導入修習振り返り

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いよいよ司法修習が始まり、先日導入修習が終わりました。

今までの立場と異なり修習生という公的な身分になったので書けることもより限られると思いますが、せっかくなので可能な限り色々振り返ってみたいと思います。

 

1 導入修習概要

導入修習は埼玉県和光市にある司法研修所での3週間の研修です。以下の2つの役割があると思っています。

①各地での実務修習が始まる前の準備

実務修習は実際の仕事に近いOJT的な研修なので、それに必要な最低限の知識などを学ぶとともに、実務修習で勉強しなければいけないことを明確にするという趣旨があります。

導入は起案やディスカッションもあるとはいえ基本的には講義を中心とする座学なので、「あれだけ司法試験に向けて学校に通い勉強したのにまた学校に通うのか…」と最初は思いました。が、内容はローや司法試験の勉強とは全く違った実務的なもので、非常に充実しています。

弁護士を目指しているというと友人から法律について色々質問されますが、実務的なことがわからないため歯がゆく思うことが今まで多くありました。導入では例えば量刑の決め方を学んだりと、そういった知識をつけることができます。

 

二回試験とそれに向けた集合修習の予行演習

導入では、各科目の簡単な講義があったあとにいきなり即日起案が課されます。これは3時間で記録をもとに訴状や起訴状などの答案を書くというものです。

この趣旨は、各科目1回即日起案をすることで、ゴールを把握しておくということにあります。僕は危機感を覚えないと勉強に身が入らないタイプなので、このショック療法というか、とにかくよくわからなくてもいいから一回問題を与えて書かせてみる、というスパルタは自分にはとても合っているなぁと思いました。

起案は例えば検察では犯人性だけ、と二回試験で書くものよりは短いのですがエッセンスは概ね一緒です。今何が足りないかを知ることができたので、二回試験を見据えながら実務修習ができるなと思いました。

 

2 5つの科目・法曹は一体

導入の科目は民事裁判、刑事裁判、検察、民事弁護、刑事弁護の5つです。 法曹は一体であるとの理念のもと、自分の志望にかかわらず全ての分野を勉強します。これは若干迂遠なようにも思えたのですが、例えば弁護士になる場合は裁判官や検察官の発想を学んでおくのは後々役に立つし、同じ事件でも立場によって見方がこうも変わるのかと実感できてとても面白いです。

内容は実務的で、例えば民事弁護であれば訴状や和解の起案など、実際に弁護士になったらまさに仕事で行うことと同じことをやります。これなら自ずとやる気が出るというもので、ここがローの勉強と決定的に違うなぁと思います。

他方で、一つ気になったのは企業法務についてはほぼノータッチであるということです。修習のカリキュラムはおそらく昔から大きく変わってはおらず、民事弁護はいわゆる昔ながらの弁護士像というか、一般民事の弁護士の仕事内容を軸にしています。しかし現在は大手の企業法務事務所が増え、さらにインハウスローヤーになる人も多くなっています。上に「まさに仕事で行うことと同じことをやります」と書きましたが、企業法務でやることは正直カバーしていないなと思いました。

それはそれで実務についてからOJTをやればいいという発想なのかもしれませんが、時代の要請に合わせるのならば、企業法務という科目を設けるとか、民事弁護で少しその内容もやるとか、そういうのがあってもいいのかぁと思いました。

 

3 クラス

導入は修習生が70名前後の22組のクラスにわかれます。まさに学校のようです。詳しくいうと修習地がバレるのでいいませんが、僕のクラスは多くが地元の人なので、若干アウェイを感じています。他方で、今までの環境と違っていてとても刺激的です。

僕はローの同期から遅れているので友達が少ないことを心配していましたが、内定先の事務所や予備校のバイトなどで案外知り合いがいたり、ローの知り合いもチラホラいたりと、杞憂でした。クラスも多くの人が新しい友達を作ろうと前のめりで、たくさん友達ができたなぁと思います。

 

4 怒涛の飲み会

導入修習は3週間、実質15日間と短い間に多くの飲み会が企画されます。

僕の場合は①教官を交えたクラスの懇親会×2、②班の懇親会、③内定先事務所の懇親会、④教官の事務所見学と懇親会、というオフィシャルな懇親会が5回あったほか、修習同期となったローの友人や先輩との飲み会、東京の友達との送別会などでほぼ毎日飲み会がありました。

