないし、直接的には不動産の物権変動すなわち権利の得喪が問題となっている。そして、登記請求権は「登記をすべき権利」(13条1項)の得喪の問題である。
 したがって、登記をすべき権利の得喪の問題として、13条2項を適用すべきである。
2 同条は原因事実完成当時の目的物の所在地法を連結点とする(不変更主義)。この趣旨は、それが当該物権変動等と最も密接な関係を有することにある。
 本件で、持分売却時の所在地法は日本法となるから、日本法が準拠法となる。
 民法は、遺産分割前の相続財産は共同相続人の共有とし、自己の持分については自由な処分を認めている(民法206条)。したがって、Cが他の共同相続人の同意を得ずに自己の持分をEに売却し、持分移転登記をしたことは有効であり、無効原因はない。
3 よって、Cの請求は認められない。
以上

第2問

設問1 小問1
1 まず、本件では管轄の合意(民事訴訟法(以下略す。)3条の7第1項)はない。
2 次に一般管轄(3条の2第1項)につき、「人」であるYの住所は甲国にあり、日本国内にはないから認められない。
3 (1) そこで特別管轄(3条の3)を検討する。同条の趣旨は、国際裁判管轄は日本の裁判所が当該事件に付き裁判所が裁判をする権利を有するか否かという問題だから、各号で、当事者間の公平、証拠の所在、応訴の負担などを考慮して裁判管轄を認めるべき場合を規定することにある。
3号につき、本件訴えは絵画の代金の返還を求める「財産権上の訴え」(上段)であるが、「金銭の支払を請求するものである場合」であるところ、Yは日本に財産を有していないから、「差し押さえることのできる被告の財産が日本国内にある」とはいえない。
4号につき、Yは日本に営業所を有しない(下段)。
5号につき、Yは甲国で個人で事業を営んでおり、日本への渡航歴もなく、「日本において事業を行う者(上段)に当たらない。
1号につき、「不当利得に係る請求」(上段)であるが、「債務の履行地」は甲国であって日本ではないし、「契約において選択された地の法」(下段)はない。
したがって同条による管轄は認められない
(2) もっとも、3条の4第1項により管轄が認められないか。
 Xは趣味で絵画の収集をしている個人であり「消費者」にあたる。Yは自己の事業のために本件売買契約の当事者となっている個人であり「事業者」にあたる。したがって、本件売買契約は「消費者契約」にあたる。そして、本件訴えは消費者Xの事業者Yに対する訴えであるところ、Xの住所は一貫して日本にあるから、同条の要件を満たす。
 したがって、同項により日本の裁判所に管轄が認められる。
4 もっとも、特別の事情があれば訴えを却下することができる(3条の9)。
本件売買契約の締結、代金の支払い、本件絵画の引渡し全て甲国で行われていること、本件絵画は甲国で著名な画家Pの作品とされており、鑑定等は甲国で行うことが適していることから証拠は甲国に存在しているといえる。また、Xは甲国に渡航しているのに対し、Yは日本に営業所等を有しない他、渡航歴すらないのだから、応訴における被告Yの負担は大きい。
 したがって、同条により却下できる。
5 以上より、日本の裁判所は国際裁判管轄を有するが、特別の事情ありとして却下できると考える。
設問1  小問2
1 契約は「法律行為」(法の適用に関する通則法(以下、「法」という。)7条)であるから、本件売買契約の有効性すなわち成立の準拠法は法7条以下による。
(1) 法7条は当事者間による準拠法の選択を認める。この趣旨は、私的自治を国際私法に反映させることにある。選択は明示・黙示を問わないが、現実の意思であることを要する。
 本件売買契約で準拠法に関する明示の定めはないほか、特定の国の法の条文への言及もなく、特定の国の法に有効な法律用語も使われていないから、黙示の選択もない。したがって現実の意思による選択はなく、同条の適用はない。
(2) 選択がない場合、法8条1項により契約の最密接関係地法が準拠法となる。そして、その際は「特徴的な給付」を行う当事者の常居所地法が最密接関係地法と推定される(同条2項)。この趣旨は、一般に契約においては一方当事者が職業的・継続的に多数の取引を行うことが多く、それらの契約の準拠法を揃えるべきことにある。そして、それは通常金銭の対価としての物やサービスの供給にある。したがって、「特徴的な給付」とは、金銭給付の対価としての反対給付をいうと解する。
 本件で、金銭給付を行っているのはXであり、その対価としての反対給付である本件絵画の引渡しを行っているのはYだから、「特徴的な給付」を行っているのはYである。そして、Yの常居所地法は甲国法だから、これが最密接関係地法と推定される。
 本件で、前述のように契約の締結・金銭支払・引渡しが全て甲国で行われていることから、これを覆す事情はない。
(3) したがって、甲国法が最密接関係地法となる。
2 (1) もっとも、本件売買契約は消費者契約であるから、法8条は排除され、契約の成立及び効力は消費者Xの常居所地法である日本法が準拠法となるのではないか(法11条2項)。同項の趣旨は、消費者は事業者に比して知識・経験等が不足し情報力・交渉力が低く不利益を受けやすいから、これを保護することにある。
(2) もっとも、同条6項により2項の適用は排除されないか。
 1号及び2号本文はいわゆる能動的消費者につき消費者保護の特例を排除するとする。この趣旨は、能動的消費者の準拠法を逐一確認することは困難であることから、国内的にのみ活動している事業者の準拠法に関する予見可能性を確保することにある。
本件で、Xは事業所が所在する甲国に赴き契約を締結し、また、甲国で履行を受けているから、これに当たる。
(3) もっとも、この場合でも、ただし書は契約締結や債務履行の「勧誘」をそこで受けていた場合は除くとしている。この趣旨は、自ら勧誘した者の予見可能性を保護する必要がないことにあるから、「勧誘」とは、積極的かつ具体的な働きかけでなければならない。
 本件で、Xは自らの意思でYの店を訪れ、価格交渉を申し出ているのだから、Yから何らの働きかけもも受けておらず、「勧誘」はない。
 したがってただし書の適用はない。
3 以上から、法11条6項1号・2号本文により同条2項の適用は排除されるから、法8条により、甲国法が準拠法となる。
設問2
1 本件訴えは、本件絵画の所有権の確認を請求するものであるから、「動産…に関する物権」(法13条1項)の問題であり、同項により準拠法が決定される。
2 同項が目的物の所在地法を連結点とする変更主義をとっている趣旨は、物権は物に対する支配的権利であるから、物の実際の所在地が適当であること、また、物権は所在地の公益と密接な関係を有していることによる。訴えにおいては、この「所在地」は、基準の明確化の観点、そして既判力はその時点の法律関係に生じると考えられていることから、口頭弁論終結時を基準とするのが原則である。
 もっとも、その時点でどの国にも属さない場所にある場合などで運送されている場合は、目的物の仕向地を「所在地」とすべきである。なぜなら、仕向地はその物の将来の所在地であり、物と最も密接な関係を有するといえるからである。
3 本件で、口頭弁論終結時において本件絵画は公海上の航行中の船舶というどの国にも属さない場所にある。そこで仕向地を検討すると、これは日本である。
4 したがって、日本が本件絵画の「所在地」となるから、日本法が準拠法となる。
以上

 

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第1問について

設問1の法性決定はこれで正しいか不明です…。ただ色々検討したので合っていれば結構点がつくと思います。甲国国際私法があったのは法廷地国際私法説について述べさせる意図だと思われます。

設問2は友達は公序で検討しておらず、初めて見た問題なのでこれで正しいか不明です。

設問3は判例があり、財産の帰属関係と物権変動で準拠法を分けるべきでした。設問1で生活関係で分けろとしながらここでは分けなかったのは矛盾ですね…。

 

第2問について

設問1はおそらくこれで正しいだろうと思います。国際裁判管轄を有するか、という問いではなかったので特別な事情による却下は検討してよかったと思います。特徴的給付や消費者の特例については直前に聴いた講座が役に立ちました。

設問2は薄い気がしますがこんなもんではないでしょうか……。

 

 

平成30年司法試験刑事訴訟法再現答案

刑訴は以前書いたように好きな科目で、そして(客観的評価はどうであれ)本番でも自分として満足がいく答案を書ききれたので、自己満足ですが再現答案を掲載します。5%ほど盛っていますが概ね本番通りだと思います。

