ぺんぎんぺーぱーちぇーす -PennLawLL.M.留学記-

University of Pennsylvania Law School LL.M.(ペンシルベニア州フィラデルフィア)を修了し、日本に帰ってきました。留学時代のことやアメリカのことなどを細々と書いていきます。

平成30年司法試験会社法再現答案

設問1
1 Dの請求
(1)Dは会社法(以下略す。)433条1項1号に基づき甲社に対して総勘定元帳及び補助簿のうち仕入れ取引に関する部分の閲覧請求を行う。
(2)ア Dは甲社の発行株式1000株の五分の一に当たる200株を有する「発行済株式の百分の三以上の数の株式を有する株主」(同項柱書)である。
イ 「会計帳簿又はこれに関する資料」(同項1号)とは、閲覧請求の趣旨が株主に対する会社の情報提供を図ることにあることから広く解すべきであるところ、総勘定元帳及び補助簿のうち仕入れ取引に関する部分はこれに当たる。
ウ 「請求の理由を明らかにして」とは、株主による濫用的閲覧請求を防止し、株主の権利と会社の経営の保護のバランスを図るために求められていることから、濫用でないことが分かる程度に対象としている文書が特定でき、また拒絶事由の判断ができる程度に具体的に記載されていることを要する。
 本件で、Aが仕入先からリベートを受け取っている疑いがあり、Aの取締役としての損害賠償責任の有無を検討するためという理由を明らかにしている。これにより濫用的でないことがわかるし、上記具体性を満たしているといえる。
(3)したがってDの請求は認められそうである。
2 甲社の主張
 これに対し、甲者は同条2項の拒絶事由の存在を主張する。
(1) 3号
ア 拒絶事由による拒絶が認められている趣旨は、会社の機密情報の漏洩を防ぎ、もって会社に損害が生ずることを防ぐことにある。
 そこで、「実質的に競争関係にある事業を営み」とは、製品や市場を考慮して、両者の事業が実質的に競合しているか、あるいは近い将来競業することが明らかである客観的事実を証明すれば足り、主観的意図の証明は要しない。
イ 本件で、たしかに、甲社とDが100%株主であり実質的な経営権を有する乙社はともにハンバーガーショップを営んでおり製品は競合している。しかし、甲社は関東地方のP県で事業を行っているに対し、乙社は近畿地方のQ県でこれを行っており、市場は競合していない。また、甲社が近畿地方に出店するような予定もなく、将来的な競合もない。
 したがって、「実質的に競争関係にある事業を営」んでいる客観的事実はない。
ウ よって同号の拒絶事由はない。
(2) 1号
ア 上記趣旨から、Dが「その権利の確保又は行使に関する調査以外の目的」を有している客観的事実を証明すればよい。
イ 本件で、Dは前述のようにAの取締役としての損害賠償責任の有無を検討するために必要である旨一応Aに伝えている。しかし、その後、甲社に対して興味を失い、Aがリベートを受け取っているかどうかは本当はどうでもいいと述べ、AにD保有株式の買い取りを重ねて求めている。すなわち、Dの請求の真の目的はAを脅迫し、請求撤回と引き換えに株式買い取りを求めることという調査と関係ない不当なものである。
 そうすると、上記事実から、Dが取締役の責任追及という株主の「権利の…行使に関する調査以外の目的」を有していることが証明できる。
ウ よって同号の拒絶事由がある。
(3)以上より、甲社の閲覧拒絶の主張は認められる。
設問2
1 小問(1)
Cは本件決議1及び2の取消しの訴え(831条1項)を提起する。Cは甲社の「株主」であり、決議日である平成27年3月25日から「三箇月以内」であるから訴訟要件は満たす。
(1) 本件決議1について
ア まず、AがDの議決権を代理行使していることは、議決権の代理行使は一般に法律上認められていること(310条1項)、甲社の定款に代理人を限定する旨の定めもないことから、適法である。
イ Cを取締役から解任する旨の議案につきCが議決権を行使しているが、Cは「特別の利害関係を有する者」に当たり、同項831条1項3号の取消事由がないか。
 「特別の利害関係を有する者」とは、議決権行使により他の株主と共通しない特別の利益を得、又は不利益を免れる株主をいう。
 本件で、決議がされればCは取締役という強大な権限を有する地位を失うことになるのだから、反対票を投じることで同地位の喪失を防ぐという他の株主と共通しない特別の利益を得るのだから、「特別の利害関係を有する者」に当たる。
 もっとも、A、B、Dの代理人としてのAの投票でCは解任案は可決されているのだから、「著しく不当な決議がされた」とはいえない。
 したがって取消事由にはならない。
ウ よって、本件決議1につき取消事由はない。
(2) 本件決議2について
ア Cの株主提案は314条1項に基づくものとして有効であるが、議長Aは、Cが提案理由としてのAの不正なリベート受取について説明しようとしたところこれを打ち切っている。「決議の方法が法令…に違反」(831条1項1号)したといえないか。
(ア)314条は取締役が説明を要求された時に発生する説明義務についての規定であり、説明が打ち切られた本件には適用がない。そこで議長Aに議事整理権(315条1項)の違反があったといえないか。
(イ)議事整理権の趣旨は、株主が経営に参与する重要な機会である株主総会を適正に運営し、もって株主の権利を確保することにある。他方で、時間的制約等の都合も無視できない。
 そこで、株主総会を適正に運営する必要性が認められ、相当なものであれば、設問の打ち切りも議事整理権の範囲内として認められると解する。
