ぺんぎんぺーぱーちぇーす -PennLawLL.M.留学記-

University of Pennsylvania Law School LL.M.(ペンシルベニア州フィラデルフィア)を修了し、日本に帰ってきました。留学時代のことやアメリカのことなどを細々と書いていきます。

NY Bar 4 - Criminal Lawの授業終了

ということで、2科目目のCriminal Lawの授業終了

とはいっても、たった1日で、しかもなぜかコマ数も少なく、実質3時間足らずの授業だった。それで刑法という科目の一応全てをカバーするんだからおそろしい

Tortsでも思ったが、アメリカの法律は、そもそも日本のように説が対立しているところが少ない。一応、MPC(Majority Penal Code。大多数の州が採用している説)とMinority Stateという違いはあるわけだが、何というか州ごとの思想の違いに過ぎなくて、日本でいうと、「県ごとに条例の細かい規定の内容は当然違いますよね」というくらいに思える

というわけで、説の対立に悩むこともなく、エッセイにおいてはいきなり規範をドンと書けば良い。そういう意味では、本当に暗記な試験だなと思った

某日本の先生と話してると「アメリカはすっきりしてていいよなー日本は本当バカだわ」とおっしゃっていたが、同意である

 

刑法は、比較的ニューヨーク法が特殊な部類に入るらしく、昨年までのアウトラインを見ると、まずはマルチステートの内容を説明して、その都度ニューヨークが異なる規定を採用している場合はそれを説明する。という感じだった。今年はMBE採用により差し当りはニューヨークプロパーの知識はないので、その点は楽になっている

以上の理由からアウトラインはニューヨークの知識も含んでいるので、修正した法がいいかもしれないが、それも面倒なので、僕は単純にニューヨークのところに×をつけて無視する形で済ませている

 

アメリカに来る時、仲のいい刑法のN先生から、「アメリカは手続法は発達しているけど実体法はイマイチだから、刑法はつまらないかもね」と言われた。それがいちばん好きな刑法ではなくEvidenceを履修した理由の一つでもある

実際刑法を勉強してみると、日本で問題となるところ(正当防衛や共犯など)が非常にあっさり説明されて、「ほんとにこんなんでいいの?」というくらい。ともかく構成要件(行為要件The act of requirementと心理状態Mental states)を丸暗記すればよさそう

内容についての面白かったこと、思いついたことなどをつらつらと。主に日米の相違について。同じなところについても少し

  • 作為義務の発生要件がわかりやすい(①法定作為義務(制定法、契約、被害者との関係、親子、配偶者、自主的保護の引き受け、危険の形成)、②作為義務を生じる事実についての認識、③作為可能性)
  • 犯罪を心理状態(mental state)で類型化する
  • 殺人(Homicide)が細かい(First degree premeditated muder, Murder, Felony murder, Voluntary manslaughter, Involuntary manslaughter)。ただし、日本の、傷害致死や強盗致死のように個々の犯罪の結果的加重犯としての類型化ではなく、殺人の一般的態様で類型化している、という違いによる
  • Strict Libalibityという抗弁が許されない犯罪類型があり、Staturory rapeについては年齢に錯誤がありいくらそれに合理的な理由があっても有罪になる。アメリカらしい厳しさ
  • 暴行罪と傷害罪の区別がない(両方Battery)
  • 窃盗罪(Larceny)と放火罪(Arson )の名前がかっこいい
  • Larcenyでは、行為時に故意が必要だが、返すつもりで了得し、のちに窃盗の故意を生じた場合は、continuing trespassとしてその時点で窃盗を成立させるという擬製がある。
  • 詐欺はFraudじゃなくてFalse Pretensesと呼ぶ。ちなみに、museのsupermassive black holeという曲に"You caught me under false pretenses"という歌詞があり、それを思い出す
  • 日本でも、相手を錯誤に陥らせて占有を移転させた場合は、終局的処分行為がないとして詐欺ではなく窃盗を成立させるが、アメリカでも、窃盗となる。理由付けが終局的処分行為の有無ではなく所有権titleの移転の有無、そしてLarceny by trickという名前が別についているという違いがあるが、発想としては同じ
  • 日本の強盗罪は「相手方の犯行を抑圧するに足りる程度の暴行・脅迫」によることが要件だが、アメリカのRobberyも"Any amount of force sufficient to overcome resistancy is sufficient"として、同じ要件。ただし、言い回し的にアメリカの法が要件がゆるいのかもしれない
  • 全体的に罪が少ない。賄賂罪とかはどこへいった…?
  • 日本の承継的共同正犯では、先行者の行為や結果を、自己の犯罪遂行の手段として積極的に利用する意思が必要とされる。これに対して、アメリカのAccessory after the fact(事後共犯)理論は、①重罪を犯した実行犯を助ける、②犯罪行為について知っている、③実行犯の逮捕、有罪判決を防ぐ意思、というのを要件としている。つまり、要件が違うのはもちろん、日本は自己の犯罪として、アメリカは共犯者を助けるものとして、というように、そもそも概念自体が異なっている(そういう意味では、これを比較する実益はないかもしれない)
  • 日本の共謀共同正犯では、要件は、①共謀(意思連絡)、②正犯意思、③共謀に基づいた一部の者の実行、である。これに対してアメリカのConspiracy(共謀)理論は、①顕示行為(overt act)、②合意、③合意が共謀の目的を達成するためになされること、であり、正犯意思もいらなければ、そもそも犯行の実行もいらない
  • 心神耗弱がなく、心神喪失(Insanity)しかない
  • Voluntary intoxication(自主的酩酊)という原自行為的な理論があるが、specific intent crimesでしか抗弁とならないものの、日本のように面倒な要件がなく、判断能力が深刻に低下してさえいればよい
  • 正当防衛では、deadly force(致死的な力)という概念で場合分けがなされる。銃があるアメリカらしい

 

ざっとだけど、こんなところだろうか

ご存知のように日本の刑法はドイツの影響を受けている。ドイツ人の友達と一緒に授業を受けていたが、彼とはいろいろ話があったし、もちろん彼はtatbestandについてよく知っている

そういうわけで、アメリカの刑法とは相違点が多い。その意味では少し戸惑うところもあるが、全体的にsuperficialなので、そんなに難しくはなさそう

 

ということで、明日はCriminal Procedure