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平成30年司法試験再現答案刑事訴訟法
設問1
1 捜査①
(1)本件捜査が「強制の処分」(刑事訴訟法(以下略す。)197条1項但書)に該当すれば検証令状(218条1項)を要するところ、令状なく行われている。そのため、「強制の処分」に当たれば令状主義(同項、憲法35条1項)に反し違法となるため該当性が問題となる。
ア 法が「強制の処分」につき厳格な手続を定めているのは、相手方の明示又は黙示の意思に反して憲法が保障する住居・財産等の重要な権利を制約することにある。そこで、相手方の意思を制圧し、憲法が保障する重要な法的権利を制約する処分をいうと解する。
イ 本件で、甲が公権力により証拠収集の目的で無断でその容貌・姿態を撮影されることを許可するとは考えられないため、捜査①は甲の黙示の意思に反しており、その意思を制圧している。
 捜査①は、憲法13条後段によって保障される、甲の公権力によってみだりにその容貌・姿態を撮影されない自由という重要な法的権利を制約しているとも思える。しかし、撮影が行われたのは公道という不特定多数の者が往来する公の場所に面した事務所の外であり、他人からその容貌・姿態を観察されることを受忍せざるを得ない場所である。しかも、撮影はわずか20秒間にとどまる。
 そうすると、憲法が保障する重要な法的権利が制約されているとまではいえない。
ウ したがって、本件捜査は「強制の処分」には該当しない。
(2)そうであるとしても上記自由は制約されうるから、捜査比例の原則(197条1項本文)の下、任意捜査の限界を超えないものでなければならない。すなわち、当該捜査を行う必要性・緊急性やそれにより制約される利益を考慮し、具体的状況の下相当といえなければ違法である。
ア 捜査の必要性・緊急性
 本件の被疑事実である詐欺罪(刑法246条1項)は最大で懲役10年が科されるし、被害額も100万円と少なくないことから、重大犯罪といえる。そして、Vの証言はステッカーについて詳細に至るもので信用性が高いところ、甲はステッカーと領収書に示されたA工務店の事務所に出入りしており、Vの証言と一致する中肉中背の男性であることからも、甲の嫌疑は濃厚である。
そして、Vに甲の犯人性の同定をさせるために甲の画像が必要であるところ、事務所の窓にはブラインドカーテンが下ろされ、両隣には建物が接しているため公道から事務所内を見ることができないため、外にいるところを撮影しなければならず、本件捜査を行う必要性が高い。
 逮捕されれば科刑が重くなりうることから逃亡のおそれがあること、工具箱等の証拠物は容易に隠滅できることから、早急に犯人を特定する緊急性もある。
 したがって、捜査①を行う必要性・緊急性は高い。
イ 制約される利益
 たしかに、動画の撮影は動きを含めた画像を保存するものであり、静止画である写真撮影に比して本件自由の制約の度合いは高い。しかし、前述のように他人に容貌・姿態の観察を受忍せざるを得ない場所での撮影であること、わずか20秒間甲の姿を撮影しただけで、プライバシーに係る言動が撮影されたわけでないことからすれば、本件捜査による甲の自由の制約は極めて微弱である。
ウ よって、具体的状況の下相当といえる。
(3) 以上より、捜査①は任意捜査の限界を超えず適法である。
2 捜査②
(1)捜査①同様「強制の処分」に該当すれば検証令状を要するため検討する。
ア 本件で、事務所という一定のプライバシーが及ぶ場所の内部の様子を公権力によって無断で撮影されることを甲が許可するとは考えられないため、捜査②は甲の黙示の意思に反しており、その意思を制圧している。
 本件では、甲の公権力によって私的領域に侵入されない自由(憲法35条1項)の制約が問題となる。たしかに、事務所は住居類似の私的領域といえプライバシーが及んでおり、その内部を撮影されることは同自由を制約しているといいうる。
しかし、撮影が行われたのは公道ではないにせよ、マンションの住人多数が往来する2階通路の小窓であり、そこから見える範囲の撮影にとどまること、撮影されたのは工具箱のみであることからすると、上記自由はそこまで重要とまではいえない。
イ したがって「強制の処分」には当たらない。
(2)そうであるとしても上記自由は制約されうるから、任意処分の限界を超えないものでなければならない。
ア 捜査の必要性・緊急性
 本件で、1週間の監視により本件事務所に出入りしているのは甲のみであると判明し、甲がA工務店の代表甲である可能性が高く、嫌疑はより濃厚となっている。さらに、甲が持っている赤色の工具箱にVの証言通りの「A工務店」と書かれたステッカーが貼られていれば犯人性を推認する有力な証拠となるところ、ステッカーが小さく、甲が持ち歩いている状態ではその有無を確認することが困難だった。そのため、たしかに、工具箱を撮影しステッカーの有無を確認する必要性は認められる。
しかし、甲が本件事件から1週間経過しても工具箱を処分せず持ち歩いていることからすると、監視を延長すれば、甲が工具箱を再び持ち歩き、休憩のため置くなどして撮影できる機会は十分にあったと考えられる。そうすると、あえて事務所内を撮影する捜査②を行う必要性はそこまで高いとはいえない。
 また、本件事件から1週間経過しても甲が逃亡せず事務所に出入りしていること、証拠物となりうる工具箱を隠滅していないことから、緊急性も低い。
 したがって、捜査②を行う必要性・緊急性は高いとはいえない。
イ 制約される利益
 たしかに、事務所に及ぶプライバシーは住居ほど高いとはいえないし、撮影はわずか5秒であり、対象も机上に工具箱が置かれている様子のみだから、継続的あるいは網羅的に事務所内部の様子を把握するものではない。また、事務所内に警察官が侵入しているわけでもない。
しかし、事務所も人が生活する空間という意味では私的領域といえ、その領域を撮影していることから侵入が認められる。そして、マンション2階の小窓から望遠レンズを用いて内部を見られることは想定しづらいこと、甲の姿が写っていないことはたまたまであるといえることからすれば、上記自由の制約は比較的強い。
ウ したがって、具体的状況の下相当とはいえない。
(3) よって、捜査②は、任意捜査の限界を超え違法である。
設問2
1 本件メモ
(1)本件メモは伝聞証拠(320条1項)に当たり証拠能力が否定されないか。
ア 伝聞証拠の証拠能力が原則として否定されるのは、知覚・記憶・表現・叙述の各過程で誤りが混入しやすいにもかかわらず、反対尋問等により吟味できず、その正確性が担保できないことによる。したがって、伝聞証拠とは、公判廷外の供述を内容とする供述又は書面で、要証事実との関係で相対的にその内容の真実性が問題となるものをいう。
要証事実(立証事項)とは、その証拠から最終的に証明しうる事実をいい、一方当事者である検察官の主張する立証趣旨や争点を参考にして証拠ごとに決定する。
イ 本件メモの立証趣旨は「甲が、平成30年1月10日、Vに対し、本件メモに記載された内容の文言を申し向けたこと」とされている。本件で甲が「V方に行ったことはありません」と述べて犯行を否認しており、甲の犯人性が争点となっているところ、上記事実は甲の詐欺罪の実行行為である「欺」く行為の存在を示すものであり、その犯人性を肯定する事情となるから、要証事実と見ることができる。
そして、その要証事実との関係では、甲がVに発言した内容をVが正確に知覚・記憶しそれ通りに表現・叙述しているか否かを吟味する必要がある。
ウ したがって、本件メモは要証事実との関係でその内容の真実性が問題となるから、伝聞証拠に当たる。
(2)伝聞証拠に当たる場合でも伝聞例外(321条以下)に当たれば例外的に証拠能力が認められるため検討する。
ア 本件で、弁護人は本件メモにつき不同意としている(326条)。
イ そこで321条1項3号の書面に当たらないか。
(ア)本件メモは「被告人以外の者」であるVが「作成した供述書」(同項柱書)である。
(イ)「供述することができ」ないとは、列挙された事由等を理由として供述不能が一定期間継続し、供述が実質的に不可能あるいは著しく困難であるこという。
 本件で、Vは脳梗塞により意識不明となり、回復の見込みはないとされている。そして、仮に回復したとしても記憶障害により取調べは不可能とされているから、Vは供述が実質的に不可能であり、「精神若しくは身体の故障」により「供述することができ」ないといえる。
(ウ)「供述が犯罪事実の存否の証明に欠くことができず」とは、それが唯一の証拠であることは要さず、犯罪事実の立証に重要で不可欠といえればよい。
 本件で、甲は被疑事実を否認しているところ、本件メモは甲の詐欺罪の実行行為の存在を立証するものであり、これに当たる。
(エ)「供述が特に信用すべき情況の下にされた」か否かは供述時の外部的事情から判断する。
 本件メモは記憶が依然明確といえる事件のあった当日に書かれている。そして、長男という信頼できる関係にあるWの発言を受けてその場で書かれており、さらにその内容は当夜VがWに話した内容と同じであった。そうするとこれに当たる。
(オ)よって、同号の伝聞例外の要件を満たす。
(3)以上より、本件メモの証拠能力は認められる。
2 本件領収書
(1)「本件領収書の存在と内容」を要証事実とする場合
ア 本件領収書は伝聞証拠に当たらないか。
イ 本件領収書の指紋・印影が甲の指紋・認め印の印影と合致していること、領収書の日付と事件の日付が一致していること、Vの名前が記されていることからすると、本件領収書が偽造であることは考えがたく、本件領収書が甲により作成されVに交付されたことが認定できる。
 そして、領収書は金銭の交付に対して交付されるものであるから、経験則上、金銭の授受がなければ領収書を交付することはおよそ考えられない。
 そうすると、本件領収書が存在すること自体が、甲・V間において金銭の授受があったことを推認させる。
 そして、その推認過程においては本件領収書に記載された内容の真実性は問題とならない。
ウ したがって、「本件領収書の存在と内容」を要証事実とした場合、本件領収書は伝聞証拠には当たらないから、証拠能力が認められる。
(2)「甲が平成30年1月10日にVから屋根裏工事代金として100万円を受け取ったこと」を要証事実とする場合
ア 要証事実を検察官主張の立証趣旨同様に上記のように解すると、甲の詐欺罪の実行行為の存在が証明できる。そして、本件領収書の記載は甲の知覚等を経て叙述されたものであるところ、真実その日時に交付されたのか、目的は屋根裏工事であったのか、金額は100万円であったのか、といった記載内容の真実性が問題となる。
 したがって、伝聞証拠に当たる。
イ 伝聞例外に当たらないか。本件領収書は「被告人」である甲「が作成した供述書」であるから、322条1項を検討する。
 「供述が被告人に不利益な事実の承認を内容とする」につき、本件領収書の記載は被告人甲の詐欺罪の実行行為の存在を承認するものであるから、これに当たる。
 「任意にされたものであると認めるとき」につき、甲は誰かから要請を受けて本件領収書を作成したのではなく、自ら作成し交付したのだから、認められる。
 したがって同項の要件を満たす。
ウ 以上より、上記事実を要証事実とした場合でも、本件領収書は証拠能力が認められる。
以上
 

 

 

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コメントなど

 

全体

捜査法から強制処分該当性と任意捜査の限界、証拠法から伝聞・非伝聞の区別と伝聞例外、と非常にオーソドックスで真っ向勝負の問題でした。

設問1はTKC・辰巳両模試で類似の問題が出ましたし、設問2も予想されていた分野なので皆のレベルは高いのかなぁと思っています。それでも、というかそれだけに、結構差が出る問題であるとも思うのですが。

 

設問1について

強制処分は多くの受験生がいわゆる井上説の規範を立てると思いましたが、最高裁判例GPS判決)が出ている以上それに従った規範にしました。

以前は平成27年の採点実感の指摘を踏まえて理由付けをもう少し書いていましたが、最高裁の見解を書く以上不要だろうと考え理由付けは短くしました(むしろ無くても良かったと思いますが)。

また、捜査②はプライバシー権にするか迷いましたが、やはりここはGPS判決を踏まえて35条の公権力によって私的領域に侵入されない自由とすることが求められているだろうと考えました(合っているかわかりませんが…)。論述も判例の表現を意識することを心がけました。事務所と住居の違いに気づけたのも良かったと思います(現場での思いつきは本当は良くないんですけど……)。

 

再現答案を作るにあたり問題文を読み返してみて思ったのですが、捜査①ではVが犯人の顔はよく覚えていないと言っている以上同定確認のための捜査の必要性を高いとしてしまったのはマズかったかな……と思います。中肉中背というのも特徴的な見た目ではないですし、若干苦しい。

捜査②は強制処分で切るか迷いましたが、捜査が進展して必要性を肯定する事情が増えていてこれを使いたかったことから否定することにしました。

そしてさらに捜査①との違いを出すために違法と結論づけたわけですが、強制処分としての権利制約を否定しつつ任意捜査としての制約は高いとしたので、説得力ある書き分けができたかは少し自信がありません(矛盾していると捉えられないといいのですが……)。

 

設問2について

辰巳の福田先生の講座を受講していたのですが、試験委員に伝聞の専門家である堀江先生が就任されたということと、昨年弾劾証拠という若干特殊な分野が出たことから伝聞が正面から聞かれると予想されていました。さらにヤマあての直前フォロー答練では領収書の証拠能力がズバリ出ました。福田先生には本当に感謝です(ネット受講だったのでお会いしたことはありませんが)。

堀江先生はリークエの証拠法の部分を担当されています。この部分の説明は非常に丁寧でわかりやすく、今回の直球の出題からしても先生はものすごく素直でいい人なんじゃないだろうかと勝手に考えていました(そういえば京大の友人が堀江先生大好きでしたねぇ…)。

前回の記事で書いたように実況見分・犯行計画メモとかが苦手な僕は前日に友達とこれについて議論していたので、問題文を開いたときは正直ニンマリしてしまいました。

 

領収書について、あとから友達に言われて気づいたのですが作成者が甲であることとVに交付されたことは証拠上認定できるとされているんですよね…。そうすると指紋とかの事情をあえて使う必要はないわけで、どういうこと?と今でもわかりません。

領収書について323条3号の特信書面の検討はありえますが(書いた人が多いみたいですが)、今回の領収書みたいに機械的に提供されず個々的に作成されるものの場合該当はしないとするのが通説だったと思います。一応その旨触れようか思いましたが時間がなかったので省略しました。

 

 

 

設問1は4頁半、設問2は3頁ちょっとでほぼ8頁使い切るくらい書きました。刑法はともかく刑訴でここまで書いたのは初めてですし、設問2で若干走ったものの書きたいことはほぼ書ききれたので満足しています。これで間違っていてもしゃーないと思えます。

他の科目も刑訴みたいに実力を出し切れたと思えれば気持ちいいのでしょうが、なかなかそうはいきませんね……。

 

他の科目は気が向いたらアップします笑。

司法試験合格(予定)体験記②

【中日】

朝9時過ぎに起きると大学へ向かいました。昨年は一日中ホテルで勉強してたのですがあの空間にずっと一人でいて気が狂いそうだったので、今年は友人がいる慣れた環境で勉強したほうが精神衛生上いいだろうと考えたからです。

若干友達と終わった試験の話などしてしまい安堵したり焦ったりしながらも、気を取り直して短答と刑事系に気持ちを向けました。短答がとにかく怖かったので刑法についてはだいたい中日に終わらせるようにしました。

それから時間がなくて消化できていなかった直前フォロー答練をザッと眺めました。刑法の不作為犯については結果的にドンピシャでした。不作為は26年の過去問もそうですが時間の経過とともに刻々と情況が変わっていくためどの段階で何の義務を認定するかが難しく苦手意識がありました。

刑訴も領収書がドンピシャでした。犯行計画メモや領収書についてはこの段階になっても自分できちんと理解しておらず、友達に色々質問したり、問題集を漁ったり、有明に戻る電車の中でもそこを重点的に確認していました。この努力が報われて良かったです。

刑事系は中日に期待する人が多いと思うんですが、2日間の疲れと、都合5日程度離れていたことから案外充実した勉強はできませんでした。そもそもわからないことをこの段階まで残しておくな、という感じですし……(結果的に出題されてよかったわけですが)。

早めに引き上げる予定でしたが中々ノルマが終わらず、結局22時に大学を出て有明に戻り、風呂に入って寝ました。

 

【4日目】

試験前

また緊張してしまい寝付けなかったのか8時に目が覚める。刑事系は苦手意識は無かったですが、論文最終日というだからでしょうか。ただ「今日は書くぞ〜」という感じでめっちゃアドレナリンが出ていたように思います。

 

刑法

問題文を開いて思わず声が出そうになりました。小問形式……?憲法に続きお前もか……。

刑法は近年はとにかくスピード勝負でいかに速くかを肝に銘じて挑む予定だったので、肩透かしを食らった感じです。おそらく、昨年が量が多すぎて単なる事務処理問題・事例演習の切り貼りじゃないかと批判されていたのでそれを受けて考えさせる問題を出そう、というコンセプトだったのだと思います。

設問1は名誉毀損の各構成要件の確実なあてはめが問われました。名誉毀損は模試でもガッツリ出題されたこと、マイナー犯罪の構成要件を確実にするのを個人的課題としていたことからここは丁寧に(むしろ丁寧すぎるくらい)できました。判例が8人で少数、25人で多数としていたことも覚えていたのでうまく処理できました。

実は模試のときは公然わいせつが3人でも多数になるんだから名誉毀損もなるんじゃない?と伝播性の理論を無視して5人くらいで多数と認定して失敗していたのでした。

 

設問2は刑法としては珍しい主張反論方式で戸惑いました。不作為の殺人それ自体は時間経過による状況変化がなく、過去問やフォロー答練に比べれば簡単でした。

しかし、不作為の殺人と保護責任者遺棄致死の違いは殺意の有無ということは知っていたのですが、問題文を読むとなんだか作為義務の程度や危険の程度でも違いを設けるべきような気がしてそれも書いてしまいました。試験現場での思いつきは良くないんですが、殺意だけで区別するのはどうにも納得がいかず……。

合ってるか怖くて確認できなかったのですが、先輩と話したところ殺意の有無だけではなく作為義務の程度でも区別するのが通説のようです(遺棄罪を生命・身体に対する危険犯と理解する立場。山口刑法各論第2版38頁など)。

