そもそもLLMとはなんぞや

このブログではわりと当たり前にLLMというワードを使ってますが、一応説明しておこうと思います。
もっとも、LLMの概説をしている各種サイト・ブログは多くあるので、基本的にそちらにまかせます(丸投げ)。


1 概要
LLMとは、法学修士の学位のことです。
正式には"LL.M."と2個ドットが入ります。
Master of Lawsすなわち法学修士の略ですが、ラテン語のLegum Magisterから来ているそうです。
アメリカの大学には法学部がありません。なので、アメリカで法曹になりたいという学生は、学部では何かしら他の学問なりを学び、それからロースクールに入る必要があります。
通常ロースクールの課程はJ.D.(Juris Doctor。女子大生ではない。)と呼ばれており、学生はそこで3年間法律を学びます。

一方、LLMは、主に他国で既に法律を勉強し、法学士を有している留学生を対象とします。ヨーロッパや中国の学生の場合、本国の学部を卒業してそのままアメリカのLLMに来るパターンも多いですが、日本では専らMBAと同様に既に仕事で法律を使ってる人が行くもの、とされています。
すなわち、弁護士、検察官、裁判官、官僚、企業の法務部員、などが、さらなるキャリアアップのため、法律事務所・官庁・企業等から派遣されていく、というのがメジャーです。


2 Bar Exam
LLMを取得すると、履修科目にもよりますが、アメリカのいくつかの州の司法試験(Bar Exam)を受験する資格が与えられます。どこの州のロースクールを出たかは関係がなく、受験資格の得やすさや慣例から、多くの人がニューヨーク州の試験を受けます。僕も行くのはペンシルベニア州ですが、司法試験はニューヨーク州です。

そんなわけで、LLMではNYバー受験に必要な科目を受けつつ、自分が専門的に学びたい選択科目を履修することになります。
なお、LLM生向けクラスもあるようですが、授業の大部分はJDと合同です。


3 LLMの意義
では、そもそもなんでアメリカのロースクールがLLMなんて学位を設けてるのでしょうか?

(1)アメリカ側のメリット

これは勝手な邪推ですが、アメリカの国策という側面があるのではないでしょうか。
アメリカの大学の知名度を世界的に高めるためには国外から学生を呼ぶのが一番ですが、LLMは外国人向けです。それでその大学の卒業生として国外で活躍して名を売ってくればまさにwin-winというわけです。最近はアメリカのロースクールも志願者数が減っているらしいので、外国人に門戸を開くことは知名度の意味でも財政面でも手っ取り早いのだろうと。LLMを増やしてJDの数を絞れば、規模を維持しつつアメリカ国内での難易度を上げることもできますしね。

(2)学生側のメリット

学生側としてもメリットが多いです。同じく英語圏で留学しやすいイギリスにもLLMはありますが、修了しても司法試験が受けられるようになるわけではありません。イギリスの大学の法学部を出なければいけないそうです
また、他の専門職大学院として有名なMBAの場合は2年です。
アメリカのLLMは、1年という短期間で学位が貰える上に、司法試験も受けて資格を得ることができるため、非常に人気、というわけですね。

日本の大規模ファームのパートナーになるためにはLLM修了が必須とも言えるらしいです。プロフィールを見ると、大体の方がアメリカの有名ロースクールを出てニューヨーク州弁護士の資格を持っておられます。
これは、渉外法務を行う上でアメリカ法の知識や英語力が役に立つというのもそうですが、純粋に名前に泊をつけるという効果もあるそうです。


4 選考
選考の要素は以下の5つから6つです。

TOEFL(100点以上が目安)
②学歴及びGPA
③エッセイ(パーソナルステートメント
④推薦状(2通から3通)
⑤レジュメ(英文の履歴書)
(⑥電話面接(音声電話かテレビ電話?ないところが多い))

なお、JDと違い、LSAT (Law School Admission Test。日本のロー入試でいう適性試験)は要求されません。法律の試験も無く、面接があるところを除いては書類審査のみです。

TOEFLについては100点が目安とされていますが、これで足きりというわけではなく、他の書類との総合考慮となります。もっとも、上位校の場合は110点程度を取っている人もザラなので、できるだけ高い点を取る必要があります。

また、アメリカの大学院入試は就職同様コネもOKなので、事前に教授と連絡を取り、キャンパスビジットをして教授と面会しておいたりするのも有効だそうです。

うちの大学院からの交換留学でも、通常の手続きと同様①~⑤が要求されますが、ペンだけVIP待遇だったので、僕は推薦状はなくて済みました。ありがたや。
そういうわけで、うちの大学院の交換留学選考については改めて書きたいと思いますが、通常の選考については詳しいことはわからないのでご了承ください。


5 まとめ
だいたいこんなところでしょうか。
NYバーをとってもアメリカで就職するのは現実的には厳しかったり、意味がないんじゃないかとか批判されることも多いLLMですが、1年間でアメリカ法を概観し、興味ある分野を専門的に勉強したりするのは有意義なことだろうと僕は思います。今後、日本人で行かれる方ももっと増えるのではないでしょうか。

ではこんなところで。