ロー生の官庁訪問対策

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今年はお陰様で某省庁から内定を頂けました。

そこで、僭越ながらロー生向けに官庁訪問対策について簡単に書いておきます。

 

なお、官庁訪問対策の一般論については、こちらのブログの記事が非常に有用なので一読されることを強くお勧めします。

ameblo.jp

無断リンク失礼いたします)

 

国家総合の試験についてはこちらを

 

pennguin.hateblo.jp

 

法律事務所や民間企業の就活と同様、省庁の就活でも、評価軸として数字で評価されることとできないことがあります。以下ピックアップして私見を述べていきます。

 

 

 【数字で評価されること】

僕の肌感覚としては、官庁訪問ではやはりこちらがかなり重要であると思っています。

1 学歴

学歴はやはり重要です。各省庁の過去の採用者の出身大学を見れば一目瞭然ですが、東大生の数が圧倒的に多いです。

これはそもそもの東大出身者の国家総合職試験の合格者数が多いというのもありますが、省庁のプライド維持という観点も大きいのではと。省庁間の序列維持においてどれほど優秀な学生を確保できたかというのは重要な指標になり、学歴はわかりやすいステータスだからです。これは批判されている部分ではありますが、官僚は権威が大事であること等も考慮すると僕自身は仕方がない気もします。あとやはり彼らは優秀です。

特にいわゆる五大省庁(財務・外務・警察・経産・総務自治)は7〜8割が東大出身者なので、それ以外の大学の人は残りの枠を争うという意識を強く持った方がいいです。

 

2 院卒・ロー生であるということ

そして、ロー生についてですが、院卒の採用者数も、試験の合格者数の割合に従い大体決められているように思います(3割程度)。院卒を異常に多くとっては大卒者に不利なのでこれも理にかなっています。

さて、文系の院卒というと、公共政策という強力なライバルがいます。そして、多様性の観点からもロー生ばかりを取るのもどうかと思います。

そうすると、そもそも各省庁がとるロー生の数は1〜2名程度だと思われます。すなわちロー生の志望者数に強く依存するということです。この少ない枠を争うことになります。

blog.goo.ne.jp平成23年と少し古いですが、この表からも上記のことが言えると思います。

 

特に五大省庁がそうだと思いますが、若手が重視される傾向にあると思います。理由として考えられるのが、①若手の方が伸び代がある、②部下として扱いやすい、③早いうちから省庁を志望しているということはそれだけ志望度も高いと言えるから、というところです(ここは大手事務所と同じです)。

官僚を志望してローに入学する人はほぼいないでしょう。とすると志望してまだ1〜2年にすぎません。学部卒の人はそれこそ中高生のときからなどもっと前から志望している人も多いです。ロー生にとって総合職試験は難しくないですし、司法試験の勉強が活かせますが、学部生は民間就活なら不要な勉強をわざわざやってまで受けているのだから志望度は高いです。そこの熱意の差は面接にも現れるでしょうし、形式的に経歴から見るのも理にかなっていると思います。

さらに、ロー生は司法試験を受けて結果待ちの状況で訪問するので「官庁訪問は滑り止めでは?」という至極まっとうな疑いを持たれるところからスタートします。したがって、ここで「なぜ官僚か」ということを明確に説明できることが必須となります。

もっとも、逆に言えば訊かれることが最初からわかっているのだから対策しやすいといえばしやすいです。「試験に受かってもこちらに来ます」、ということを熱意と理由を持って伝えなければなりません。

 

私見ですが、公取委国税庁会計検査院あたりは専門性が高いということもありロー生を評価してくれる印象があります。法律に近い法務省もそうかもしれません。

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というわけで、僕のような私立ロー出身者の場合はこの時点でなかなか厳しい戦いを強いられることになります。

もちろん、採用予定者数というのはあくまで予定にしかすぎず、ロー生だろうとなんだろうと圧倒的に優秀であれば他の志望者に関わらず採用してもらえるでしょう。僕が強調したいのは、圧倒的優秀者でなければ他の志望者に依存するので運も大きい、そしてその人に勝たなければならない、ということです。

 

3 英語力

英語力は正直に言ってそこまで評価されているとは感じませんでした

まず外務省などは英語が出来て当たり前で、留学経験者、帰国子女がゴロゴロいるので差別化になりません。

他の省庁でも、英語は入ってからでもできるしいずれは留学して身につけることになるのだから、今できるということがそれほど重要とは考えられていないと思います。あと、すでに総合職試験での英語科目やTOEICスコア提出により評価もされてしまっています。

もっとも、省庁によっては海外との仕事の重要性が高まっている割にあまりそういう印象がなく、英語ができる人材を欲しているところもあるようです。この辺りはリサーチしておくべきだと思います。

 

4 大学・大学院の成績

一応志望カードに書かされるところが多いですが、どれくらい重視されているかは不明です。もっとも、学力は総合職試験で担保されていることからも、事務所就活に比べればたいしたことないはずです。

 

5 説明会への参加等

総合職試験のだいぶ前から説明会やインターン等が開催されています。確実にこれらにはできるだけ参加したほうが良いです。

一つ目の理由として、これにより省庁に対する知識が深まり、志望動機作成や官庁訪問での面接等にその経験が活きてくるからです。官庁訪問は事前の知識は必要ないといってはいますが、全く興味のない省庁に訪問に来るわけがないしそれはあくまで建前です(ていうか、官庁訪問は建前が多すぎます)。政策等について全て知っている必要はありませんが、質問をすることができるだけの最低限の知識等は当然必要です。