ここ間違っていたら大幅な失点だったので安心しました……。しかし、ここはあまり議論されていない箇所のように思うのですが、相場観としてはどんな感じだったんですかね?単に僕が知らなかっただけでしょうか…笑

設問3は難問だったと思います。ろくに書けませんでしたが、ここでは差がつかないと信じたいと思います(自分がわからない問題は他の人もわからないはずだと自信をもつことが重要です)。おそらく今回の問題は設問1の丁寧さと設問2で作為義務の程度についても書けたか否かで勝負が決まっているはずです(と信じたい)。

 

刑訴

刑訴は前回の記事で書いたように直前に勉強していた領収書が出たので、問題文を開いて目に入った瞬間笑ってしまいました。

とはいえこういうときほど余計なことを書いて失敗するというので、落ち着いて問題文を読むように意識しました。捜査も超典型論点だっただけにあてはめで差をつけられないようにスピードは保ちつつ事実を拾い評価をつけていくことを徹底しました。結果、なんとか証拠に40分弱程度残しつつ捜査を4頁半書けました。

それにしても、伝聞は平成22年あたりの問題に比べればかなり素直になったと思いますが、それでも全体の検討量は多いですね。事前に理解していないとその場で考えているようでは確実に時間が足りなくなるだろうと思います。

 

試験後

ホテルで一息つくとすぐに友達とモールに向かい短答を詰め込みました。

刑事系は2科目なので1日目、2日目に比べれば疲労はそうでもないですが、短答をしくじれば今までの努力が全て水泡に帰すと思うと恐怖心は一番であったかもしれません。それでも、模試でも論文は良かったこと、そして本番でも論文がそこそこできた自信があったことから、短答さえ通れば受かると自分に言い聞かせてがんばれました。

とはいえ、刑法はわりと完成に近くありましたが(それでも執行猶予とか総論部分は気力がわかず結構捨ててしまいました)、民法は全然全体が終わらないし憲法も統治をしばらく放置してしまったし、膨大な知識量を前にして絶望する思いでした。3科目で良かったと心底思いました。これを7科目もやっていた先輩方にはとてもではないですが頭が上がりません。

21時半過ぎにホテルに戻り、風呂に入って少しやり、しかし疲労がピークだったので残りは朝にやろうと諦めて寝ました。

 

 

【最終日】

試験前

7時過ぎに起きました。慌てて部屋を片付け(本当に直前に慌ててばかりだ……)、机に向かって民法を見直しました。もう時間がないのでパーフェクトの印がついているところをひたすら見ていくだけです、が、それでも集中力がものすごいので頭に入っていきます。

論文の試験前の詰め込みはあまり意味が無いと思いますし、それより答案全体やあてはめのイメトレをしたほうがいいと思いますが、短答は過去問がそのまま出ることが多いので直前までの勉強が本当に活きると思います。

会場についても直前まで勉強しました。緊張で頭がどうかなりそうでしたが、あえなく試験開始を迎えます。

 

民法

年度別に過去問を5年ほどやって時間管理に気をつけていたので時間内に一応終えることができました。しかし難しかったです。本当に民法が苦手で泣きそうになりました。これでも一応民法ゼミだったのですが……

試験が終わるとすぐさま憲法の百選とパーフェクトを見返しました。直前にできることを最後までやります。

 

憲法

案の定というか有名重要判例のオンパレードでした。どんだけ旭川保険条例事件が好きなんでしょうか??全体的に比較的スラスラ解けたと思います(とはいえ、蓋を開けてみれば細かい部分でひっかかっていましたが…)。統治はなんだかんだでそこそこできました。

試験が終わると昼食を食べながらひたすら刑法の詰め込みです。さっきも直前に見た判例が出たりしたので恥も外聞も捨て悪あがきを心がけました(試験前に余裕をぶっっこくのが目標でしたがその目標は恥とともに捨てました)。

他方で、不安だった民法憲法が終わったからか、はたまたいよいよあと残り一科目のみだからか、張り詰めていた緊張の糸がプツンと切れ猛烈な吐き気に襲われました。考えてみれば寝不足ですし起きてから試験中も休み時間もずっと勉強していたのです。おにぎり2個食べて糖分補給のロールケーキも半分食べたのですがなんでこんなものを食べてしまったんだろうと後悔しました。

 

刑法

学説問題でうへぇ……となり一度飛ばしましたが、戻って考えてみたらなんとか解けました。その他も徹底的に判例を読んだことが幸いしスラスラと解けました。

おそらく全体で肢2つだけ間違えたのですが、両方ともよく考えればわかったはずなので悔いが残るところです(信用毀損と横領の親告罪)。

とはいえ、最後まで考えて事なきをえた問題もありました。「おまえの妻Bをひどい目に合わせてやるという脅迫文が家に届いたが実際には妻ではなく内縁の妻。脅迫罪が成立するか」といった問題で、「別に内縁だろうと妻だろうとあんまり変わんないし……Bと名前も出てるから特定性も十分だし支配圏に到達してるし……。え、これ成立するよね?でもそうすると数が合わない……え?」と頭が爆発しそうだったのですが、終了10秒前くらいに、「あ、そうか脅迫の対象は民法上の親族に限られるんだから内縁の妻なら成立しないじゃないか」と気づけたのは本当にホッとしました。最後まで諦めず考えることが大事ですね。

 

 

試験後

というわけで試験が全て終わりました。短答の結果も気になりますし最終的な合否も気になりますし、論文の回答筋も気になりますし全く気が晴れません。とはいえ最後まで受けきれたことに一応は安堵です。

父に連絡をし、一緒にゼミをしてきた友達と苦労を労い合いました。そのまま打ち上げで飲みにでも行こうかと思っていましたが、疲れていたためまた今度ということになり友達とタクシーに分乗して家に帰りました。

家は現在シェアハウスに住んでいるので、そこの皆がおかえりーおつかれーと迎えてくれたのが嬉しかったです。試験前1ヶ月くらいは皆が顔を合わせる度に「試験いつだっけ!?そろそろ!?」と煽ってきて正直うんざりしていたのですが、何やかんやと言いつつ応援してくれていたので感謝です。「ま、多分受かったかな!」と虚勢を張りつつ内心はビクビクでした。とりあえず2ちゃんに張り付きサッサと短答の採点をしてしまいました。刑法が46点だったのでまぁこれなら足切りはないだろうと考える暇も与えないように憲法民法も採点し、無事に130点を超えていたのでやっと一安心し一息つけました。

 

というわけで長い長い5日間が終わり、久々に自分の家のベッドで眠りにつきました。本当にしんどい試験でしたが、目標に向かって毎日頑張る日々は幸せでもありましたし、論文で満足のいくあてはめができたときは楽しい勉強でもありました。

というわけで合格を祈りつつ体験記を終えます。

 

司法試験合格(予定)体験記①

無事に司法試験を受験し終わることができました。

改めて、体力・精神力ともに限界まで削られる試験ですね……。二度と受けたくないと思いました。

 

まず苦手な短答ですが、なんとか130点以上をとることができました。一安心です。

最終合格者平均にはいかないでしょうが、短答合格者平均はなんとか超えられそうです。

民法

目標の60点には届かず50点前後でした。大崩れせず良かったものの、最後まで克服できなかったのは残念です。

憲法

重要判例を読み込むという作戦が功を奏し、35点前後でした。ただ、専門家でも見解が分かれる問題を出すのは相変わらずどうかと思いました…。

刑法

苦手な学説問題を克服し全問正解することができました。マイナー犯罪の判例六法読み込みも効き、46点前後でした。

というわけで刑法に救われた形です。本当に良かった……。

 

さて、結果はわかりませんが自己満足的備忘録的意味で合格(予定)体験記を書いておきます。

 

【前日】

前々日までに民事系のインプットに目処をつけて公法・国際私法のみやる予定でしたが民事系が中々終わらず結局この日の午前中までやっていた気がします。このままじゃ永遠に終わらないと見切りをつけて公法の答練の復習をザッと終わらせ、国際私法の今まで解いた全年度分の過去問をザーっと見返しました。

それも中々終わらず、15時くらいには大学を出て有明のホテルに向かうつもりでしたが、結局ホテルに着いたのは19時くらいでした。コンビニで買った夕食を部屋で食べ、風呂に長く浸かり(今住んでる家にはシャワーしか無いのでホテルに泊まる機会があるとこここぞとばかりに長く入る)、国私を詰め込んで睡眠薬を飲んで12時頃寝ました。ただ全然寝付けず相当うなされ何度も目が覚めました。

 

【1日目】

試験前

7時過ぎには起きるつもりでしたが中々寝付けなかったのもあり(睡眠薬を飲んでも寝付けなかったのは珍しく、緊張していたことが伺われます)、起きたのは8時過ぎでした。普通に寝坊です笑。

父と彼女から連絡が来ていたので慌てて返し(僕が寝坊しがちなので毎回連絡してくれていました)、トマトジュース、プロテインと粉飴の牛乳シェイク、スタバのコーヒーのペーパードリップ、バナナ、果物入りヨーグルト、レーズンパンという朝食(ここ数ヶ月まったく同じ朝食を摂るようにしていました)を食べて、さっと国際私法を見返して試験会場に向かいました。

会場に9時くらいについて一息つくと後ろから◯◯と小さい声で僕の名前が呼ばれました。なんとローで仲の良かった(しかしよくケンカをする)友人が斜め後ろに座っていたのでした。腐れ縁もここまでいくとすごいです。これでだいぶ緊張が和らいだように思います。

 

国際私法

昨年国際取引法が出たため出ないだろうと思っていたところ案の定出ずに安心しました(ウィーン売買条約は得意ですが、信用状取引等は捨てていました)。

第1問の最初が法性決定で悩む問題で難しかったですが、それ以外は通則法、国際民訴からのスタンダードな問題だったと思います。

模試後ネットの講座を取って全年度の過去問をザッと全てやり直し、趣旨や反対説等もかなり自分のノートに補充したのですが、それがかなり活きたように思います。

 

憲法

国際私法がわりとできたのでいいスタートを切れたわけですが、憲法の問題文を開いた瞬間愕然としました。問題文が会話形式でしたし、何より設問がいわゆる三者間形式でなくなっていました。

正直、相当焦って冷や汗が出ました。僕は憲法はとりわけ直近2年の問題や採点実感等、そして昨年公法系1位の答案を徹底的に研究し、いかに形式を守ることが高得点に繋がるかがわかっていてそれを守ることだけを考えていたのに、それができなくなってしまったわけです。

判例を意識して、というところにだいぶ引きづられてしまい、答案のバランスがうまくとれなかったと思います。悔いが残るところです。

おそらく、問題が研究し尽くされて中身がスカスカでも形式が守れていれば(さらにたいして判例を意識しなくても)高得点がついてしまうことを憂慮しての形式変更だと思います。

まぁ真の憲法の能力があればどのような問題にも対処できるはずなので、そういう意味では言い訳ができないことではありますが、過去問を研究してきた人ほど焦った問題だったと思います。

わいせつ文書の規制という内容も、たしかにオリンピックを迎えるにあたり社会的に問題視されている観点で、僕自身もアメリカではコンビニとかには置いてなくて日本の特殊な部分だよなーと考えたりしていましたが、それだけに(?)色々と言える部分が多く、問題文から離れず書くのが難しかったと思います。

 

行政法

原告適格と裁量論というある程度予想していた出題でした。

しかも、個別法が辰巳のスタ論スタートという講座でやった墓埋法そのもので、ラッキーでした。墓埋法の原告適格は講座のものより難易度が高かったので、二人の書き分けという意味でも難しい問題だったと思います。

裁量は裁量基準がなかったためあてはめ勝負でした。憲法で消えた主張反論形式が出てかなり戸惑いましたが、概ね書けたと思います。

 

試験後

ホテルに戻って軽く食事をし民事系の勉強をしましたが全然頭に入ってきません。とはいえ模試の経験から1日目の夜にまともに勉強できるとは思っていなかったので、重要なところをサッと眺めてあとは翌朝にやろうとある程度諦められました。

しかしメンタルが相当キツイ夜でした。なんでこんなに辛い思いをしているんだろうと思いました。1日目の疲労、憲法の衝撃、そして明日は一番暗記量が問われる勝負の民事系……、まとめノートを全て完全に覚えているわけではない……。

司法試験は1日目、2日目の負担が重すぎるというのはよく不満が上がるところですが、あえて受験生に負担をかけてメンタルの弱い、あるいは試験前に詰め込みをしようとしている受験生を落とす?意図なのかなと勝手に思っています。

普段は親や友達に泣きついたりあまりしないんですが、学部のゼミとローが一緒だった友達にしんどいとLINEしたところ電話をしてくれました。友達と話すとだいぶ不安が取れるものです。お陰でなんとか心が折れずに済んだと思います。

 

 

【2日目】

試験前

緊張はだいぶ解けたのか睡眠薬がよく効き勉強中に寝落ちし、朝7時過ぎに目覚めると民事系のノートがベッドに散乱している状態でした。

昨日と同じ朝食を食べ、軽くシャワーを浴びて、机に向かい民事系の最終確認をし、9時頃に試験会場に向かいました。

 

