ぺんぎんぺーぱーちぇーす -PennLawLL.M.留学記-

University of Pennsylvania Law School LL.M.(ペンシルベニア州フィラデルフィア)を修了し、日本に帰ってきました。留学時代のことやアメリカのことなどを細々と書いていきます。

平成30年司法試験国際私法再現答案

第1問

設問1
1 まずDC間の親子関係の成否の検討に先立ち本件遺産分割の準拠法を検討する。本件遺産分割は被相続人に属する遺産を各相続人間で分割する手続であり、相続の問題に法性決定できるから、法の適用に関する通則法(以下略す。)36条による。
同条は被相続人の本国法を連結としているところ、この趣旨は、相続は被相続人に最も密接な関係を有する本国法によるべきことにある。被相続人Dの本国法は甲国法であるから、甲国民法⑥により、Cが相続人となるにはDの嫡出子でなければならない。
2 では、DC間の親子関係の存否の問題も、相続と関連する問題として甲国民法を適用し、同⑤によりCは嫡出子の身分を獲得するとすべきか。あるいは、甲国国際私法を適用して同②により婚姻の効力の準拠法によるとすべきか。
 たしかに、両者は密接関連性を有する問題であり、前者が後者のいわゆる先決問題といえるから、両者に同一の国の法あるいはその国の国際私法を適用すべきとも思える。しかし、異なる生活関係を分解し、各々について準拠法を決定するのが国際私法の立場であるから、DC間の親子関係の存否の問題は、別途法廷地の国際私法(通則法)により準拠法を決定するべきである。
3 そこで親子関係の存否の準拠法を考えるに、親子関係は婚姻から生じることが多いから24条1項によるべきともいえる。しかし、婚姻しても子がいるとは限らないし、婚姻以外の認知等によっても親子関係は生じうるし、同条は子の利益に一切配慮していないから妥当でない。また、親子間の法律関係として32条によるべきとも思えるが、これは親権者の決定等親子関係の権利義務についての規定であり、存否の判断には適当でない。また、28条はそれにより嫡出子となる子についての規定である。本件は嫡出でない子に親子関係が成立するか否かの問題なのだから、29条によるべきである。
 同条は1項と2項で選択的連結を採用している。この趣旨は、なるべく認知が成立して親子関係を成立させ、子の福祉を実現する点にある。また、1項後段等のセーフガード条項によりさらに子の福祉を図っている。
 本件は認知によらない母との親子関係の成立だから、1項により子の出生当時における母の本国法である甲国法が準拠法となる。甲国民法⑤により、前婚の子であるCはDAの後婚によりDの嫡出子の身分を獲得する。
4 以上より、DC間に親子関係が成立している。
設問2
1 甲国民法の改正により同⑤により発生した親族関係は消滅するとされているから、これによると、CはDの嫡出子としての身分を失い、Dの相続人となれない結果となる。
 しかし、本件は甲国法という「外国法によるべき場合」であるところ、この結果は公序則の発動(42条)により無効とならないか。
2 公序則の趣旨は、異質なルールを日本で適用することで、日本の基本的法秩序が破壊されるような結果が生じることを防止することにある。他方で、国際私法は原則として法の適用結果には関知しないし、公序を乱用すれば準拠法決定過程が無意味となるから、その発動には慎重でなければならない。
 そこで、①外国法適用結果の異常性と②内国との関連性の相関関係により発動の有無を決する。
3 ①につき、嫡出子としての身分は、相続権等の基礎となるだけでなく、憲法13条後段により保障される人格権とも関連する重要なものであるところ、一度成立したこのような重要な地位を法改正により事後的に剥奪するのは、同人を極めて不安定な地位に置くものである。したがって、適用結果は異常であるといえる。
②につき、Cは日本生まれで日本に居住する日本人であり、また、Cが相続するはずのDの財産も日本に残されている。したがって、内国関連性は強い。
以上の相関関係から、公序則を発動させるべきである。
4 公序即発動後の処理により、法改正による嫡出子身分の剥奪という結果のみを排除すればよいから、新たな法の適用を考慮する必要はない。
5 以上から、CはDの相続人となる。
設問3
1 Cの売却による持分の移転の準拠法が問題となる。
 たしかに、持分権は遺産分割の前提状態における権利であるから、相続財産の帰趨の問題として36条を適用すべきとも思える。しかし、持分権の移転においてそれは間接的関係でしかないし、直接的には不動産の物権変動すなわち権利の得喪が問題となっている。そして、登記請求権は「登記をすべき権利」(13条1項)の得喪の問題である。
 したがって、登記をすべき権利の得喪の問題として、13条2項を適用すべきである。
2 同条は原因事実完成当時の目的物の所在地法を連結点とする(不変更主義)。この趣旨は、それが当該物権変動等と最も密接な関係を有することにある。
 本件で、持分売却時の所在地法は日本法となるから、日本法が準拠法となる。
 民法は、遺産分割前の相続財産は共同相続人の共有とし、自己の持分については自由な処分を認めている(民法206条)。したがって、Cが他の共同相続人の同意を得ずに自己の持分をEに売却し、持分移転登記をしたことは有効であり、無効原因はない。
3 よって、Cの請求は認められない。
以上

