ぺんぎんぺーぱーちぇーす -PennLawLL.M.留学記-

University of Pennsylvania Law School LL.M.(ペンシルベニア州フィラデルフィア)を修了し、日本に帰ってきました。留学時代のことやアメリカのことなどを細々と書いていきます。

NY Bar13 - Constitutional Law

憲法は今日本で一番ホットな法律だといえると思う。ご存知のように日本憲法はアメリカの手によって作られ、その後もアメリカの判例法の影響を大きく受けているので、アメリカ法を学ぶことはすなわち日本法を学ぶことである

ところで、前に「アメリカ人は憲法を神聖化しないがきちんと守る。日本人は神聖化はするけど守らない」というようなツイートがtwitterで回ってきたが、実感としてそうだと思う

アメリカ人は憲法をもっと身近に感じている雰囲気がある。やはり、歴史的に自分たちで勝ち取って発展させてきたもの、独立と自由の象徴、という自負があるのだろう

*逆説的に、日本の憲法が「押し付け」られたものであることの影響は否定出来ないと思うが、これが改憲の理由になるとは考えていません

 

憲法(の人権規定)は内容的に楽しいのでちょっと筆が乗ってしまい、一応簡単なアウトラインのようなものになった。一応これですべての範囲を簡単に網羅している

 

 

まずは三権分立の話から 

FEDERAL JUDICIAL POWER 連邦裁判所の権限

1 Justiciability 司法判断適合性

つまりそもそも憲法訴訟の対象となるかという論点。日本では「法律上の争訟にあたるかどうか」という部分

①Standing 原告適格

Injury(損害)やCausation(因果関係)、Redressibility(救済可能性)が必要。第三者の場合は原則的に認められないが、両者間に密接な関係があったり、権利侵害を受けた当事者が当事者がその権利を主張しない可能性が高い場合は例外的に認められる。

また、原則的に市民・納税者という地位に基づく原告適格は認められないが、例外的に、国教樹立禁止条項違反の金銭支出、修正10条違反については認められる。

②Ripness 成熟性

未だ法律違反に問われていない場合は、成熟性を欠く。しかし、早く判断を得ないと困難が大きくなったりする場合には例外的に訴えを起こせる

③Mootness 非争訟性のなさ

提訴後の事由により権利侵害がなくなった場合は、ムートになったとして却下されてしまう。つまり、現実の紛争(救済の必要性)が必要である。

④Political Question 政治的問題

立法権司法権が判断すべき政治的問題には、裁判所は介入しない

 

2 Supreme Court Review 最高裁における司法審査

Writ of certiorari(裁量上告制度)による

 

3 The principle of sovereign immunity 主権免責

州が独立した司法権を有する。連邦裁判所で州を訴えることはできない

 

FEDERAL LEGISLATIVE POWER 立法権

1. Congress's authority to act 連邦議会の権限

CongresstはArticle 1 Section 8で示された権限を有する。tax, spending, commerceが主たるもの。修正10条によって、その他の権限は州政府の下にある。

commerceについては,比較的無制限に解されていたが,有名なLopez判決により限界があると判示された(学校の近くで銃を持つことは経済的活動ではないから規制権限は州にある)。

police powerは基本的には州政府に留保されているが、軍事、ネイティブアメリカン保留区、連邦領、DCについては例外的にCongressが権限を有する

なお、Congressは自由に権限を移譲できる

2. Legislative veto 立法への拒否権 

Congressの権利発動のためには、Bicameralism(両院可決)とPresentment(大統領への送付)が必要

大統領はsign(署名)かveto(拒否権行使)か選べる。特定項目に対してはできない

 

FEDERAL EXECUTIVE POWER 執行権

1. Foreing policy&Commander in chief 外交権&最高司令官

これはPresidentに属する。州には外交権はない

2. Domestic affairs 内政

appointment power, removal power, pardon powerはPresidentが有する

ただ、Presidentはimpeachまたはremoveされうる

  

FEDERALISM 連邦制

1. Preemption

憲法及びそれに従って制定された法律は最高法規である(supureme law of the land)

これに反する州法は無効となる

 2. Dormant Commerse Clause & Priviledge and Immunities Clause (Article 4.2.1)

Dormant Commerce Clause

これは名前がミスリーディングだが、要するに、Congressが法律を定めていなくても、憲法によってinterstate commerceについての権限がCongress (Federal)に授与されていることにより、黙示的に、州によるinterstate commerceの規制が禁じられている、というものである。

つまり、このnegativeな結果を生むのがdormantということらしい。ネーミングがよくわからない…。

もっとも、州による規制自体が全く許容されていないというわけではなく、undue burdenな規制が禁じられているということに注意。また、Congressの承認があればこの限りではない 

Privileges and Immunities Clause

また、他の州民の特権・免除を否定してはならない

この判断基準は、原則は違法なものの、以下の2要件を満たせば例外的に合憲となる

Government must show that...