民法

設問1は落ち着いて条文から考えられ、よくできたと思います。

設問2は苦手だった所有権留保が出ましたが、ある程度予想して直前に見ていたところだったので比較的できたと思います。登記の問題も自分なりに処理ができたかなと。

設問3も予想していた相続させる旨の遺言でしたが、何を思ったか時間がなくて焦ったのか、金銭債務を預金債権と同様に不可分債務と書いてしまいました……。預金債権についてはきちんと書けたので、大きく減点されていないとよいのですが。

 

会社法

予想していた帳簿閲覧請求と利益相反間接取引が出ました。

帳簿閲覧請求は典型的な競業の問題ではありませんでしたが、落ち着いて処理できたように思います。株主総会取消決議は答練か模試で出て復習していた議長の議事整理権で書くことができました(おそらく説明義務違反で書いてしまう人が多いだろうなぁ〜と思いながら)。ただあとで友達と話してどうやら利益供与の論点を落としてしまったようでへこみました。Gについては全くわからなかったので飛ばしてしまったんですよねぇ……。

利益相反については徹底的に対策していたのできちんと処理できたと思います。非常に登場人物の関係が複雑でややこしかったですが。

最後の174条の問題はどこかで見覚えがあったのですが、あとで友達と話したところローの期末試験で出ていたらしいです。まぁこの問題は趣旨から自分で規範を定立してサラッと処理できればよかった問題だと思います。

 

民訴

民法・会社は一応そこそこできたと思い、ここいらでなんだか試験を受けるのが楽しくなってきました(ランナーズハイみたいな?あるいは疲れすぎておかしくなったか…)

民訴は弁論主義も既判力もでずかなり肩透かしを食らった感じですが、ある程度予想していた文提が出ました(ほんとに出るんだなぁとなんだか笑ってしまいました)。

補助参加の問題は難しかったですが、落ち着いて条文を見て一応の回答は書けたと思います。

 

試験後

彼女が有明まで来てくれたので近くのモールでもんじゃ焼きとお好み焼きを食べました。

試験中に何をしているんだというように思われるかもしれませんが、自分的にはこれくらいの余裕が無いくらいではダメだと前々から決めていたので、一度リラックスできて良かったです(模試のときも2日目終わりはたいてい外で遊んで帰りました)。一瞬だけでも試験のことを頭から置いて、またすぐに切り替えることが重要だと思います。

 

 

というわけで次回は中日から最終日にかけて書いていきます。

不安を飼いならす

youtu.be

 

ご無沙汰してます。すっかりブログからも遠ざかってしまってました。

司法試験まで1ヶ月を切りました。司法試験ブログではないのですが、決意表明と自分への確認的な意味で、模試の結果が出たのでこれを晒して、ここまでの勉強を振り返って思うところを少し書いて、今後の課題と方針を書いておこうと思います。

 

TKC模試

【判定】

総合 B 上位16.6%  331位/1991人

論文 B 上位12.0%

短答 D 上位62.7% 

 

【論文】

公法系 A 上位5.8%[憲法 A 上位7.6% 行政 B 上位11.4%]

民事系 A 上位6.4%[民法 B 上位11.4% 会社 B 上位13.0% 民訴 B 上位15.4%]

刑事系 C 上位42.9%[刑法 D 上位59.5% 刑訴 B 上位27.7%]

選択科目(国際私法) E 上位74.1%

 

 

辰已模試

【判定】

総合 A 上位15.4%  325位/2102人

論文 A 上位15.5%

短答 C 上位57.2%

 

【論文】

公法系 A 上位19.3%[憲法 C 上位41.0% 行政 A 上位10.5%]

民事系 B 上位23.1%[民法 A 上位12.7% 会社 C 上位50.6% 民訴 B 上位26.6%]

刑事系 A 上位7.5%[刑法 B 上位22.2% 刑訴 A 上位 5.2%]

選択科目(国際私法) C 上位48.4%

 

ということで、なんとか両方の模試で合格推定に入ることができ、ホッとしました。

ただ、短答がギリギリで冷や汗をかいています……。

良くも悪くも、総合、論文、短答ともどちらもほぼ同じなので実力が反映されている?と思います。

 

1 ここまでの勉強の振り返り&模試の感想

(1) 全体的に意識したこと

起案中心

今年は昨年とは違ってとにかく答練や過去問を実際に解いて書くということを勉強のメインにしました。だいたい答練と過去問で各科目15〜20通くらいは起案したと思います。なぜなら、以下のように利点が多いからです。

①実際にアウトプットしてあてはめの練習をすることではじめて論点を理解できる

②重要論点に必然的に何度も触れることになり、知識に強弱がつけられる

③受験生の相場観がわかり、必ず解けなければいけない問題とできなくてもいい問題がわかってくる。論述に力を入れるべきところがわかってくる

④自分のできなさを痛感することでモチベーションを維持できる

⑤わからない問題に直面したときの処理方法を学べる(意外と条文や趣旨から考えれば点がつく)

⑥時間管理、論述の配分管理ができるようになる

⑦一日中自習だとどうしてもマンネリ化してしまうが、起案や解説動画の視聴を入れるとメリハリが出る

たくさん問題を解いてみて、司法試験は知識が半分、問題の解き方が半分ということがよくわかったような気がします。特に公法系や刑法では、2時間をどう使うか、どこに力を入れて書くか、という書き方の違いだけで全然点数が変わってくると思います。実際に起案して解いた問題の数が力に直結する部分がかなり大きいと思いました。

 

友達に訊く

それと、ゼミや普段の勉強からわからないことはすぐ友達に訊くようにしました。これによって自分の理解があってるか確認できますし、皆が同じところで悩んでいるということがわかったり、そこは深入りしすぎないほうがいいと教えてもらったりすることで、勉強の強弱の方向性や時間の使い方がブレないようになったと思います。

 

(2) 昨年の反省

昨年は留学帰りで時間がとにかくなかったのもあり、得意だと思っていた刑法、コスパが良さそうな憲法や国際私法で勝負しようという戦略を立てました。

しかし、刑法は近年は問題の難易度が安定していること、種本が明らかであることから受験生のレベルが結構高く、高得点を採るのは中々難しい。憲法は確かに覚えるべき知識は少ないものの、運の要素が強く頼るべきではない。国際私法はあくまで選択科目であり、基本科目ができるのを前提とすべきである、と考えました。

そして、民事系全体に苦手意識があったのですが、民事系は科目数が多いこと、そして勉強量が点数に反映されやすいことから、ここに一番時間を割くべきだと考えて、今年は民事系全体の克服を目指しました。結局民事系(特に民法)から逃げていては合格は覚束ないと思いました。というわけで起案以外の勉強の多くの時間は短答と民事系に当てました。

 

(3) 各科目

民事系

ということで今年一番勉強した民事系ですが、だいぶ苦手意識は払拭できました。

民法は範囲は広いものの勉強量が確実に反映されますし、請求の立て方や条文から考えるという思考に慣れれば未知の問題が出てもなんとか対処できます。

会社法はとにかく判例を知っていればよく、そして意外と受験生のレベルが低く、かつスピード勝負の科目なので、基本論点を悩まず書いて時間を稼いで、831や423、429等のあてはめ重視の問題で量を書ければ点数は安定すると思いました。難しい問題はできなくてもたいして気にする必要はないと割り切れるようになりました。

民訴はとりわけ苦手意識が強かったのですが、受験生全体でも苦手としている人が多くレベルはそこまで高くありません。既判力、弁論主義、処分権主義等の重要概念をきちんと正確に理解すればあとはその応用にすぎませんし、判例の射程問題でも誘導にしっかり乗って原則例外の枠を守れば点はつくなと思いました。

模試の結果を見ても、辰已の会社法はしくじりましたが総じて民事系はよく、勉強の成果が出て嬉しく思います。特に民法はずっと苦手意識があったので、多少は克服できたのかな?と思っています。

 

公法系

公法系は問題を解いて復習する以外たいして勉強はしていないのですが、どちらも良かったので正しかったなと思います。

特に行政法はひたすら答練・過去問で練習するのみだと思います。やることは結局毎回同じなので、もしかしたら一番安定しやすい科目かもしれません。原告適格・処分性・裁量論は何度も実際に手を動かしてみなければ正確に書くことは難しいです。

裁量論は毎年のように出ているのにきちんと書けている受験生は多くありません。裁量が認められることを形式的理由・実質的理由双方から認定する。それが誰のどの判断に対するどんな裁量なのかを明示する。裁量基準がなければ裁量の逸脱濫用の規範をきちんと立てる。裁量基準があればまず行政規則には法的拘束力がないこと、にもかかわらず裁量基準として考慮すべきである理由をきちんと書く。合理的な裁量基準に従っていれば原則適法となることを理由とともに書く。そしてその合理性を検討する。合理的であっても個別事情審査義務に違反していないかを別途検討する。当たりまえのようですが、当たりまえに見えることを確実に行うのは案外難しいし、かつそれが一番重要であるということが多くの起案を通して身に沁みました。行政法はとにかく時間が厳しいので個別法の解釈以外の知識の部分で悩んでいるようでは絶対に最後まで書ききれません。

憲法はとにかく原告をコンパクトに抑えて私見に時間を残すことを強く意識しました。特に近年の問題や今回の模試両方のように2つの請求がある場合は時間が確実に足りないのでこれが重要です。答案政策の重要性が極めて高く、抽象論には配点がほぼ無さそうなので理論や知識はごく少量で足りるなと思いました(短答には必要ですが…)。判例に引きつけて考えることは当然重要ですが、それができないことを恐れるよりも、むしろそれに気を取られて目の前の問題文の事情から離れてしまうことを恐れるべきということに気づきました。

というのも、僕は情緒的な人間でしばしば登場人物に感情移入してしまい、つい私見で原告か被告に肩入れしてしまって筆が滑ってしまうということがよくありました。それが反省点です(辰已でも可哀想な原告に感情移入してしまい本件ではそこまで要求されていないことをだらだらと書いてしまいました)。平成29年の問題のように被告の反論は問題文に明示される可能性が高いので、愚直にそれを書くように意識したいと思います。上に憲法に頼るべきではないと書きましたが、そこさえ外さなければ憲法である程度の上位を取ることは難しくなさそうです。

 

刑事系

刑法はどちらも伸び悩んでしまったのが悔しいです。やはり受験生のレベルが高い科目だと思います。それだけに細かい気配りの積み重ねで点差がついてしまうのだと思いました。特に各論の構成要件の定義の正確さ等色々な部分で改善すべき点が見えてきました。事実の摘示と評価は比較的得意なのですが、むしろあてはめで書きすぎてしまうきらいがあるので、憲法同様筆が滑らないように意識する必要があると感じます。刑法は近年は量が多いので、何よりメリハリをつけることが最重要です。どこに山をもっていくかを決めて、それ以外はアッサリ書く(あるいは捨てる)勇気を持ちたいと思います。

刑訴は捜査法が比較的取り組みやすく証拠法・公判が難しいというイメージを持っていることが多いと思います。僕もそうなのですが、意外と捜査法は理論的な部分の詰めが重要かなと思いました(考えれば考えるほど納得できない部分が増えてはくるのですが)。そこの詰めがしっかりできればあてはめもスムーズにできます。捜査法は科目として面白く、友達と一番議論したなぁと思います。

刑訴でよくある失敗が捜査法で書きすぎて証拠法が極端に薄くなる、ということですが、捜査法はやはりあてはめ重視なのであてはめを簡略化することもできないと思いました。そこで僕は捜査法は典型問題に慣れることで十分な量を速く書くということを目標にし(つまり量は維持しつつ速く終える)、ある程度達成できたと思います。すなわち証拠法や公判にしっかり時間を残して、伝聞の推論過程等も丁寧に書くことができるようになったきたと思います。

 

国際私法

国際私法は答練がなかったのもあり、今年はほとんど放置してしまいました。確かにそこまで勉強量が必要な科目ではないのですが……。

 

短答

短答が相変わらず苦手で、どちらの模試もギリギリだったのでこの点はかなり落ち込んでいます。論文が良かっただけにもったいないですし、この期に及んで短答の心配をしている自分が嫌でなりません。

今回は特に得意な刑法でどっちも沈んでしまったのが痛かったです。細かい知識の正確性がまだまだだと反省させられます。憲法も重要判例の判旨が不正確だったり、人権分野での間違いが目立ちました。そしてやはり配点の高い民法の実力が足りていません。論文は比較的できてきたのに短答がイマイチなのは、良くも悪くも論文を起案量の慣れで乗り切っているということなのかなと思います。

 

2 残りの勉強方針と課題

(1) 全体

集約型

色々不安になって手を広げたくなってしまうのですが、血迷わず、今までやってきたことを淡々と確認し、身につけるようにしたいと思います。つまり、いわゆる拡散型の勉強ではなく集約型の勉強をしたいと思います。

具体的には今まで解いてきた過去問や答練の論点を復習しつつ、自分の答案と配点表を見比べて、あと5点、あと10点とるにはどうすればいいか、ということを意識したいと思います。最終的には答案で何点とれるかなので、常に答案でどう書くか、何は書かなくていいか、ということを意識して勉強したいと思います。

 

優先順位の高いものからやる

どうせ全てを完成させるのは無理なので、優先順位の高いものから確実にしていきたいと思います。ここが出たら嫌だなぁという穴を潰しつつ、典型重要論点がスムーズに書けるかを確認したいと思います。

 

