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ぺんぎんぺーぱーちぇーす -PennLawLL.M.留学記-

University of Pennsylvania Law School LL.M.(ペンシルベニア州フィラデルフィア)を修了し、日本に帰ってきました。留学時代のことやアメリカのことなどを細々と書いていきます。

Summer Programの授業③―Writing

サマープログラムで受講した授業3つについて③

<US Legal Writing>

 

色々と数字が乱立してわかりにくくてすみません…。さてサマーの授業の最後、ライティングについて。 

1 概要

リサーチより更に細かく6クラスに別れ、1クラス20人程度の少人数制。試験はなく、成績はPass/Fail。教授はニュージャージーのロイヤーであり感じのいい近所のおばちゃんといった雰囲気のPennington氏。

少人数なため、先生との距離が近く発言しやすい。ぺんぎんもしばしば質問・発言をした。

 

2 内容

文字通り、ロイヤーとして必要な法律文書の起案能力を培う。

下の教科書のところで書くが、非常に細かい引用(Citation)のルールを習う。日本でも、法学研究科の人等は論文を書くためにこうしたことを習うのだろうが、普通の大学生もレポートを書くのだから必要なはずである。なぜ、日本の大学はこうしたアカデミックライティングのスキルや引用法などを教えないのだろうか?少なくとも早稲田大学法学部でそういうことを習った記憶は無い。一度、親切な先生が剽窃の注意の紙っペラをくれただけだ。

「そんなもの自分で調べろ」と言うのかもしれないが、やはり必要なことはきちんと教育してしかるべきだと僕は思います。文章はきちんと指導されれば上達するすると思うんだけどな。

 

なお、内容的に一番面白いと思ったのは、CREAC

これは日本でもお馴染みのIRAC(I: Issue, R: Rule, A: Application, C: Conclusion)をもう少し細かくしたもので、

C: Conclusion, R: Rule, E: Explanation, A: Application, C: Conclusion

を意味する。試験の時は時間がないので簡略化したIRACでいいということだが、ペーパーではCREACを守るように、とのこと。要するに結論を先出しして規範のところを厚くしろ、という違いだとは思う。

ちなみに、引用は、Ruleの部分では、「全ての文章につき」行うように指導されます。これはあとで気付いたが、日本法の論文を書くときに条文を引用するのと同じなんですよね。アメリカでは判例が第一法源だから、判例をいちいち引かなければならない。条文のように暗記してるわけでも簡単に引けるわけでもなく正直めんどくさいが、慣れなければなと思う。 

 

3 教科書

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指定教科書はA Lawyer writesというもので、文章の書き方を豊富なサンプルを交えて詳述しており、大変わかりやすい。毎回一定ページがReading Assingmentとして課され、授業はその範囲をより噛み砕いて説明するような形で行われる。

また、もう一つ必携の書が、左の青い本、その名もThe Bluebook

これは、法律文書を書く上で必要なCitationの仕方について尋常じゃないくらい細かく書いてあるマニュアル本。

基本的な判例は、以下のように示す。

Thompson v. McNeill, 559 N.E.2d 705, 707 (Ohio 1990).

左から、

事件名(訴訟当事者名)、巻数、リポーター(判例集)、最初のページ、ピンサイト(引用部分のページ数)、裁判所、判決年

である。

略し方なども細かく決められており、例えば、事件名を書く時は、当事者の名前を以下のように略すことになる。

Feist Publications, Inc. vs Rural Telephone Service Company

Feist Publ'ns Inc. v. Rural Tel. Serv. Co.

正直、「別にそれくらいそのまま書けばいいじゃん」と思うのだが、きちんと略さなければいけないことになっている。

なお、正式に略す際にはピリオドマークが必須であり、United StatesがU.S.となるのもこの道理だが、versusをv.と略すのは何だか笑ってしまう。vsの方が感覚的にはわかりやすいからである。ピリオドが無いと正式な略称にはならないことを徹底すれば、vsはvs.と表記しなければならないが、これとv.を比べると後者の方が字数が少ない。そこでv.とな、という具合。

また、ブルーブックを読んでいて驚いたのが、アメリカだけでなく各国の判例等の引き方も詳述されていること。もちろん日本もあり、MINSHUとかHANREI TAIMUZU [HANTA]だとか書いてある。TAIMUZUって…そこはTIMESでいいでしょ笑。何だか面白い。グローバルだ。

 

4 課題

課題はしんどい。3つのペーパーと、2つのオーラル課題があった。

・ペーパー課題

① Case Brief

Case Briefとは、要するに判例の概要を一枚のペラにまとめたレジュメのことである。これを作る力は基本的能力とされるが、ネットを探せば普通にあるので自分でわざわざ作ることは少ない気がする。

Facts, Procedural History, Issue, Rule, Holding, Dispositionなどをまとめる。判例が長い場合は中々しんどい。

 

