NY Bar 5 - Criminal Procedure

 

刑法と違って、日本の刑訴法はアメリカのCriminal Procedureの影響をかなり受けているので、オリジナルの議論を直接学べる楽しい科目である

例えば、毒樹の果実理論はアメリカのFruit of poisonous treeを輸入したものだし、毒樹の果実でも証拠とできる例外の場合である、Independence Source, Inevitable Discovery, Attenuationはそれぞれ独立入手源の法理、不可避的発見の法理、希釈法理として輸入されている

 

また、非常にスマートというか、議論、structureが整理されていて、システマチック。そのため、先生も、細切れに知識を覚えるのではなくまず全体像、構造を理解して、そこに知識を入れていくように、と言っていた

ただ、裏を返せばprincipleが無いとも言え、つまんねーとこぼしている友人も多かった。例えば、捜索差押えの分野では、日本では一つの抽象的な規範があり、それを直接当てはめることができないような限界事例が問われるが、アメリカでは、「こういう場合はこう」というようにケースが類型化されている。よって、原則を一つか二つ覚えて、例外を幾つか覚えればよく、何というか暗記よりになっている

また、日本では、無令状捜索差押えがそもそもなぜ許されるのか、という点に議論があり、相当説と緊急処分説が対立しているが、そう言った議論は無い。というか、急迫状況(Exigent circumstances)あれば良いとする一方で、逮捕に伴う自動車の捜索(Automobiles searched incident to a custodial arrest)においては自動車が証拠物を含んでるとの合理的な理由を要求しているあたり、折衷的ということができそうである。さらに言えば、ニューヨークでは無令状身体検査(Frisk)の際は武器があると合理的に思う場合にしか認めないものの、マルチステートは法禁物(つまり薬物とか)でも認めるとするなど、結構ばらばら

 

内容的には、日本の刑訴から証拠法を除いたところという感じだが、日本以上に憲法の要素が強く、憲法修正4条(捜索差押え)と修正5条・6条(自白、ミランダ法理)、修正14条(デュープロセス)の各論という感じである。その他の論点も、二重の危険(Double Jeopardy)とか、自己負罪拒否特権(The priviledge against compelled testimony)とか、憲法から派生している。そしてこの辺りは日本が輸入している概念でもある

なお、公訴の提起の分野は無いので、あのめんどくさくてよく分からない訴因とかいうやつを学ばなくて良い。訴因ってアメリカ由来じゃなかったっけ?

 

 ちなみに、捜索差押えのstructureは明確で、以下のようになっている

 

●適法な令状による捜索差押えの要件

前提として、修正4条が適用されること

  • 捜査機関による
  • area or item protected by the 4th amendmentに行われた
  • 捜査機関がprotected areaに入るかpriacyを侵害した
  • 捜索差押え対象者に原告適格がある(個人のプライバシー権の侵害)

その上で、

  • 令状が中立的な判事により発行
  • 令状が合理的理由(probable cause)と特定性(particularity)を満たす    *probable causeとparticularityが無い場合、警察官は瑕疵ある令状を善意に(in a good faith)信頼した
  • 令状が警察官により適切に執行

されることが必要になる。各々の要件が論点となる。

 

●適法な無令状捜索差押えの要件

また、適法な無令状捜索差押えは、以下どれかに当てはまれば良い

  • 急迫性質(令状取る暇ない)Exigent Circumstances
  • 逮捕の伴うもの(逮捕されたら修正4条の権利がなくなる) Search Incident to Arrest
  • 対象者の同意 Consent
  • 車(プライバシーの期待が少ない)Automobile Exception
  • 外から見て明らかに違法な者がある Plain View
  • 収容に伴うもの Inventory Searched
  • その他特別な必要性 Special Needs
  • 職質と身体検査 Terry Stop and Frisk

 

ともかく、日本と違って、立法理由や規定の趣旨が問われることはなく、規範を覚えて、原則と例外、具体例を頭に入れれば良い感じ。やはり得点源にしたい科目である