起案は続ける

同時に、インプットばかりやって問題を解く感覚は失いたくないので、過去問の起案はある程度は続けたいと思います。

 

 (2) 各科目

民事系

基本的には答練と過去問を復習しつつ、えんしゅう本と百選を回したいと思います。特に民法会社法は常に条文を手元に置いて本番をイメージすることを意識したいです。特に会社法は目次から条文を引くことがまだ課題です。条文を探すのに時間がかかることが多いので、論点ごと、さらに知らない分野でもすぐに条文が引けるかを確認したいと思います。

中身について、民法は出題が予想される担保物権家族法、さらに債権譲渡等苦手な分野を中心に論証を確認したいと思います。会社法は百選のA、Bランクを中心に復習したいと思います。民訴は昨年のような重要概念の問題とそれ以前の判例の理解を問う問題双方の出題が予想されます。そこで、弁論主義、自白、処分権主義、既判力についてはもう一度基本書などを用いて理解を確認し、かつ百選のA、Bランクを中心に復習したいと思います。特に苦手な複雑訴訟と上訴についてはそれぞれの制度趣旨や規範、あてはめについて確認したいと思います。

 

公法系

憲法は短答対策で百選を復習。あとは答練、過去問の参考答案を見ながらどうやって構成するか、どういう対立軸を置くかをイメトレしたいと思います。また、社会権や私人間効力等書き慣れていない問題のフレームワークを決めておくことも課題です。このあたりは問題集などを参照したいと思います。

行政法原告適格、処分性、裁量論の処理とあてはめを再確認し、さらに各訴訟要件について要件と定義を覚えて本番でスムーズに処理できるようにしたいと思います。コンパクトに論じるところと丁寧に論じるところのメリハリをつけて時間内に終えるように。

 

刑事系

刑法は間接正犯の知情類型や共犯など総論でいくつか理解があやふやな部分を確認したいと思います。あとは各論の構成要件と定義。比較的マイナーな犯罪も含めて漏れなく正確にあてはめられるようにすることが課題です。重大な法益侵害を拾う、争点となる犯罪を拾う、という意識でメリハリのついた論述を心がけたいです。

刑訴は証拠法の犯行計画メモや実況見分調書など苦手なところと、公判の訴因の特定や認定など苦手な部分を潰したいと思います。

 

国際私法

今年一番勉強していない科目です。 民事系に十分な時間を割くという戦略自体は正しかったと思いますが、流石にこれではマズイので、残りでなんとかそこそこレベルまでは上げれればと思います。やはり一科目でもFを取ると厳しい……。

去年は結構勉強したので、前にやった過去問、基本書、論証、問題集をザッとをやり直して記憶を喚起したいと思います。法性決定で議論があるところを押さえる、反対説を押さえる、趣旨を充実させる、このあたりが課題です。

 

短答

ここに来て最大の課題が残念ながら短答です。昔からマークシートが苦手なんですが、最後まで苦しめられます……。

対策はパーフェクト中心ですが、最近はこれに加えて年度ごとの過去問を本試験より短い時間で定期的に解いています。こうすると全範囲に短時間で触れられるし、速く解く練習になるのでいいかなと思っています。

民法は知識の強弱をつけるためにもあまりやってなかった百選をここ最近やってます。百選判例については確実にしたいです。あとは条文知識が足りてないので、条文や択一六法を脇においてチェックを付けながらパーフェクトや百選を回してます。

刑法は、学説問題が課題です。そのためパーフェクトだけでなく条文を脇に置きながら百選や基本書を確認してます。どの科目もそうですけど、勉強が進んでから百選を読むと面白い…(昔は最初に百選を読んでたりしたんですがこれは効率が悪かった)。あとは基本論点でも判例知識の詰めが甘く、5個の正誤問題で1つ落とすとかがよくあるので、出題済みの判例知識は確実にしたいと思います。あとは各論のマイナー犯罪が課題です。論文にも直結するので時間を使いたいと思います。

憲法は大法廷判決や新しめの判例を中心に著名判例の判旨や結論を確実にすることが課題です。著名判例はかなり細かく訊いてくるのでしっかり判旨を読み込まないとダメだなと感じました。ただ民法・刑法に比べると費用対効果が悪い気がするので、民法と刑法で確実に8割が取れることを最優先にしたいと思います。

 

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優秀な友人が「司法試験は相対評価だから」ということをしばしば言ってましたがようやく意味がわかってきたように思います。結局差がつくのは典型論点をどれだけ正確に書けるかということだなと。まぁ、彼らにとっての「典型論点」の範囲はわりと広いというのもあるかもしれませんが……。山を高くしていけば裾野も自然に広がるということでしょうか。

どうしても難問ができないことに気が取られてしまいますが、ある程度は諦めつつ、基本的なところをしっかりできるようにして後悔しないように頑張りたいと思います。

ということで本番までわずかですが、悔いが残らないよう毎日を過ごしたいと思います。

 

筋トレ・食事・バルクアップ

夏くらいからまた筋トレを始めている。最近特に趣味もないし、勉強以外に成長を感じられる何かが欲しかったからだ。ローの周りとかでもハマっている人が多い。

アメリカにいると筋トレをしたくなるので、読者の方でやっている方も多いと思う。僕が初めて筋トレをしだしたのは大学1年の冬で、ヨーロッパ一ヶ月旅行に向けて体を鍛えようと思ったのがきっかけだった気がする(あと海辺のカフカの影響??)。しかし旅行を終えると辞めてしまった。

その後カリフォルニアでアメリカのマッチョ文化に影響を受けてまた始めた。しかし今思うとそんなに本格的にはやっていなかった。帰ってきてまた辞めてしまった。

ペンへの留学が決まってまた始めた。今回の留学の目的の一つに筋トレして強くなるということを掲げていた気がする。僕は線が細いのでそれが結構コンプレックスだったし、アメリカでは筋肉が無いと男として見られないからだろう。

ペンのジムに登録して週何回か行ったしプロテインも飲んでいた。しかし今思えば食べる量が少なかったかもしれない。そんなに体がでかくなったという気はしない。

 

ボクシングを始めてやっと筋トレ(と体重を増やすこと)に目覚めた気がする。ボクシングといえば普通は減量だが、僕の出たFight Nightはだいたいの重さで対戦相手を決めるところ、恐らく一番軽い相手と戦うことになるから、少しでも重くしたほうが有利と考えたからである。僕がとった増量方法は簡単で、①とにかくカロリーを摂る、そのために1日4食位食べる、②炭水化物メイン、③プロテインを1日3回くらい飲む、というものである。これにより、数ヶ月で5キロくらいの体重増に成功した(それでも66キロとかですが…)。

日本に帰ってからは、司法試験に向けた体力維持のために週1で友達とジムに行っていた。しかし週1では筋力増はなかなか臨めない。プロテインも飲んでいなかった。おまけに年明けから5ヶ月間断酒した。その影響か(まぁ一番はストレスかな…)、普通に食事は採っていたけど7キロくらい痩せてしまった。元通りである。

世の中では皆ダイエットを叫んでいるが、僕のように太れない体質からすると理解ができない(と言うと女子に羨ましがられるのだが……)。

 

体重を減らすのはそんなに難しいことではないと思う。基本的には摂取カロリーが消費カロリーを下回ればいいはずで、それに加えて炭水化物や脂質を控えめにすればいいからだ。断酒も効果的だと思う。酒自体はそこまで高カロリーではないが、酒を飲めば脂っこいツマミも自然と食べてしまうし、寝るのも遅くなる。酒を飲んだ後シメにラーメンでも食べようものなら最悪である。酒を辞めれば自然と晩御飯のカロリー減ができると思う。

食事を抜くのも良くない。かえって反動で食べてしまったりするからだ。結局、炭水化物や脂質を控えめにしつつ三食きちんと食べて、適度に運動していれば自然と痩せるのではないかと思う。そんなに簡単ではないかな?ごめんなさい

 

僕が今ルクアップ(体重増加)の為にしていることは以下のような感じである。

①カロリーを摂る

僕は1日3500キロカロリーを目標にしている。たぶん多すぎるのだけど、これくらい食べないと太れない。

②PFCバランスを意識する(タンパク質を意識的に摂る、脂質も気にせず摂る、炭水化物を多めに摂る)

更にPFC(タンパク質、脂質、炭水化物)バランスというのが重要で、僕はだいたい25:15:60の割合(200g, 100g, 500gくらい)を目標にしている。

タンパク質は1日3〜4回、プロテインを牛乳と飲めば結構摂れる。余裕があればゆで卵やブロッコリーも食べるようにしている。プロテインはアメリカの時からずっとオプティマムのを飲んでいたが、最近はビーレジェンドとかマイプロテインも試して飲んでいる。

脂質は、リーンバルクのためには控えた方がいいが、僕は内臓脂肪(レベル2)も体脂肪率(今だいたい14%)も低いし、カロリーを摂るには必要なので、あまり気にせず摂っている。

炭水化物は米や麺から摂ればいいが、そんなに大食いではないので、1日500g近く摂るのはなかなかしんどい。そのためマルトデキストリン(粉飴)という味のない砂糖のようなサプリをプロテインとかに混ぜて飲んでいる。これにより簡単にカロリー・炭水化物が摂取できる。

カロリー計算は「あすけん」や「MyFitnessPal」というアプリで簡単にできる。アメリカにいたときは前者を使ってたが、こちらは体重を減らすという目標設定しかできないので、後者に移行した。

③毎日体重を測る

意識することが大事なので、毎日測ってアプリにつけるようにしている。

④筋トレ

ずっと区立のジムに通っていたのだが、ちょっと遠いので、最近近くの24時間ジムを登録した。分割法で週3〜5回くらい行くようにしている(本当は毎日行きたいんですが……)。クレアチンやBCAA等のサプリも飲むようにしてる。クレアチンは喉が渇いたり眠くなったりと副作用があるけど、本当にすごい。目に見えて効果を感じる。

 

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僕は食事は結構めんどくさいと感じて抜いちゃったりするほうなので、これだけ食べなければいけないというのはしんどいのだけど、きちんと計算してるとやる気になってくる。

さらに、体重増加だけでなく一応野菜やマルチビタミンとかも摂るようにしてるので、体調も良くなった気がする。考えてみれば試験前はめんどくさくてカップ麺で済ませることも多かった。しかしやはり体が資本なので、食事と運動はきちんとしなきゃなぁ、と思っている。ていうか本当に食事って大事ですね。だって体の中に入るものだもんね。今まで全然健康とか気にしてなかったけど、20代も後半になってようやく健康に目覚めたようである……

I know it's hard and stiff, severe the wall in front of you, but I'm sure that there are things that you would like to accomplish before going to hell

www.youtube.com


更新がない時点でお察しかもしれませんし、僕も更新したくないんですけど……、一応説明義務があると思うの更新します。

というわけで、意気消沈ではあるのですが、まぁ考えてみると仕方ないのかなぁと案外受け入れてはいます。直前期はかなり集中して演習しだいぶ成長したと思うのですが、いかんせんそれまでの積み重ねが足りなかった。

結局二兎追って一兎も得ずという結果に終わってしまい、ロー生活3年間を振り返ってみると、もっと色々できることもあったなぁ、とか、遊びすぎたなぁ、とか色々と思うところはあるんですが、しかし後悔しても仕方ないですし、必死に勉強し、色んな人と知り合い、留学をさせてもらえたロー生活は本当に充実していたと思います。色んなことがあったなぁ。

年齢的にもとにかく早く働きたいと思っていたし、色々進路を迷走して官庁訪問をしたりしていたのは読者の方々もご存知の通りです。僕は留学したことは後悔していないのですが、大きなマイナスは逆説的ですが「視野が広がりすぎること」だと思います。

留学してちょっとしたモラトリアムが生まれ、色んな文化や価値観に触れる機会を得ると当然視野が広がり色々と悩みも出てくるわけですが、こと司法試験の勉強について言えば視野は狭ければ狭いほど良いのです。答案が全てだし、その質を上げるためには何より集中して勉強あるのみ、雑念は不要、だからです。僕はとにかく好奇心旺盛で興味関心がとっちらがちで集中力が低いので、その辺りのマネジメントが課題だったし、ツイッターと酒を辞めて後半は改善できたけど、全体で見るとうまくいかなかったな、と反省しています。(言い訳はしたくないんだけど、言い訳ぽいな……?)

