日本の大学でもそうだが、アメリカの大学にも看板学部というのはある。いや、むしろアメリカの大学は専門ごとのレベルの差が顕著なので、よりハッキリしている。
ペンシルバニア大学の看板といえば、何といっても経営学部、ウォートンスクール(The Wharton School)である。
それはtwitterを見ても明らかだ。
大学本体のフォロワー数は6万5千ちょっと。
それに対してウォートンは…
まさかの16万7千。さすがにこれは笑ってしまう。ウォートンという名前自体が完全に一つのブランドになっているのだ。
というわけで、ペンといえばウォートン、な空気は避けられない。
そこで今回はロースクール生という外部の立場からではあるが、一応授業を取った者として、ウォートンについて書いてみる。
おかげで大学が認知されている
「ペンシルバニア大学…??あぁ、ウォートンスクールのとこか!」
最近はスタートアップ(少し前はベンチャーって言いましたよね…)ブームや意識高い学生の台頭(というか、悪目立ちしてるだけだが)もあり、MBAの人気は凄まじい。
MBAと言えばハーバードと並ぶトップのウォートンは憧れの的である。そういうわけで、ウォートンの母体であるペン、という形で大学の認知度はまぁ高くなってるのかなと思う。
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ウォートン関連の本は日本でも大人気である。
しかし、なぜこういうビジネス書の日本語訳書のタイトルはこうもダサいのか。こういうポップでアホらしいタイトルをつけることが本当に効果的なのかそれこそマーケティング的に疑問である。出版社に舐められてるよな、と思う。
バカから金を吸い上げるのが一番賢いビジネスということですかね、まったく。
WBLC (Wharton Business and Law Certificate)が取れる
ロースクールの学生は、+13000ドルくらい支払えば、別途WBLCという修了証が貰えるコースが受講できる。ウォートンの授業の法律に関係する部分の授業を受講できる、ミニMBA的なもの。
ウォートン生と一緒に受講するわけではなく、ロースクール生のみで受ける。だいたいLLM生118名中50名弱が取っている模様。授業は全て決まっている。
詳しくはサイトに書いてあるので、興味ある方は一読してみてください。
executiveeducation.wharton.upenn.edu
Decision Making等のビジネススクールぽい授業もありつつ、ファイナンスが主な模様。
やはりコーポレートロイヤーにとってはこの部分の知識は重要だろうし、レジュメにも書けるので(どれくらい意味があるかはまた問題だろうが)、財布が許す限りは取る価値があると思う。
授業が1科目まで履修できる
LLM生は、年間で1科目までならウォートンを含め他の大学院の授業が履修できる。また、それに加えて僕のように個人的に教授の許可を貰って聴講することももちろん可能である。
MBAの授業料は非常に高いので、その授業に出ることが出来るというのは大きなメリットである。
ウォートンの存在感
(Jon M Huntsman Hall。めちゃくちゃでかい)
ウォートンは学部もあるし、大学院のMBAも学生数がかなり多い(一学年900人ほど)。総学生数はなんと約5000人にものぼるとのこと。多すぎません?笑
一方でローはJDが一学年約240人。LLMは約120人なので、全体を合計しても840人程度。このように規模が小さい上、学部も無い。
そんなわけで、よく言えばローの学生は希少ということになるが、悪く言えば存在感が無い。建物の大きさも歴然たる差がある(ウォートンの建物は悪く言えば鈍重で、個人的には歴史と品格を感じるローの建物のほうが好きです)。
これは、学校の経営にも大きな影響を与えているだろう。財源とか。
グッズも、ペンブックストアにはパーカーやらファイルやらウォートングッズが溢れている。他の学部・研究科は多少あるくらいだ(Penn Lawグッズはローの建物の中の購買で売っている)。
(ラウンジ。なんかすごい)
WBLCの存在が志望動機の一つという人は多いはず(僕も、ウォートンの存在をステートメントに書いた)だが、ビジネススクールがいいからそこのロースクールに行くというのは少し悔しい気がしなくもない。Cross disciplinaryといえば聞こえは良い。
(ジョンハンツマンの他にも、キャンパス内のロカスト・ウォーク沿いに建物がある)
正直にいうと、僕は秋学期のときは若干ウォートン(及び一般的にビジネススクール)に劣等感・羨望感を感じていたのは否めない。マーケティングの授業を受けていたときにその圧倒的な覇気というかエネルギッシュさに圧倒されたのが大きいし、純粋に昨今の、とりわけアメリカの起業文化に触発されたからである。
アメリカでは個性やアイデアを活かして挑戦することが良しとされるので、どちらかというと個性よりひたすら勉学なロースクールからすると(ローも十分挑戦ではあるが)、自由に自分の意見が言えるビジネススクールという場は羨ましく感じることもあるのである。ロー生がうんびゃくねん前のわけのわからない判例にうんうんうなっている中、彼らは「ドロップボックスとグーグルドライブってどう違うんだろう」とか「なんでシェイクシャックはこんな短期間で成功したんだろう」「単純にうまいからじゃね」「発祥がセントラルパークでイメージいいからじゃね」とか話しているのだからオキラクに見えても仕方ない。ロクに勉強していなくても(これは若干失礼だが)自分の感性や思いつきで発言しても良い雰囲気があるのである。
まぁ当時はケースブックの厚みに参っていて隣の芝が青く見えただけであり、彼らは彼らで大変なんだろうと思う。実際に、春学期にアントレプレナーシップの授業をとってものすごく大変な思いをした。アイデアを絞り出すというのは並大抵のことではない。
そう考えると、ひとまず過去の先人の考えを学べば良いローはラクだなとも思えてくる。要するに難しさの質が違うのだ。比べるのはお門違いかもしれない。
長くなったので続きは次回の記事で。
*2017年2月に加筆修正しました。批判を受けて文章を訂正するのは本意ではありませんが,卒業生として学校の名誉を保護する義務もあると感じたからです。貴重なご意見に感謝致します。