30

 

私事ではありますが、先日30歳になった。

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(誕生日プレゼントにもらった30年物のバランタイン

 

30歳というといよいよもう若いとは言ってられない。節目の年だなぁという感じである。

しかし、30になったからといって何かが急に変わるわけではなく、「何かしら変わらなければならない」という強迫観念に近いものがあるだけである。

僕はこの年にしては精神的に幼いと思うが、それは大きく二つ理由があると思う。

一つは小説が好きで現実的な思考よりも理想論を語るのが好きなことだ(6年いた早稲田の校風もあるのだろう)。簡単に言えば、社会に対するアンチテーゼや人間的に大切なものの追求である。これは社会のしがらみの中で失われてしまうものの代表格だろうけど、「社会はそういうもんだから」の一言であきらめず、そういう理想を追う心は常に持ち続けたいと思う。

もう一つはやはりいわゆる社会生活が短いからだろう。日本のように「学生」と「社会人」で分断する文化は良くないと思っているが、やはり「社会」に出て揉まれていくことで人は大人になるのだと思う。不条理を受け入れなければならない面が増えるのもそうだし、利害関係はあるが今まで関わったことのない人と関わることも増えるし、そういう中では自分を押し殺して社会的に求められる姿に自分を合わせる必要がある。特に僕のように大きい組織で働いている場合は(弁護士という自由業であったとしても)ある程度はやむを得ない。

普通に現役で大学に行き、ローの既修に行き、現役で司法試験に合格した場合は27の歳であるが、僕は二回の浪人と留学により+3である。予備試験ルートの人は下手したら5歳下とかである。そういう年下の人が先輩にたくさんいたりするわけで、だいぶ先に行かれちゃったなぁ、とへこむこともある。そして、働き出せば経済的にも自立し、ある程度の余裕が出てくる。今までのように生活がやっとという状態ではない。欲しいものも色々買えるようになり、身の回りの物のレベルなんかも上がってくる。お金をどこに使うか、どういうライフスタイルを希求するかということも重要になってくる。次のステップとして結婚等の将来設計へも意識が向くようになる。通常であれば23~24くらいの歳で経験するべきことをこんな遅くに経験しているわけで、その点はなんというか、若いときの振る舞い方にだいぶ違いが出てくるだろう。僕は芸人みたいなもので長い下積みがあり、ようやく芽が出たというところなのだ。もっとも、弁護士としてはこれからようやくまた下積みなのではあるが。

この業界はまだまだ「若いうちに受かるのがなんぼ」という風習があり、実際「期」というものですべてが決まるある意味縦社会である。最終的には実力主義だが、しばらくはこの「期」が付きまとう。司法試験の勉強と実務に開きがあることからもすると、早く弁護士になって実務家として様々な経験をする方がいいという意味で理にかなった考え方だとは思う。

僕はジョブズスタンフォードのスピーチが大好きだが、そこでconnecting dotsという話がある。要は、色々と重ねてきた経験である点が、将来どのような形でつながるのか(役に立つのか)というのは振り返ってみなければわからないという話だ。とても好きである。端的に行ってしまえば出たとこ勝負であるが、その時の自分のやりたいこと(inner voice)に耳を傾けろというものである。

思えば僕も司法試験合格という一つの確固たる目標のためにこれまで頑張ってきたわけだが、その間にたくさんの寄り道をした。色々な国に旅行に行ったり、たくさんの小説を読んだり、様々なバイトをしたり、二回の留学をしたり、ペンでビジネスの講義を取ったり、官僚の就活をしたり、色々である。たしかにいわゆる最短ルートとは程遠く、一心不乱に直線的に来たわけではない。そうやって直線的に来たら弁護士人生がより長いものになり、成長もできたのかもしれない、と思うこともある。しかし僕はやはり、その点がいつか繋がってより良い人生になることを信じている。色々なことがあったけど、それが役に立ったり、あるいは自分でも気付かない形でも何らかの影響を与えてくれていることを信じている。

そんな意味で、人よりは一歩も二歩も遅く人生を生きている気がするのだが、だからこそここまででき得ることはたくさんできたんじゃないかと。そしてだからこそこれからは弁護士としてでき得ることをたくさん楽しむことができるんじゃないかと。そんな気がしています。

 

僕が子供の時に見ていた30歳の大人と比べると、相変わらずどうしようもない人間な気がする。まぁ誰しもそんなものでしょうか。でも、色々過去の行動や決断を振り返って考えてみれば、今の自分ならそんなことはしないだろうな、という恥ずかしいようなこともたくさんしてきたような気がする。社会や街や人を見る目も変わってきたような気がする。そういう意味では多少は成長しているんだろう。

30代の抱負としては、仕事がある程度できるようになり、自分の考えを持ち、自分の好きな物に囲まれた「カッコいい大人」になることである。こだわりを持って生きていきたい。でもこだわりに囚れた「つまらない大人」にはなりたくないし、変化を恐れない柔軟性も持ちたいと思う。でも自分らしさや自分の芯も大切にしたい。

昔は到底手の出なかった、初めてのボーナスで買ったチャーチのディプロマットを履きながら、でも14歳のときから聴いていたoasisを聴きながら、そんなことを思います。

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