 

ちょっと暗すぎるので楽しい話を。

夏は2年ぶりの日本の夏ということで、花火をしたり観に行ったり、葉山の海に行ったり、ゼミで那須に行ったり、プールに行ったり、ジョジョを読んだり、フェスに行ったりとしばし休憩しておりました。

そして、今年はリアムとカサビアン目当てでソニックマニアに行ってまいりました。カサビアンは初めて見たのですが、とにかく力強くて、かっこよくて、壮大で、普段聴いているより何倍も素晴らしかった。Stevieは文字通り全身で鳥肌が立つようなかっこよさだった。Club Footはバカみたいに暴れた。

リアムは中3のときにオアシスの6thツアーに行った時以来、実に12年ぶりの再会でした。浮気性で色々と趣味が変わる僕ですが、オアシスだけは初めて聴いた中2(中2……)の頃からずっと一番の存在で、そしてこれからも一生そうであると思います。そしてリアムは同じ2人兄弟の弟であることもあって、自分にとってのヒーローのような存在です。最近はだいぶ落ち着いて丸くなって、かつてのカリスマ性は衰えてしまって複雑な思いもあったけれど、Slide Away, Live Forever, Wonderwallをまた生で聴けたことは一生の思い出になった。次また来日したときは必ず行きたい。

 

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今後のことですが、今年はやりきったという感覚もまだなく不完全燃焼なので、色々考えた挙句来年もう一度挑戦することにしました。ただ3回目は個人的に無いと決めているので、来年で必ず合格したいと思います。

というわけなんですけど、これからまた趣味のこととか息抜きがてらに書くかもしれません。今後ともよろしくお願いします〜

 

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オアシスについて語っといてあれなのですが、タイトルは[Alexandros]のCityの引用です。この曲はアメリカにいたときによく聴いていて、ボスキャリのときも呆然としながらボストンの街で聴いてました。なので僕にとってCityは東京でありフィラデルフィアであり、そしてボストンであるのですが……。

歌詞が自分に突き刺さって(特に「僕は何を言いたくてこの場所を選んだのだろう?」、「君は何を言いたくてこの場所を選んだのだろう?」、「君は何を言いたくてこの街に居座ってんだろう?」の部分。タイトルの部分はミスチルの終わりなき旅の「高ければ高い壁の方が登った時気持ちいいもんな」にも通じるなぁ)司法試験の当日も聴いていた曲です。イントロを聴くと色々な辛い思い出がドバドバ蘇ってきてうわァァァああああってなってしまいます。感傷的になってしまう曲ですが、決意というか、覚悟が湧いてくる大好きな曲です。皆さんもしんどい時にぜひ聴いてみてください。

あれ、また暗くなったな?今日はこのへんで

国家総合職試験対策(院卒行政/ロー生向け)

官庁訪問で撃沈した以上書くべき立場にはないかもしれませんが,一応総合職試験はそこそこの成績で合格できたので,ロー生向けに対策を簡単に書いておきたいと思います。

試験は

一次試験…短答試験(教養・専門)

二次試験…論文試験(専門),人事院面接,政策討議

とあり,二次試験は日程的に2つに分かれているので,都合3回の試験・面接を経てやっと最終合格という流れになります。

 

1 一次試験

(1) 短答式試験(教養)

30問必答です。出題分野としては,

国語3問,英語5問,判断推理・数的処理14題,資料読解2問,時事・一般教養6問

です。

まず国語資料読解はきちんと読めば簡単なので確実に取ります。英語もある程度できる人なら簡単です。これで10問正解できます。

判断推理・数的処理適性試験でやったものに近いですが,2,3年経っているとほとんど忘れていますし,僕はこういうのが苦手だったので対策は諦めました。中学受験している友人は結構できており,そういった背景がある人はかなり有利です。問題数も多く差がつきやすいところ。

時事・一般教養は公務員第一志望の人なら重点的に勉強しているでしょうが,世間の流れに疎いロー生には難しいでしょう。コスパが悪いです。

*ただし,後々の人事院面接・官庁訪問では必要な知識ばかりですので,少なくとも自分が志望する官庁に関連する分野については勉強しておいたほうが良いと思います。

しかし,この20問は5択なので,適当にマークしても4問正解できます。それプラスなんとか簡単な問題がわかるとすればプラス2問。

これで合計16問正解です。教養はこれくらいできれば十分です。

というわけで,ノー勉でなんとかなりました。英語に不安がある人は他のどこかを頑張る必要があります。

 

(2) 短答式試験(専門)

f:id:pennguin:20170630115636p:plain専門は49問の中から40問選択します。

まず必須問題は,憲法7問行政法12問民法12問です。憲法民法は司法試験の短答対策で対応できます。

行政法については,司法試験でも勉強しますが,司法と違い①短答であること,②知識問題であること,③手続法の問題が多いこと,から,ある程度対策が必要だと思います。僕の場合は,ほとんど読んでいなかった判例をこれが良い機会とざっと読み,かつ国賠を重点的に勉強しました。なぜなら,判例が選択肢でそのまま出るのと,国賠は必ず数問出るからです(国賠が多いのはたしかになぁという感じです)。

それから,選択問題は,商法3問,刑法3問,労働法3問,国際法3問,経済学・財政学6問から9問選んで回答します。

商法は僕が知る限り会社法オンリーですし,基本的な問題なので,これについては司法試験対策で行けます。刑法も同様です。

あと3問ですが,選択科目が労働法,国際公法であればそれを選択すれば良いでしょう。選択科目が上記2科目以外であれば,問題をザッと見て解けそうなものを勘で解くしかありません。

というわけで,問題数が多い行政法の対策をするくらいで十分だと思います。

 

 

2 二次試験

(1) 論文試験(専門)

一次試験を通過したらいよいと二次試験。まずは専門論文試験です。

法律の場合は,憲法民法,刑法,商法,民訴,行政法の6科目から3問選択して解答することになります。何を解答するかは本番問題を見てから選ぶことができます。

問題は旧司と新司の間くらいという感じです。そこそこの長さの問題文ですが,聞いていることは素直で,設問を読めば書くべきことはすぐわかります。新司に比べればかなり簡単で,問題文の分析力や複雑な法的思考力が問われているわけではありません。時間も3科目で4時間とたっぷりあり,時間が足りないということはありません。

論述の分量についてですが,マス目のようなものがついた裏表の紙に解答します(東大ロー入試のような感じ?)。しかし,このマス目は守る必要がありません。というか,守って書くと確実に分量が足りなくなると思います。僕はマス目を無視してそこそこ小さい字で3科目とも表裏いっぱいに書きました。時間がたっぷりあるので,できるだけ量を多く書いたほうがいいと思います。

なお,司法試験との最大の違いは,六法を見れないということです。これを聞いたときはマジかよと思いました。考えてみれば学部の期末試験では六法なしもありましたが,ローに入ってからは100%六法ありでしたからね…。

六法を見れないので条文摘示はどうしようかと思ったのですが,僕は憲法を除いては一切摘示しませんでした。間違うのは避けたいですし,わかるものだけ書いてもかえって印象が悪いかなと思ったからです。というわけで,条文摘示は必ずしも必要ではないと思います(もしかしたら減点されているかもなので,あしからず)。

ちなみにペンは万年筆・ボールペン・シャーペン・鉛筆いずれも可です。修正が簡単なシャーペンがいいかもしれませんが,僕は万年筆に慣れてしまったので万年筆で解答しました。

 

さて,重要なのはどの科目を選ぶかです。

対策の観点からは事前に科目を決めてしまうのもありでしょう。今年の場合は司法試験の1週間後だったのでその勢いで臨めますが,3科目に絞って重点的に対策すれば効率が良さそうです。絶対的得意科目が3科目あればそれで特攻しても良いと思います。

ただ,そうでない場合は,自分の苦手分野が出る可能性もあるので注意が必要です。例えば憲法は統治が出る可能性もありますし,会社法は条文が見れません。行政も手続法がガッツリ出る可能性があります。

僕の場合,刑法は得意だったので解くと決め,一番苦手な民法は捨て,刑法+憲法・商法・民訴・行政から2科目,ということで若干対策し,本番に臨みました。本番では問題を読んでみて,解けそうな憲法と商法を選びました。周りでは憲・民・刑の人が多かったですかね。

注意点ですが,問題が簡単だからといって決して舐めないことです。法律を選択しているということはロー生である可能性が高いですし,しかも,司法試験と違って好きな科目を選んで解けるのです。したがってかなりハイレベルな戦いになるし,そういう答案が期待されているはずです。司法試験のように5〜6割を目指す試験ではなく,8〜9割を目指す試験だと心して臨みましょう。

 

 

論文試験から2週間ほど空いて,次は人事院面接・政策討議です。

(2) 人事院面接

これは当日に提出する面接カードに沿って行います。一人20分程度で,面接官は人事院の職員1人+どこかの省庁の職員2人の合計3人です。

この面接は,省庁を志望する動機などについて深く尋ねるものではなく(それは官庁訪問で行う),コンピテンシー面接といって,その人の特徴や正確を数値で表わすものです。つまり,過去の体験を通して,受験者の調整力や挑戦力などを客観的に評価しようとするものです。

敵を知り己を知れば百戦危うからずと言いますが,相手の評価方法を知っていれば強いです。この観点から対策しておく必要があります。

公務員試験 現職人事が書いた「面接試験・官庁訪問」の本 2018年度

公務員試験 現職人事が書いた「面接試験・官庁訪問」の本 2018年度

 

詳しくはこの本を参照してください。コンピテンシー面接の評価軸が載っています。官庁訪問や政策討議対策でも有用です。

なので,どのようにすればここに示されている能力をうまく伝えられるか,ということを考えながら面接カードを書き,受け答えする必要があります。そういう意味では面接というより口頭試問に近いかもしれません。

 

(3) 政策討議

いわゆるグループディスカッションのようなものです。

流れとしては,

①資料を与えられ,それを読み,一定時間でレジュメを作成する。

②6人1グループで別室に通される。6人分のレジュメがコピーして配布される。

③一定時間を与えられ,レジュメに目を通す。

④一人2分(3分だったかも…)で自分の意見を述べる。

⑤30分でディスカッション

⑥一人1分(2分だったかも…)で,ディスカッションを踏まえた自分の意見を述べる。

です。課題はわりとタイムリーなトピックが多いです。とりわけ知識は必要とされていません。英語の資料もあるので,英語の読解力も問われています。

まず注意すべきは,一定程度の発言量を確保することです。発言数が少なすぎると評価不能で低評価がついても文句は言えません。最低限の発言量を確保する必要があります。6人で30分というのは明らかに短く,全ての論点について十分な議論をすることは不可能ですし,あまり慎重になりすぎると発言の機会を失う恐れがあります。

他方,この討議の目的はあくまで建設的な議論をすることであり,相手を論破することではありません。したがって,一番やってはいけないのは,相手の意見をひたすら批判するような態度です。自分の意見の優位性を示す場ではありません。相手の意見を批判する場合は,「確かに◯◯さんのおっしゃる通り××という問題はあると思います。しかし,△△」などときちんと自分と異なる意見にも耳を傾ける姿勢があることを示すことが重要です。協調性も大事なので,自分が話しすぎてると思ったら少し抑えるとか,発言していない人に話を振るということも重要です。

役割についてですが,司会やタイムキーパーを置くことが多いようです。僕の場合は出だしに「では役割などについて決めますか…?」と言ったところ気まずい沈黙が流れたので「では言い出しっぺの私が…」とやむなく司会役をやりました。

司会役は確実に発言量を確保できるので自信があれば引き受ける価値はあると思います。反面,進行に気を取られ自分の意見を言う時間が減りますし,進行で頭がいっぱいできちんと相手の話を聴いたり自分の意見を練ったりすることが難しくなります。今考えてもものすごく頭を使った30分でした。司会役よりも,サポートして話をまとめたり話を振ったりする立ち位置(タイムキーパー?)の方が得かもしれません。

 

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だいたいこんな感じです。普通に司法試験の対策をして,面接と政策討議を無難に行えば十分に通過できると思います(今年は受験者数が大幅に減ったのもありますが)。

とはいえ,受かってからが本番なので,官庁訪問の対策をしっかりするようにしてください。

 

官庁訪問を終えて

長いようで短かった官庁訪問を終えました。

結果として,第一志望であった某省には第3クールまで進んだものの,内定獲得には至りませんでした。残念です……かなりへこんでいます。

実は官僚という進路はあまり考えたことがなく,国家総合の試験も「受験料ダダだからお前も受けろよ」と友人に言われ,司法試験の予行練習にもなるなとの邪な思いで受験し,運よく合格したという経緯があります。

しかし,実際にその進路を考えてみると,とても惹かれました。弁護士はプロフェッショナルとしてクライアントをサポートする立場にいますが,官僚(行政官)は国を動かすプレイヤー側にいます。「ぺんぎん君はプレイヤーの方が向いているかも知れないね」と多くの方に言われたことや,自分自身の多動的な性格を考えても,プロフェッショナルより,ジェネラリストとして多くの課に関与し,あらゆる政策立案に携わる総合職官僚のほうが向いているな,という思いも出てきました。

とりわけ僕が志望した某省は数年前から何度か説明会に行ったこともあり,憧れている省でした。

 

官庁訪問では実際に現役官僚として働かれている方のお話を業務説明という形で聴くことができます。自分が希望した分野の方とマッチングしてくださり,もう一つの省も含め,合計12名の方と,概ね一時間ほど,長いときは一時間半ほど,お話させていくことができました。今まさに行っている業務について,あるいは今後の日本の向かうべき方向性について,そして職員としての使命について,様々なお話を聴くことができ,本当に刺激的な毎日でした。

そして,たかだが数日間霞ヶ関にいただけで,自分の思想というか,考える姿勢が変化していくことを感じました。僕はどちらかというとリベラルで,現政権には反対的な立場にいましたが,実際に国の安全保障や経済問題などに向き合っている方とお話すると,国の切実な面というか,国の内部にいる方ならではの視点が見えてきました。もちろん憲法は遵守しなければならないと考えることには変わりはないですし,それは間違いありません。また,公法や刑事法を通して権力をいかに制限するかということを学んでいたので,その重要性は今でもよく理解しているつもりです。しかし,他方で,国というマクロな視点で考えてみると,もっと根の深い,立ち向かうべき問題が多くあることを痛感しました(だからといって国民一人ひとりを軽視していいわけではないですし,影響を受けやすいのも僕の悪癖かもしれませんが)。