新しい友だちができたり、昔の友達と旧交を温めたりと楽しいです。が、正直胃が持ちません。やはり体力勝負だなということを痛感しました。


5 司法研修所の設備

①食堂

まず悪名高き食堂ですが、今年の夏に業者が変わったようで、普通に美味しいものでした。ただ大学の学食もあまり使ってなかった僕は、あの殺風景な感じがあまり好きになれず、ほとんど行きませんでした。

 

②寮の部屋

僕は寮には入れなかったため一度先輩の部屋に遊びに行っただけですが、殺風景にせよ古めのビジネスホテルといった感じで、まぁ暮らせるなぁと思いました。排水口はめちゃくちゃ詰まるみたいですが。

集合では入寮すると思うので楽しみです。みんな合宿みたいで羨ましく感じました。

 

売店・購買

売店はまぁまぁ色々売っていますが、1500人というキャパを考えるともう少し広くしてほしかったものです。昼とかは大行列になります。

購買は弁当と松屋の牛丼が売られています。弁当はボリューミーで味も結構美味しいです。牛丼は割高で野菜もなくちょっとなぁという感じでした。

近くにコンビニもありますが、めちゃくちゃ混むし、総じて食事事情はあんまりだなという感じです。ここは官庁訪問でも感じましたが国の施設推して知るべしです。

 

6 通所で思うこと

僕は通所だったので大体朝8過ぎに家を出て、9時半くらいには研修所に着くという感じでした。電車は一本でラクなのですが問題はバスです。バスは時間どおりに来ないし、混むし、揺れるし、なかなか快適とは言い難いものがあります。

和光市で降りるとバス待ちの列がものすごいので、一つ手前の成増から乗るようにしていました。成増はバスの本数が少ないので電車に乗り遅れると致命的ですが、そうでなければそこまで混まずに乗れます。

しばらくニート生活をしていた身にとっては8時前に起きて電車とバスを乗り継ぐだけでも一苦労ですが、同時に「やっと社会に馴染んだなぁ」という感じがして嬉しくもあります。弁護士を選んだ理由の一つになんとなく社会の歯車になりたくないという思いがありましたが、とはいえずっと社会不適合な生活をしていると心配になってくるので、きちんと週5で朝起きて外に行くだけでようやく一人前になれたような錯覚を覚えます。

……しかし、月から金まできちんと朝起きて家を出るというのは、幼稚園、小学校、中学校、高校としていたわけです。実に15年間です。しかも中学とかは朝練もあったので下手したら7時前に家を出ていたわけです。

 

あれ????本当に大学は人をダメにするところなのかもしれません……。

一応これに対して反論するならば、「そもそも朝起きて毎日同じ時間に会社なり学校なりに行くという国が決めたルールに対して疑問を抱く」ところに価値があるのかもしれません。でもあの楽しさとラクさを知ってしまうのは罪だなぁと思いました。

 

7 バッジ・スーツ

初日に修習生のバッジをもらいました。

こんなバッジをもらうなんて高校の時以来でしょうか?実感が湧いてものすごく嬉しかったです。1年後これが弁護士バッジになるのが楽しみでなりません。あととりあえず飲みに行くときは外そうと思いました。

スーツもオーダースーツを新調しました。生地もわりといいものにしたので着心地がハンパなく良いです……。もう既成品は着れないなぁと思いました(白目)

いいものを身に着けたいというのが勉強のモチベーションになっていたので、これから色々揃えるのが楽しみです。スーツは面倒で嫌だという人も多いですが、気持ちが引き締まるので僕はやはりスーツが好きだなぁと思いました。

 

8 おわりに

導入は毎日充実していて、あっという間の3週間でした。座学中心でしたが、充実していたのは「勉強」ではなくてスーツを着て「研修」として臨んだのも大きいなと思います(本当はローもそういう決意で臨むはずだったのでここは反省点ですが…)。3週間という短期集中だったのも良かったです。

あとは、僕はあまり自分に自信がないタイプなんですが、今回は曲がりなりにも司法試験に受かって選ばれてここにいるんだ、という自信があるのもいいなと思いました。今後も奢らず自信をもって頑張りたいものです。

 

クリスマスは引っ越しも兼ねて修習先で過ごしましたが楽しかったです。新居の準備はまだまだですが、新生活のことを考えると今から心が躍ります。

以上東京に帰る新幹線よりお送りしました。

ぺんぎん