  1. It's necessary to achieve an important government purpose
  2. There is no less discriminatory alternative to achieve the goal

3. Taxation of interstate commerce

課税のためには州との実質的関連(substantial nexus)が必要

4. Full faith and credit

Jurisdiction, on merits, final(管轄・本案判決・終局判決)の要件を満たした場合は、連邦裁判所・他州裁判所の判決を執行(enforce)しなければならない

 

ここまでが統治の分野。当然だが、日本と違って天皇の話はなく、連邦制の話が多い。権限の分配の議論は国の特徴をつかむ上でも面白いが、難しくてややこしい

ここからは人権の話。こちらのほうが断然面白い

  

 

GENERAL of CONSTITUTION'S PROTECTION OF INDIVIDUAL LIBERTIES

1. Government action

憲法問題とするには、当然、政府の行為である必要がある。ただし、政府が憲法違反(人種差別等)を促進する場合もこれに当たる

また、伝統的に政府が専属的に行ってきたことを私人が行う場合には憲法が適用される(public functions exception)。私人間効力のような議論である。

2. Incorporation of the Bill of Rights 編入理論

日本法でよくありそうなテクニカルな条文操作

Bill of Rights(権利章典)と呼ばれる修正1〜10条の人権規定はもともと連邦政府に対するものである。しかし、これらは、修正14条のデュープロセス条項を媒介とする編入により(?)、州政府にも適用されることになる。

ただし、以下の4つは例外で、州政府への適用がない

兵士を民家に宿泊させない権利、刑事の大陪審による起訴、民事の陪審による審理、過剰な罰金禁止

*もっとも、これは単に憲法上の権利が州には及ばないということに過ぎない。ほぼすべての州において、民事で陪審制を受ける権利が法律で保証されている模様

3. Levels of Scrutiny 審査基準

  • Rational Basis Test 合理性の基準(合憲推定); The plaintiff must show that it's rationally related to a legitimate govermental purpose. 

  • Intermidiate Scrutiny 中間審査基準(違憲推定); The government must show that it's subtantially related to an important governmental purpose

  • Strict Scrutiny 厳格審査基準(違憲推定); The government must show that it's necessary to achieve a compelling governmental purpose

日本と違って、「こういう時はこの審査基準」というのが非常に明確に決まっていて(一部不明なものもあるが)わかりやすい。日本もこうだったらいいのに

 

 

DUE PROCESS デュー・プロセス

ProceduralとSubstantiveとがある。要するに、国家による個人の生命・自由・財産という権利の侵奪(deprivation)が許されるかという話で、憲法の核となる概念である(修正5条、14条)

1. Procedual Due Process 

侵奪には、fair processが必要。その判断の際には以下の3要素の比較衡量(Three part balancing test)を行う

  • Importance of the interest to the individual
  • Ability of additional procedure to increase the accuracy of fact-finding
  • Government's administratrative and fiscal interests

2. Substantive Due Process

Takings Clause 収容条項

公共の用のための収容には、正当な補償が必要

Contracts Clause 契約条項

州政府は契約上の義務を遡及的に無効にすることはできない(Article 1.10.1)

Right to privacy プライバシー権

アメリカの裁判の歴史で広がってきたプライバシー権。各々の権利ごとに、審査基準が異なる

  • Strict Scrutiny; Marry, Procreate, Custody of one's children, Keep a family together, Control the upbringing of one's children, Contraception, Travel, Vote(婚姻、出産、子の監護権、家族の同居、避妊、旅行、投票)
  • Rational Basis Test; International Travel
  • その他; Abortion, Private concensual same-sex activity, Bear arms, International travel(中絶、同姓の性行為、武器保有、外国旅行)
  • 権利性否定; Physician aided suicide, Education(医師の助けによる自殺、教育)

 

 

EQUAL PROTECTION (14th AMENDMENT) 

平等条項

1. 基本

どのような区別かによって審査基準も変わる。修正14条は、直接的には州政府にしか適用されないが、修正5条を通じて連邦政府にも適用される

2. Classification Based on Race, Alienage, and National origin

人種、国籍、出身国という本人には変えられない重要な出自による差別は許されない。Strict scrutinyによる。

*大学のaffirmative actionについては、compelling interestが必要。多様性確保はこれに当たるので、人種の考慮は許されるが、人種に基づいて自動的に点数を与えるような場合は違憲

3. Gender Classification

Intermidiate Scrutinyによる。ただし、過去の差別を救済するための区別(classification designed to remedy past discrimination and differences in opportunity。つまりアファーマティブアクション)は認められる

4. Alienage Classigifation

基本的にはStrict scrutinyによるので、比較的厳しいと思われる。ただし、統治体としての州の性格に結びついている(integral to self government)の場合は、市民要件を課してもよい(警察官や陪審など) 

5. Legitimacy Classification (Discrimination againt Non-Marital Children)

つまり、非嫡出子に対する差別である。日本でもこれがやっと考慮されたわけだが、アメリカは離婚が非常に多く、非嫡出子の数も甚大なので、かなり早い段階に認められたのかなと思う。