また,「官僚」というと,メディアを見れば常に批判される立場です。とりわけ森友問題,加計問題が世間を騒がせている今はそうです。そういう意味で僕も少なからず良くない印象を持っていました。しかし,僕が話した方々は,皆気さくで,決して偉ぶったりせず,真摯に日本のために努力されていました。給料だって民間や弁護士と比べてそう高くないですし,SNSなどでの発信も制限されているし,建物はボロボロで薄暗く,ろくに冷房も効いていません。実際に表に出る仕事は政治家がやっています。そういうお世辞にも恵まれているとはいえない環境の中で,国のため,国民のために誇りを持って仕事をされている。僕もそういう仲間の一人になりたいなと思いました。

僕が行った省は毎クールの終わりに評価を伝えてくれるのですが,僕は第1,第2とも「極めて高く評価しています」という最高評価(らしい)をもらえていました。第3クールの課題も比較的良かったとのことです。お会いした職員の方も,ずっと課長補佐以上で,後半になるにつれ年次が高い方になり,入口面接でも「評価はお伝えしている通りですのでがんばってください」と暗に可能性を示されていたので,正直納得が行かない部分もあります。油断していたわけではありませんが,このまま行けば大丈夫だろうという前向きな希望がありました。

しかし内定獲得に至らなかったのは,一つには他の志望者の優秀さがあったと思います。学歴が高いのはもちろん,頭がキレ,気さくで,人当たりがよく,素晴らしい人が多かったです。確かに,彼らとまともにやりあって勝てるかなぁ,というのは,常々感じているところでした。いわゆる人気省庁の一つですし,志望者数も今年は多かったので,本当に突き抜けて優秀でなければ内定に至らない,というのは理解ができるところです。

また,説明会に10回以上参加している人もザラでした。僕は志望したのが遅かったこともあり,数回参加した程度です。その点での熱意というか,かける思いが足りなかったのは認めざるをえないところだと思います。

ここ数週間で官僚,国家公務員という仕事への憧れが高まり,弁護士からの方向転換を決意して臨んだので,残念な思いでいっぱいであります。しかし,上述したように現役官僚の方やそれを目指す優秀な学生と様々な話をすることができ,人間的に成長できた実感があるので,訪問したことは後悔していません。ここで学んだことを糧に今後も精進したいと思います。 

NY Bar20 - Secured Transaction

Secured Transactionは「担保付き取引」と訳される科目である。しかし,担保すなわちMortgageについてはReal Propertyでも扱う。

Real Propertyはその名の通り不動産法であり,扱っているMortgageとはLandについての担保,すなわち抵当権のことをいう。

対して,Secured Transactionで対象となるのはUCC Article 9で規律されている,"Personalty (Personal Property)"と"Fixtures",すなわち動産と不動産定着物。そして,契約によって定められる約定のもののみとなる。

「担保」と訳される英語は多いが,まとめるとだいたい以下のような感じになる(と思う)。

  • Mortgage…抵当権(非占有型約定不動産担保)
  • Secured Transaction…担保付取引(占有・非占有型約定動産担保)
  • Security Interests…広い意味での「担保物権」(約定がメインだが,法定も含む)
  • Pledge…質権(占有型約定担保)
  • Collateral…債券における担保。融資の見返りとなる物件
  • Lien…リーエン。Statutory Lienだと先取特権
  • Right of Retention…留置権
  • Encumbrance…負担(地役権や抵当権の付着)
  • Loan…貸付。したがって担保がつくとは限らない。

ただし,英米で違ったり,かなり使い分けは微妙な模様。本当は色々な文献に当たって日本の担保物権との違いをまとめると面白そうだが,今回は気力がないので割愛する(すみません)。

なお,こういった用語については以下のブログが詳しい(無断リンク失礼致します)。

www.takahashi-office.jp

translators.blog65.fc2.com

ここにあるように,当たり前かもしれないが,必ずしもすべてが日本法の概念と同一であるわけではないよう。

 

 

そして,簡単なアウトラインをまとめようとも思ったのだが,ネットを見ていたら素晴らしくわかりやすく書かれた記事を見つけてしまった(無断リンク失礼致します)。

d.hatena.ne.jp

ということで,今回は他人のふんどしで相撲を取らせていただいて,終わらせていただきます。

国家公務員総合職試験に合格しました。

www.nikkei.com

 

実は国家総合職(院卒・行政)を併願していたのですが,無事に最終合格していました。

一次がギリギリだったので焦ったのですが,二次の論文がよくできたのと,政策討議ででしゃばって司会をやったのが功を奏したようです笑。

ペンに合格してからというものしばらく成功体験が無かったので,だいぶ嬉しいものです。父も喜んでくれ,ホッとしております。

 

進路を色々悩んだりもしているのですが,官庁訪問頑張ろうと思います。実は受かってからが本番なんですよねぇ…。

 

取り急ぎ合格報告でした。

NY Bar 19 - Contracts

Contractsはふわふわしているというか,そもそもの契約の成立のところを延々と議論する科目である。1Lの必修科目であり,米国法の基礎をなす科目でもある。

Considerationなど日本法と明確に異なる概念があるところは面白い。しかし基本的には似たような話が続き,しかもそれが微妙に日本法と異なり頭がこんがらがるので,個人的にはあまり好きな科目ではない。

以下は簡単なアウトラインですが,日本語と英語がごっちゃになって読みにくいのはご容赦ください。

どちらかというと勉強した人の確認向けです。

 

Ⅰ. 総論

UCCが適用されるのは「動産の売買(Sale of Goods)」であり,金額の多寡や商人かどうかを問わない。

それ以外ではコモンローが適用される。不動産取引やサービスがこれに当たる。

 

Ⅱ. FORMATION OF CONTRACTS

1. 基本

ContractとはEnforceable agreementをいい,Offer, Acceptance, Considerationによって成立する。

契約には双方的約束(Bilateral contract)と一方的契約(Unilateral contract)があり,前者は承諾方法が限定されていないなど柔軟という特徴がある(Offer can be accepted in any reasonable way)。後者は特定の方法による承諾によってしか成立しない。

契約法に則ると不公正な結論が導かれるときは,不当利得(Restitution)により解決する。 Restitution is designed to reverse unjust enrichment. Restitution interest is interest in having restored to him any benefit that he has conferred on the other party.

 

2. Offer

Manifestation of an intention to be bound(Manifestation of intent to enter into a contract)のことをいう。

Advertisementは,数を示さず不特定多数に向けたものにすぎないので,原則として申込とならず,申込の誘引(Called Invitation)にすぎない。

例外的に,数量が明示されているなどより特定性がある場合(先着20名など)は申込となる。

申込の際,通常は量を明示することが必要だが,必要量供給契約(requirement contracts)という形態をとれば,具体的数字は不要となる。突然大量の購入要求があった場合はその量の過剰性により有効性を判断する。

 

Termination of Offer(申込の終了)

申込の終了には以下の4つの形態がある。

  1. Death
  2. Lapse of Time…Offerに示されている場合か,reasonable timeが経過した場合
  3. Revocation…下で詳述
  4. Rejection / Counteroffer…同上

Recovation(申込の撤回)

撤回は,原則として承諾がなされる前ならばいつでも可能である(当然,相手方がそれを認知できなければならない)。

しかし,以下の4つの場合は例外的に申込を撤回できない(Irrevocable Offer)。

  1. Option Contract(コモンロー): 「撤回しない」ということを事前に約束し,それに対して対価が支払われている場合である。つまり,撤回権を売り渡したようなもの。対価が必要。
  2. Firm Offer(UCC: 商人が,申込を撤回しないとの署名した文書で約束した場合に生じる(Writing signed by the merchant)。撤回不能期間は最大3ヶ月。Option Contractと異なり対価は不要。3ヶ月をすぎると自動的にterminateするわけではなく,単にrevocableになるだけである。
  3. Foreseeable Reliance Before Acceptance: これは極めて稀だが,承諾前の信頼が法的保護に値するものであれば撤回が不可となる。
  4. Starts to perform in a unilateral contract: 一方的約束の場合は,被申込者による履行が開始されれば最早撤回はできない

撤回はacceptanceの後は最早できない。撤回の時期は意思表示のときではなく,それが相手方に到達したときである。

 

Rejection(拒絶)

Rejection又はCounterofferがされれば申込の効力はterminateする。応答が不適切であれば拒絶となる。 

注意すべきはConditional Acceptanceで,これは承諾ではなく,Counterofferであり,Rejectionである。これに対して新たなAcceptanceがなされれば契約成立となる。

 

 

 

3. Acceptance

承諾は,Bilateral contractの場合はany performance, Unilateral contractの場合はcompleting performanceによる。

承諾の時期は撤回と異なり,意思表示を発した(dispatch)段階である(有名なメールボックスルールであり,郵便ならば投函した時点。消印有効という感じ)。現実に到着したか否かは問わない。

つまり,承諾を郵便で発した後に相手方が電話に撤回した場合でも,郵便を投函した時点で承諾が完成しており,その後の撤回は最早できないから,撤回は無効で契約成立,ということになる。

ただし,原則があれば例外がある。

  1. Offer states otherwise: 例えば「○○日までに承諾が受領されなければならない」という場合は承諾書の現実の受領が必要となる。必着ということである。
  2. Irrevocable Offer: 申込が撤回不能なものである場合,メールボックスルールは適用されない。なぜなら,このルールは,あくまでも承諾により契約が成立したとの期待を保護するためのものであるから,撤回が不能であるならば,承諾の時期が到着時であっても問題ないからである。
  3. Rejection sent first, then Acceptance: この場合は,先に到着したほうが効力を有することになる。

 

Battle of Forms(書式の戦い)

コモンロー

鏡像原則が働くため,申込と承諾は完全に一致していなければならない。material alterがあればrejectionとして働く。

UCC

契約成立を促進するために,鏡像原則は採られていない。①両当事者が商人であり,②重要な変更(change, alter)がなく,③合理的期間内に異議がなければ,変更があっても契約が成立する。

*ただし,変更や修正(change, alter)でなく,条件付き承諾(conditioned acceptance)であれば,承諾にはなりえず,counterofferとなるからその時点で契約が成立することはないことに注意。

 

 

4. Consideration

Considerationは通常約因と訳される英米法に特有な概念である。Bargained for legal detriment/benefitのことをいい,offerとacceptanceと並び契約成立に必須の条件である。

過去の約因(Past Consideration)は約因には当たらず,過去の行為へのお礼に金を払うと約束した場合は,約因が欠如しているとして契約の成立は否定される。

約因は価値の均衡を必要としないから,金額が小さいものでも構わない。ただし,例えば「好きな物を変える」等の契約は,ゼロかもしれないから約因の存在は否定される(illusory promise)。したがって契約は成立しない。例えば,"I'll sell my car, but I'll decide when"と行った場合である。

コモンローでは,契約を変更する際には新たな約因を要する(Preexisting duty rule)。

対して,UCCでは,契約変更には新たな約因は要らない。ただ,誠実(good faith)である必要がある。

 

Promissory Estoppel

約因がないとしても,口約束があり,それが通常予測可能で,それに対する信頼(Detrimental Reliance)があり,その約束を守ることが不正義の回避のために不可欠であれば,約因の代わり(Substitute to consideration)として働く。したがって,この法理により,契約が有効に成立しうる。

 

 

5. Defense

Capacity

Minors(未成年者(18歳未満)),Insanity(泥酔者,精神障碍)がある。

ただし,MinorsはVoidableInsanityはVoidという違いがある点に注意。

Economic Duress

①there was a threat to break the existing contract,  ②the only reason buyer agreed to the second deal was to get the first deal done, ③there is no reasonable alternativeの要件を満たせば,経済的脅迫となる。

Undue Influence

Bargaining Powerと異なるもので,一方が弱いのに,他方が不公平な交渉の立場にある場合をいう。

Misrepresentation of a Material Fact

重要事項についての説明が虚偽である場合(Tell something material which is false causing you damages)

Non-Disclosure of a Material fact

原則として開示義務はなく,抗弁とはならない。

しかし,信頼に足る関係などでDuty to Discloseが発生しており,それに反した場合は抗弁となる。通常は単なる説明不足では足りず,積極的挙動などを要する

Mistake

価格に関する錯誤は契約無効の原因とならない。

一方的錯誤の場合は原則として契約は有効だが,他方当事者がそれを知っているか知るべきである場合はそれが抗弁となる。

共通錯誤の場合は無効可(Rescindable)となる。

 

6. Statute of Frauds (SOF)

いわゆる詐欺防止法。一部の契約は,詐欺を防止するために,その成立に書面を要する。

  • Real Property…不動産売買は勿論,賃貸や地上権(easement)の合意も含む。ただし1年以下の短期不動産賃貸は除く。
  • Performance cannot be completed within a year…契約締結時の計算による。完全な履行(full performance)がある場合は除く。
  • Sale of goods more than $500…ただし,買主が受け取ったり払ったりした場合は,その部分についての書面は免除される。
  • Suretyship(保証)…第三者の債務について責任を負う合意。
  • Contract modification…400ドルの契約を800ドルにする場合は適用を受ける。
  • Marriage