二つ目の理由として、事前に採用担当者に顔を売っておくことができるというのがあります。採用担当者も人間なので、官庁訪問で突如現われた人よりは、当然説明会等で何度か会っている人ほうが熱意を感じられるし安心感もあるはずです。噂では、この時点である程度採用する人を決めてしまっている省庁もあると聞きます。

*某省庁の内定をもらった友人は10回くらい説明会に足を運んでいたそうです。もっとも、僕は内定をもらった省庁には1回も説明会に行ってませんでした。これだけをもってはなんともいえませんが一応付け加えておきます。

 

 

【数字で評価できないこと(官庁訪問

1 面接カード(志望動機)

省庁により体裁は異なりますが、事前にあるいは当日にA4で1枚程度の紙を書く必要があります。自身の学歴や資格はもちろん、志望動機などを書く欄もあります。

この欄は本当に一言程度なのでそんなに差はつかないだろうと思います。もっとも、逆に少ししか書けない以上、そこで目に留まるような強力なものが必要なのかもしれません(事務所の志望動機は字数制限がなくて長いことがほとんどですが、民間だと意外と短いので、それに近いかも)。

 

2 人事面接

人事面接はどの程度評価されているかわかりません。1回10分程度と時間も短いですし。

完全に私見ですが、大学名などで事前にふるいにかけて、最初の入口面接の印象で比較的合否を決めてしまい、選考過程でそれを確認していってるのではないか?と思っています。人事のプロの方なら数分話しただけでその人のポテンシャルはある程度わかってしまうのかもしれません。

「じゃあ官庁訪問で頑張っても意味ないの…?」ということはもちろんないです。面接で熱意を示すこと、あらゆる質問に的確に応えること、というのは当然重要になってきます。よくある質問については事前に答えを用意しておくことと、虚を突かれた質問に対してもその場できちんと考えて説得的な回答ができる必要があります。「説得的であること」「論理的であること」というのが極めて重要であると思います。

そして、官庁訪問で重要とよく言われるのは「成長をみせること」です。

訪問中は多くの方と原課面接で話すことになります。そのお話を聞いて志望理由をブラッシュアップしたり、知識をつけたり、自分で悩んだりして、成長したことを短い期間で見せることが重要です。

 

3 原課

原課とは、職員の方と1対1で30分~90分程度業務についてお話を聴く面談のようなものをいいます。一応建前上は評価には反映されていないと言われますが、さすがにそんなことはないだろうと思います。当然フィードバックはされているはずです。

①しっかりメモを取りながら話を聴く、②気の利いた質問をする、③自身の意見を問われた場合でもテンぱらず自分なりの考えを示す、といったことに注意すればいいと思います。業務から少し離れた世間話や進路相談などしてもよいです。

あくまで面接とは違うので、あまり硬くなりすぎず、楽しんで好奇心をもって臨むのが大事だと思います。

 

4 体力・気力

官庁訪問は連日朝から晩まで拘束され、その間に何度も面接が入り体力的に非常に過酷です。真偽不明な様々な情報が飛び交ったり、いつ呼び出されるかわからずずっと待機していなければならなかったり、呼び出されるまでこれから何をするのかわからなかったり、学生同士のマウンティング合戦があったり、とにかく疲れます。その意味で、体力・気力というのは思っている以上に重要です。

 

ちなみに、官庁訪問の倍率は単純に各省庁の訪問延べ人数でいうと6〜10倍くらいだと思います。僕のところも大体8倍でした。某省庁の1日目は120人来ていたので第一志望だけでいっても約5倍です。

「何を言ってるんだ。一般企業は100倍とかも普通にあるじゃないか」と反論されそうですが、企業エントリーは誰でもできるし、ESは最悪数時間かければ出せるのだから箸にも棒にもかからないような人も含まれている以上、比較しても無意味だと思います(そもそも母集団が違うもの同士の倍率を比較することが無意味ですよね)。

官庁訪問はまず難関の試験ですでにふるいにかけられています(学部卒ならば20倍。そのため、単純に倍率で言っても100倍以上です)。

さらに、第3クールの2日目は実質的に形骸化しており、1日目に訪問しなければならないため、最終的にはどこか1つからしか内定を受けることはできません。日程が合う限り何個でもエントリーし内定を取り得る民間や法律事務所とはここが決定的に違います。

なので、自分の志望だけでなく、自分の経歴や能力から可能性がありそうな省庁を見極めるということが非常に重要だと思っていますロー生は周りに志望者が少なく情報不足になりがちなので、余裕があればできるだけOB訪問などをしておくと良いと思います。

 

5 「官僚っぽさ」?

法律事務所にいる弁護士の方は、プロフェッショナルということもあり、なんというか「変わってる人、長いものに巻かれたくない人」が多い印象があります。

他方で、官僚の方は、ジェネラリストでありかつ国民の目に晒されてる公的な仕事であること、そして将来的に人の上に立つ管理職候補であるということから、なんというか「完璧さやまともさを備えている人」が多い印象があります。

もちろん弁護士にも完璧っぽい人はいるし、官僚にも変な人はいるのであくまで印象論ですが、仕事の性質や求められる能力がまったくもって異なる以上、「官僚っぽさ」というのはあるはずです。

僕は先日弁護士の先輩に合格祝いをしてもらったのですが、進路で迷った旨お話したところ速攻で「君は明らかに官僚は向いてないから弁護士で良かったと思うよ」と言われました。僕もそんな気がします。

というわけで、そもそも自分が「官僚っぽさ」を備えているかどうかを考えてみるのもよいかと思います。

 

 

他にも色々言いたいことはあるのですが、長くなったのでこの記事はこのあたりで。参考になれば幸いです。