Intermidiate Scrutinyによる。あからさまな区別は違憲

6. Other Types of Discriminatiuon/Classification

その他は、一番ゆるい基準であるRational Basis Testによる

Age, Disability, Wealth, Economic regulation, Sexual orientation(年齢、障害、富、経済規制、性的嗜好

Sexual orientationはLGBTとも関連するので(上のsame sex activityもそうだが)今後もう少し権利性が認められていくかもしれない

 

1st AMENDMENT - FREEDOM OF SPEECH

1. Types of Restriction

Content Basis Restriction 内容規制

言論自体の主題や思想といった内容自体を規制するものなので、Strict Scrutinyが用いられる

Content Neutral Resriction 内容中立規制

内容にかかわらない規制なので、もう少し規制がしやすい。Intermediate Scrutinyによる

2. Prior Restraints

事前抑制のこと。言論を差し止める裁判所の作用をいう。これはそもそも言論が発表されることを妨げるものなので、当然Strict Scrutinyによる

3. Vagueness and Overbreadth

どちらも日本の憲法解釈でも取り入れられている

Vaguness 曖昧性ゆえに無効

曖昧すぎる基準は、何がダメで何がいいかわからないから無効

Overbreadth 過度の広汎性ゆえに無効

あまりに広すぎる規制は無効

4. Symbplic Speech

象徴的言論も保護の対象となる。①政府に抑圧に関連しない重要な利益があり、②言論の効果が政府の目的達成に必要な程度より少ない場合は、規制できる。

保護されるもの;Flag burning, Contribution limits to election campainge

保護されないもの;Draft card burning, Nude dancing, Expenditure limits to election 

5. Obscenity and Sexually Oriented Speech。

以下の要件を満たすと制限の対象となる

(i) patently offensive

(ii) lack serious redeeming artistic, literary, political or scientific value

6. Commercial Speech

Intermdediate Scrutinyによる

7. Other Speeches

  • Anonymous Speech: 匿名でいる権利もある
  • Government Speech: 政府によるものは性質上合憲。私人の言論への政府補助は、政府の正当な利益に合理的に関連する限り合憲
  • Incitement Illegal Activity (clear and present danger): 違法行為を教唆する言論は、それが差し迫ったものであれば、制限可能(明白かつ現在の危険)
  • Child Pornography: わいせつ性がなくても禁止可能
  • Falsity: 言論が間違っていたとしても修正1条の保護対象。別途その言論の害悪の検討が必要

9. Defamation

名誉毀損の対象によって類型化されている

  • Public Officials or Candidates: 公益性が高いので、公務員が虚偽及び現実的悪意(falsity and actual malice)を示す必要がある
  • Public Figures: 基本的に同上。ただし上と違ってclear and convincing evidenceは不要
  • Private Figure in a matter of "Public Concern":虚偽と過失を立証
  • Private Figure

10. Public Forum

伊藤正己裁判官が紹介したあれの元

  • Public Forum: 政府の敷地。表現活動のために開放しなければならない。Strict Scrutinyによる。e.g. 歩道、公園
  • Designated Public Forum: 政府の敷地。閉鎖もできるが、言論のための場所
  • Limited Public Forum: 政府の敷地。一定のグループや題目に限る。e.g. 市長の講演のために公開した場所
  • Non-Public Forum: 憲法上言論禁止が許されている場所。合理的理由があれば良い。e.g. 軍基地、刑務所の外、学校、空港

このように、二元論ではなく4つの類型がある

 

1st Amendment - Other Rights

1. Freedom of Association

Punishing membershipt/joining groupについてはStrict scrutinyが適用される。

政府は、(i) actively affiliated with the group, (ii) knowledge of the group's illegal activity, (iii) had specific intent to further those illegal activitiesを立証しなければならない。差し迫った危険要件がないあたり、日本の泉佐野事件の基準よりはゆるそうである

2. Freedom of Religion

Free Exercise Clause 

これは、「宗教上の行為を自由に行うことを禁じる法律は違憲」というもの。宗教的理由を理由に解雇したりすることは当然に許されない

Establishment Clause

ここでいうestablishmentとは国教樹立のことである。要するに、政教分離原則のことである

基準は、日本でも知られているレモンテストである。

(i)  There has to be a Secular purpose for the law

(ii) The primary Effect must be neither to advance nor inhibit religion

and (iii) There must be eXcessive government entanglement with religion

この3つを満たすと違憲となる。SEXで覚えろとのことである

 

レモンテストのほうが、目的効果基準よりも違憲になりやすい(つまり、政治と宗教のつながりに敏感)ということが言える。

 

 

だいたいこんな感じです。憲法は、日本が多くの概念を輸入しているし、人権規定については生の概念を勉強できて面白い(ただ、設問は微妙で難しい)。

統治についてはアメリカならではのfederalとstateの関係という厄介な問題があるので、がんばりたい