② Email Assingment

著作権法にかかる事例問題に対して、指定された4つの判例を用いながら著作権侵害の基本的事項とSubstantial Simiralityという概念を説明するというもの。事件担当のロイヤーでありボスである先生からメールが来てそれにアソシエイトとして返信するという設定で行う。ダブルスペースで4ページ程度。

まず、著作権法に関しては、日本法を学部時代にかじっただけであり、アメリカ法は初めてだったので、前提知識が無く大変だった(しかし、早稲田で友達がプレゼンしてくれたことがうっすら頭に残っており役に立った)。そして、判例4つはめちゃくちゃ長く、そこから重要な規範(Rule)を抽出するのはかなり骨が折れた。

なお、著作権侵害については日本でも話題だが、Substantial Similarity(本質的類似性)とは、一般の人が両方の作品を見て、本質的類似性を感じるかどうかというテスト(lay observor test)によって行う。この際に、アイディア自体の類似性ではなく、そのアイディアの発現としての表現そのものに類似性が見出せるか否かが分かれ目となる。

例のオリンピックについて言えば、修正案にしろ、原案にしろ、やはりSubstantial Similarityは見出せると僕は思う。というか、この件については擁護しているデザイナー達の発言がアホすぎてぺんぎんは怒っている。

 

話が逸れた。提出後、先生が修正とコメントを付して返却してくれるのだが、めちゃくちゃ丁寧で感動してしまった。英語の文法的なことはもちろん、よりよい表現を提案したり、内容にも具体的なコメントをしたり。日本の大学の授業でここまでしてくれた先生はいないように思う。

 

③ Memo Assignment

上の課題で考察したルールを元にして、実際にそのルールを事件に当てはめるというもの。ダブルスペースで9ページ。しっかりしたCitationが求められる。

内容的には、以下の構成

  • Question Presented:何が問題になってるか
  • Brief Answer: 簡潔に問題に答える
  • Facts: 事実関係を説明
  • Discussion: CREAC(結論、規範、説明、当てはめ、結論)を使い、事件を解決

Factsは先生から提示されたものをまとめればよく、Discussionの規範と説明のところはEmail Assingmentで書いたことがそのまま使えるので、肝心なのは当てはめということになる。ここは日本法と同様に、「規範と当てはめの一致」に気をつけて書けばいいわけだが、なにぶん英語では初めだったので骨が折れた。法律文書ではカタい表現が好まれるので、中々筆が進まない。しかし、TOEFLの勉強が活きていることを感じる。

 

・その他課題

①Simulated Meeting

これは、Email Assingmentで考察した結果について、グループに分かれて、別のロイヤーに 扮した先生(実際のロイヤーだと思うけど)と面談し、説明するというものである。書くだけでなく、それを口頭でも説明する力が問われ、非常に実践的だな、と思った。こういう課題をきちんと入れてきたり、本当によく構成された授業だと思う。

 

②Conference

これは、Memo Assingmentの内容について、担当の先生から30分ほどで個別にコメントをもらうというもの。これは来週あるので、先生のコメントを読み直して準備したいと思う。

 

 

5 スピーチ

授業では、ライティングとは関係なく、毎回終わりに2,3名ほどの5分間スピーチがあった。内容は、「自国の法律に関係する何らかのトピック」であり、自由に選べる。

シリアスな話題から、多少軽い話題まで、各国の様々なリーガルトピックが聴けて面白かった。それとともに、本当に皆流暢な英語を喋るな、ということを思い知らされる。

 

僕は婚外子相続分違憲判決か裁判員制度で行こうと思ってたが、ちょうどオリンピックのエンブレム問題があったので、タイムリーかつ著作権法とも関係するなーとこれにすることに。スタジアムの話を導入に、「こんなエンブレムがあるんだけどベルギーの劇場から提訴されています、著作権的には〜」ということを説明した。

クラスにベルギーのやつがいたのだが、こんなこと知らないよ、とのことだった。あっちではあまり騒ぎになってないのでしょうね。結構神経質なのでベルギー人がいることに若干気を遣ったが、僕は佐野を批判する立場だったしまぁ大丈夫だったかなと。

 

 

6 まとめ

一番好きな授業だったからか、長々と書いてしまった。

リサーチもそうだが、きちんとした法律文書の書き方を一から指導してくれ、とてもいい授業だった。日本のロースクールでも(一部の先生は接続詞の使い方等について触れたりするが)、きちんと法律文書(文章)の書き方を教えるべきじゃないだろうか。そうすれば、採点実感とかであんな不毛なお叱りを受ける人もいなくなると思うのだが……。

また、先生の人柄が良かったこともあると思う。そして、文章の書き方や引用法を丁寧に教えてくれ、大変役に立った。

他のロースクールでは秋学期に併行してやるところが多いらしい。リサーチと並んで、本格的勉強に入る前に勉強させてくれるペンのカリキュラムは素晴らしいと思うのでした。