(ウ)本件株主総会に出席しているのはA、B、Cのわずか三名であり、説明などに時間的制約があったとはいえない。また、CはA解任議案の提案の理由としてAが違法な行為をしていたことを説明しようとしたのであり、その説明は議案に関連し、議決権行使の判断に必須のものである。にもかかわらず、AはCの説明は議案と関連がないとし制止し、直ちに裁決に移っている。
 したがって、上記必要性・相当性は認められないから、議事整理権の範囲内と認められない。
(エ)したがって、上記違法事由がある。
イ 裁量棄却(831条2項)の有無につき、Aの行為は自らの解任議案について自らの違法行為が曝露されることを防ぎ、もって株主が議決権行使に必要な情報を遮断し、強行採決に移っているものであり、「違反する事実が重大」といえる。
 したがって裁量棄却はされない。
ウ 以上より、本件決議2は取り消される。
2 小問(2)
(1) Aに対する請求
ア 甲社の「株主」(847条2項)であるCは、株主代表訴訟(同条1項)によりCの任務懈怠責任(423条1項)を追及する。
イ 「任務を怠った」とは会社を名宛人とする法令に違反すること及び善管注意義務(360条、民法644条)、忠実義務(355条)に違反することをいうが、利益相反取引(356条1項2号3号)を行っていれば取締役会による承認(365条1項)の有無を問わずこれが推定されるので(423条3項柱書)、当該取引該当性を検討する。
(ア)直接取引(2号)
 法が利益相反取引を規制する趣旨は、取締役が会社の利益を犠牲にして自己又は第三者の利益を得る行為を規制することで、取締役の忠実義務違反を防ぎ、もって会社ひいては株主に不測の損害を被らせることを防止することにある。そして、実質的に利益が衝突するものは間接取引として捕捉すればよいから、同号の「ために」とは「契約当事者としての名義で」の意味と解する。
 本件で、連帯保証契約はあくまで甲社と丙銀行の間で行われているから、取締役Cが自己又は第三者の名義で行ったとはいえない。
 したがって直接取引には該当しない。
(イ)間接取引(3号)
 利益相反取引を規制する趣旨は前述のとおりであるが、他方で、間接取引は外部からわかりにくく、取引に入った第三者の取引安全を確保する必要性もある。
 そこで、間接取引に当たるか否かは、外形的・客観的に見て会社の犠牲で取締役が利益を得る関係にあるか否かにより判断する。
 本件で、たしかに甲社が保証したのは甲社の取締役ではないGの債務である。しかし、Gが丙銀行から借り入れた800万円はD保有株式の買取資金であり、そして、それはAにD保有株式買取り頼まれたことに起因する。そして、Aがこの買取りをGに頼んだのは、C解任の議案についてDが反対し否決されることを恐れ、買取りを対価としてDから議決権の代理権を得ることにある(本件契約(3))。そうすると、甲社がGの丙銀行に対する800万円の債務を連帯保証することは、AがDの議決権を得ることに繋がり、Aの利益となる。
 他方で、仮に甲社が保証料の支払を受けて連帯保証をする場合には保証料は60万円を下回らないものであったにもかかわらず、甲社はGに保証料の支払いを求めないとされている(本件契約(2))。これは明らかに甲社の不利益といえ、実際に、甲社は丙銀行に保証債務を800万円全額弁済し、Gが求償に応じないことで800万円の損失が生じており、甲社の不利益となっている。
 そうすると、外形的・客観的に見て甲社の犠牲で取締役Aが利益を得ているといえるから、間接取引に当たる。
 したがってAが「任務を怠った」ことが推定され、さらにこれを否定するに足りる事情はない。
ウ 上記間接取引という任務懈怠「によって」、甲社に800万円の「損害」が生じている。
エ 以上より、Aは800万円の損害賠償責任を負う。
(2) Gに対する請求
 Gは、甲社からの求償に応じないという「過失」「によって」甲社に800万円の債務を負わせるという「損害」を与えているから、民法709条により不法行為に基づく同額の損害賠償責任を負う。
設問3
1 本件請求の効力を否定するBの主張が認められるか否かにつき、174条が株式を相続により取得した者に対する株式売渡請求権を定款で定めることができるとしている趣旨が問題となる。
2 法が、株式は譲渡が自由であるのが原則であるとしながら(127条)株式に譲渡制限(107条1項1号)を設けることで非公開会社(2条5号参照)となることを認めているのは、会社が好ましくない者を株主とすることを防ぎ、もって会社や株主の利益を守る必要性を認めるべき場合があることによる。
 そうすると、174条の趣旨は、相続により好ましくない者が株主となることがあるから、この場合に会社に売渡請求を認めることで、上記利益保護を徹底することにある。
したがって、請求が認められるのは、当該株主を排除するのが会社経営上会社や株主の利益となる場合に限られると解すべきである。
3 本件で、Cは、自らが代表取締役社長の地位にとどまりたいとの自己保身という不当な目的で、自らが議決権の過半数を確保するために最低限必要な401株についてのみ上記請求を行っている。そして、BはA及びCとの合意に基づいて代表取締役社長として職務を行うことになっており、またそもそもBはもとから甲社株式を有していたのだから、Bを排除することが会社や株主の会社や株主の利益となるとはいえない。
4 したがって、本件請求は方の趣旨に反するから認められず、Bの主張が認められる。
以上