ここでいう「書面」は,売買については数量が記載されていることは勿論,契約違反を問われる側による署名が必要である。その他の契約についても,all material termsを含み,署名されていることが必要である。

上記の事項に該当するにもかかわらずSOFが適用されない例外がさらにある。

  • Part Performane Doctrine(部分履行法理)…Land Sale Contractのときのみ,占有・支払・改良(improvement)のどれかがあれば書面に代えることができる。
  • Merchants' Confirmatory Memo…商人間の動産売買の場合の例外である。①Both parties are Merchants, ②Writing claims agreement/has quantity, ③There is no written objection within 10 daysの要件を満たせば,自分のサインのある書面によりSOFの要件を満たすことができる。

 

7. Contract Terms

契約条件の証明においては,Parol Evidence Ruleが重要であり,契約書以外の証拠は排除される。つまり,書面による契約と矛盾する事前の合意についての口頭・書面の証拠を排除することで,最後に作られた契約書を優先し,証明を明確にしている。

英語で言うと,Parol Evidence Rule is admissible to show a condition precedent to the existence of a contractである。

もっとも,SOFが適用されない契約では書面は不要だから,このルールが適用されるのは,SOFが適用される契約のみということになる。

なお,例外として,単なる誤記や,誤った説明に基づく取消を行う場合契約書の曖昧な表現の解釈を行う場合補充や矛盾しない部分的な補完には,契約書以外の証拠を用いることができる。

また,Fraud, Mistake, Duress, Illegalitym Existence of Condition Precedentなどがあれば,やはり契約書以外の証拠を用いることができる。

 

 

8. Warranties(保証)

売主は明示的保証について責任を負う。この保証は交渉の基礎(basis of the bargain)でなければならない。

黙示的保証については商品性についてのもの特別な目的への適合とがある。

前者については,売主が当該種類の動産について専門知識を持つ商人である場合,買主はそれを前提にしているから,動産が一般的な目的に適合することについて黙示的に保証したとみなされる。

後者については,買主が当該動産を特殊な目的に利用することを知っていて,売主がそれに整合する動産を選択することを信頼している場合に,黙示的に保証したとみなされる。商人であることは要件でない。

 

9. Risk of Loss(危険負担)

両者に帰責できない事由により目的物が滅失した場合の責任が問題となる。

まず合意があればそれに従い,また,違反(履行遅滞など)があれば,違反者が滅失につき責任を負う。

売主が引渡義務を果たせば危険は買主に移転するが,その引渡義務の履行(completing its delivery obligation)が何によってなされるか。以下の4類型を区別する必要がある。

公共運送機関を用いた運搬の場合

Shipment contract(発送契約)では,運送機関に発送を委ねた段階で移転する(FOB Seller)。

Destination contract(目的地契約)では,特定の目的地に届けてはじめて危険が移転する。

なお,契約で指定がない場合はShipmentの時に移転する(when the goods are shipped)。

公共運送機関を用いない場合

売主が商人であれば,占有を移転するまでは売主が危険を負担する。

売主が商人でない場合は,買主が引取可能になると(when the seller tenders the goods)危険が移転する。

 

Ⅲ. PERFORMANCE

1. Performance of Contracts (UCC)

Perfect Tender Rule

UCC契約の履行の場合,完全な履行でなければ買主は受領を拒絶できるというのがこのルールである。ただし受領してしまえば最早拒絶はできないが,その場合,damagesは受領した物の価値と本来得られるはずだった価値との差額となる。

 

Option to Cure

履行が完璧でない場合,売主はあとで完全履行することにより瑕疵を治癒できるか,問題となる。

①履行期が過ぎていない場合は,治癒の権利がある。対して,履行期が過ぎた場合は,原則として治癒の権利はない。

しかし,②過去にも完璧でない物を買主が受け取っていたなど,柔軟性があった場合は,それに対する期待を保護するべきだから,依然として治癒の権利があると認められる場合がある。

 

Installment Contract(分割契約)

分割契約,すなわち複数回に渡り引き渡す契約の場合は,Perfect tender ruleが適用されない。

したがって,Non-Conformityがあっても,①実質的欠陥(substantial impairment)があり②それが治癒不可(cannot be cured)な場合でないと受取を拒絶できない。

 

2. Buyer's Acceptance of the Goods

ここでの"acceptance"とは,契約成立段階での「承諾」と異なり,「検収」と訳す。すなわち簡単に言えば物の受取である。

受取人は当然物が条件に適合しているかを確認しなければいけないわけだが,検査の機会がありながらそれを怠った場合は黙示の検収が成立し,最早受取拒絶はできなくなり,また検収の撤回もできない。勿論,この場合でも条件に適合していなければ損害賠償は可能である。

 

 

Ⅳ.EXCUSE BASED ON LATER EVENTS(後の出来事による免責)

1. Other Party's Breach

相手方の違反は,自らの不履行を正当化することになる。

UCCの場合,履行が完璧でなければ,Perfect Tender Ruleにより買主には3つの選択肢が生じる。①全て拒絶する,②全て検収する,③選択的に拒絶する,である。

なお,当然だが,契約違反がある以上,どの選択肢をとったとしても損害賠償請求は可能である。

コモンロー契約の場合,違反があれば損害賠償を求めることができるが,相手方当事者が免責されるのは,その違反(債務不履行)が重大な違反(material breach)といえるときに限られる。すなわち,不完全な履行でも,一応は履行がされているような場合は,代金は払わなければいけないということになる。

 

2. Anticipatory Repudiation(履行期前の履行拒絶)

履行期に履行しないのはBreach of Contractというが,履行期前に早々に履行拒絶をした場合は,Anticipatory Repudiationと呼ばれる。拒絶意思はabsolute, unequivocalでなければならない。

例えば,請負契約において,請負人は準備万端なのに,注文者が金は払わないと言ってきた場合は,履行期前の履行拒絶にあたり,請負人は損害賠償請求ができる。

また,支払い能力について合理的に疑問を持ち,相手方に確認(assurances)を求めたところ相手がそれを拒絶した場合も,Antitipatory Repudiationに当たる。

 

3. Later Agreement(事後的な合意)

例えば共通錯誤などがあった場合,合意解除(Rescission)ができる。また,修正(Modification)もできる。

Accord and Satisfaction(免除合意とその満足)

ある義務を果たすことにより将来義務を免除するとの合意及びその履行のことをいう。

Novation(契約更改)

免責的債務引受により,当事者を第三者と交換する合意をいう。

 

4. Later Event & Discharge(事後的な事由による免責)

後発的履行不能については,UCCではImpracticability(履行の困難性),コモンローではImpossibility(履行不能)と呼ばれる。事後的な予期せぬ出来事により履行が不可能となれば,売主は免責される。

 

Risk of Loss

危険が移転したあとに履行が困難となると,売主は免責される。すなわち,どちらにせよ売主は免責されるわけであるが,履行の困難性による免責と,危険負担による免責を区別しなければいけない。

なお,当然だが不特定物の破壊や非個性的な履行の不能の場合は免責されず,履行義務は存続する。

 

Frustration of Buyer's Primary Purpose

買主側の契約目的が責めに帰すべきでない事由により履行不能となったときは,買主は免責される。"Frustration"とは契約目的の達成不能を意味する。

例えば,パレードを見るために部屋を借りる約束をしたところパレードが中止になった場合などである。

 

5. Failure of an Express Condition

Strict Compliance Required

例えば1000ドル以上と査定されればギターを買うと約束したところ,999ドルだった。この場合,厳密には条件を満たしていないので買わなくてもよい。

Satisfaction Clauses

"only satisfied with the work"という抽象的な条件を付した場合は,原則として合理的な当事者の基準により判断される。

ただし,芸術や個人の趣味などについての契約の場合は,文字通りsatisfiedしたかどうかで判断する。

 

Ⅴ. REMEDIES (救済)

1. Monetary Remedies (Legal Remedies)

まず,Punitive Damegesは契約違反の場合は生じない。

Liquidated Damages (損害賠償の予定)

予定があった場合,その有効性が問題となる。有効とされるには,あり得る損害額を合理的に予測したものと判断される必要がある。また,あくまで填補目的であり,サンクション的なものは認められない。

 

Buyer's Damages (買主による損害賠償)

3つの場合がある。

①Cover Damages

代替品購入が誠実にされた場合は,その差額を損害として賠償できる。誠実であれば,市場価格より多少高くてもその価格を基準に算定される。

②Market Damages

代替品購入をした時にそれが誠実でなかったとされたり,そもそも代替品を購入しない場合は,市場価格から契約価額を差し引いたものが損害額となる。

③Loss in Value

瑕疵ある品を保持することにした場合は,契約によって得られたはずな価額と実際の価額の差が損害額となる。

 

Seller's Damages

4つの場合がある。

①Resale Damages

契約違反により5000ドルで売れず,第三者に4500ドルで誠実に再販売した場合,500ドル分が損害となる。

②Market Damages

再販売が誠実でなかったとされたり,そもそも再販売をしなかった場合は,契約金額から市場価格を引いたものになる。

③Lost Profit

売主が大量販売者で無限の供給ができる場合(Lost Volume Seller)には逸失利益が認められる。つまり,他のだれかに再販売できた否かにかかわらず,買主に買ってもらえなかったことによる損害があるわけで,それが逸失利益となる。

④Contract Price

買主にとっての特定履行と同様で,売主が再販売できないカスタムメイドの場合に認められる。

 

Incidental Damages

代替品購入や再販売のアレンジのための費用(たとえば広告費用)である。

 

Consequential Damages(拡大損害)

契約違反の結果が引き起こす損害(additional costs)であり,契約時に違反者にとって合理的に予測可能(foreseeable)な場合のみ回復可能である。UCCでは認められない。

 

Avoidable Damages

被害者は,合理的努力で損害を避ける(軽減できる)場合,その損害について賠償を得られない。 UCCでは認められない。

 

2. Unpaid Seller's Right to Reclaim Goods (UCC) 動産返還請求

売主が代金の支払いを受ける前に買主の財務状況が悪化したという場合に,売主が既に引き渡した動産を返還するよう請求できるか,という問題。

原則として返還請求は認められない。しかし、例外的に認められる場合が2つある。

①買主が引渡し時に債務超過であり,受領時から10日以内に売主が請求した場合

②買主が,3ヶ月以内に、支払い能力についての虚偽の説明をした場合

 

3. Non-Monetary Remedies (Equitable Remedies)

法律に適切な救済が無い場合に問題となる。

Specific Performance(特定履行)

目的物がUniqueなものである場合(不動産や貴重品)は,特定履行が救済となる。サービスの場合は特定履行は認められない。

UCCの場合は,その動産に個性があるか代替性がないといった事情がある場合に限り特定履行が救済となる。

Injunction(差止め命令)

Specific Performanceが認められず,Irreparable harmを防ぐ必要があるときは,Injunctionが認められる。

 

 

 Ⅵ. Third Party Problems

1. Entrustment(委託)

当該種類の動産を扱う商人から購入した善意者は,真の所有者から権利を引き継ぐ。

宝石店で修理中の時計が誤って売却された場合は,善意購入者は権利を得る。

 

2. Third Party Beneficiary(第三者受益者)

2人の当事者が第三者の利益のために契約を締結した場合,その第三者をこう呼ぶ。つまり,契約当事者ではないが,契約により利益を得る者である。

注意すべきは,法的権利が認められるのはIntended Beneficiaryだけで,Incidental Beneficiary(付随的に利益を得るに過ぎない者)には認められないということである。つまり,履行を約束した人(=Promisor)はIntended Beneficiaryのみに責任を負う。

そして,契約の解除・変更(rescission, modification)は,TPBが関与してその権利の期待を得る(これをvestと呼ぶ)までにのみ認められる。

Vestの要件は,①He is notified, ②He learns of it and reliesである。vestがされると,TPBの期待権を保護する必要があるので,解除・変更は認められない。

ただし,これについては契約書で別段の合意をすることにより,後の契約の解除・変更を可能にすることはできる。

 

3. Assignment of Rights(債権譲渡)

日本と異なり将来発生債権の譲渡は認められておらず,現に存在する権利を"I assign"と確実にtransferしなければならない。なお,considerationは不要である。

そして,当然ながら債務者の義務を実質的に変更することはできない(You cannot assign when it materially alters the risk of the contract)。あくまで同じ権利をtransferするだけだからである。

債権譲渡を禁止する契約をしていた場合("not assignable")に譲渡した場合でも,損害賠償責任は負うが,譲渡自体は有効である(Assingment is valid!)。

 

Multiple Assignments

二重譲渡があった場合,無償譲渡同士では最後の譲受人が勝つ。逆に,有償譲渡の場合は,最初の譲受人が勝つ。

 

4. Delegation of Duties(重畳的債務引受)

原則として,債権者の同意なく第三者との合意で第三者に重畳的に債務を引き受けさせることができる。

ただし,契約で禁止していたり,履行に特殊な技能などが必要だったりすると,できない。つまり,債権譲渡と異なり,"not delegatable"のときは,債務引受は無効となる(Delegation is NOT valid!!)

 

 

 

 

 

とりあえずざっくり説明しただけですが,一応Contractsの全体は網羅できたと思います。

こうしてみても,何だかわかってるんだかわかってないんだか,よくわからない科目です。