 

 

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設問1の競業は判例があったようであっさり否定すべきでなかったようです(とはいえマイナーなので出来なくても良かったと思います)。典型論点である競業の3号に引っ張られず見慣れぬ1号もきちんと検討できたのは良かったと思います。

設問2は否決決議の訴えの利益をすっかり忘れました……。特別利害関係人はこれでなるのか?と思いつつも他に書くことが思い浮かばなかったこと、論点として落としがちで気をつけろと散々言われていたので書く選択をとりました。とはいえ判例の結論はならない模様で、厚く論じるべきではなかったかもしれません。

また、利益相反を予想しすぎてかなり対策をしていたのですが、それに引っ張られて利益供与を丸々落とすという失態をやらかしました…。

本番でもあれ…ほんとに間接取引になるのか…?とは思ったのですが…。冷静になって考えてみると外形的客観的に判断するなら今回みたいに連なりあってめぐりめぐって結果的に取締役と会社の利益が衝突するような場合は外からわからないから当たらないだろうなぁと思います。実質的に判断するとかの規範立てたならあたりうるんだろうけど…。

利益供与は苦手な論点で落としがちだったのですが、今回は利益相反で決め打ちしてしまったのでそこまで頭が回りませんでした。まぁやむを得ないかな。

設問2は難問だったようですし、一応間接取引もあり得る筋のようで、致命傷となっていないことを期待します。

設問3は株式の数に突っ込めませんでしたが、現場思考問題なのでこれくらい書ければいいのでは?と思っています。

途中答案にならず最後まで書き切ることが会社法では課題だったので、その点は良かったです。