第2問

設問1 小問1
1 まず、本件では管轄の合意(民事訴訟法(以下略す。)3条の7第1項)はない。
2 次に一般管轄(3条の2第1項)につき、「人」であるYの住所は甲国にあり、日本国内にはないから認められない。
3 (1) そこで特別管轄(3条の3)を検討する。同条の趣旨は、国際裁判管轄は日本の裁判所が当該事件に付き裁判所が裁判をする権利を有するか否かという問題だから、各号で、当事者間の公平、証拠の所在、応訴の負担などを考慮して裁判管轄を認めるべき場合を規定することにある。
3号につき、本件訴えは絵画の代金の返還を求める「財産権上の訴え」(上段)であるが、「金銭の支払を請求するものである場合」であるところ、Yは日本に財産を有していないから、「差し押さえることのできる被告の財産が日本国内にある」とはいえない。
4号につき、Yは日本に営業所を有しない(下段)。
5号につき、Yは甲国で個人で事業を営んでおり、日本への渡航歴もなく、「日本において事業を行う者(上段)に当たらない。
1号につき、「不当利得に係る請求」(上段)であるが、「債務の履行地」は甲国であって日本ではないし、「契約において選択された地の法」(下段)はない。
したがって同条による管轄は認められない
(2) もっとも、3条の4第1項により管轄が認められないか。
 Xは趣味で絵画の収集をしている個人であり「消費者」にあたる。Yは自己の事業のために本件売買契約の当事者となっている個人であり「事業者」にあたる。したがって、本件売買契約は「消費者契約」にあたる。そして、本件訴えは消費者Xの事業者Yに対する訴えであるところ、Xの住所は一貫して日本にあるから、同条の要件を満たす。
 したがって、同項により日本の裁判所に管轄が認められる。
4 もっとも、特別の事情があれば訴えを却下することができる(3条の9)。
本件売買契約の締結、代金の支払い、本件絵画の引渡し全て甲国で行われていること、本件絵画は甲国で著名な画家Pの作品とされており、鑑定等は甲国で行うことが適していることから証拠は甲国に存在しているといえる。また、Xは甲国に渡航しているのに対し、Yは日本に営業所等を有しない他、渡航歴すらないのだから、応訴における被告Yの負担は大きい。
 したがって、同条により却下できる。
5 以上より、日本の裁判所は国際裁判管轄を有するが、特別の事情ありとして却下できると考える。
設問1  小問2
1 契約は「法律行為」(法の適用に関する通則法(以下、「法」という。)7条)であるから、本件売買契約の有効性すなわち成立の準拠法は法7条以下による。
(1) 法7条は当事者間による準拠法の選択を認める。この趣旨は、私的自治を国際私法に反映させることにある。選択は明示・黙示を問わないが、現実の意思であることを要する。
 本件売買契約で準拠法に関する明示の定めはないほか、特定の国の法の条文への言及もなく、特定の国の法に有効な法律用語も使われていないから、黙示の選択もない。したがって現実の意思による選択はなく、同条の適用はない。
(2) 選択がない場合、法8条1項により契約の最密接関係地法が準拠法となる。そして、その際は「特徴的な給付」を行う当事者の常居所地法が最密接関係地法と推定される(同条2項)。この趣旨は、一般に契約においては一方当事者が職業的・継続的に多数の取引を行うことが多く、それらの契約の準拠法を揃えるべきことにある。そして、それは通常金銭の対価としての物やサービスの供給にある。したがって、「特徴的な給付」とは、金銭給付の対価としての反対給付をいうと解する。
 本件で、金銭給付を行っているのはXであり、その対価としての反対給付である本件絵画の引渡しを行っているのはYだから、「特徴的な給付」を行っているのはYである。そして、Yの常居所地法は甲国法だから、これが最密接関係地法と推定される。
 本件で、前述のように契約の締結・金銭支払・引渡しが全て甲国で行われていることから、これを覆す事情はない。
(3) したがって、甲国法が最密接関係地法となる。
2 (1) もっとも、本件売買契約は消費者契約であるから、法8条は排除され、契約の成立及び効力は消費者Xの常居所地法である日本法が準拠法となるのではないか(法11条2項)。同項の趣旨は、消費者は事業者に比して知識・経験等が不足し情報力・交渉力が低く不利益を受けやすいから、これを保護することにある。
(2) もっとも、同条6項により2項の適用は排除されないか。
 1号及び2号本文はいわゆる能動的消費者につき消費者保護の特例を排除するとする。この趣旨は、能動的消費者の準拠法を逐一確認することは困難であることから、国内的にのみ活動している事業者の準拠法に関する予見可能性を確保することにある。
本件で、Xは事業所が所在する甲国に赴き契約を締結し、また、甲国で履行を受けているから、これに当たる。
(3) もっとも、この場合でも、ただし書は契約締結や債務履行の「勧誘」をそこで受けていた場合は除くとしている。この趣旨は、自ら勧誘した者の予見可能性を保護する必要がないことにあるから、「勧誘」とは、積極的かつ具体的な働きかけでなければならない。
 本件で、Xは自らの意思でYの店を訪れ、価格交渉を申し出ているのだから、Yから何らの働きかけもも受けておらず、「勧誘」はない。
 したがってただし書の適用はない。
3 以上から、法11条6項1号・2号本文により同条2項の適用は排除されるから、法8条により、甲国法が準拠法となる。
設問2
1 本件訴えは、本件絵画の所有権の確認を請求するものであるから、「動産…に関する物権」(法13条1項)の問題であり、同項により準拠法が決定される。
2 同項が目的物の所在地法を連結点とする変更主義をとっている趣旨は、物権は物に対する支配的権利であるから、物の実際の所在地が適当であること、また、物権は所在地の公益と密接な関係を有していることによる。訴えにおいては、この「所在地」は、基準の明確化の観点、そして既判力はその時点の法律関係に生じると考えられていることから、口頭弁論終結時を基準とするのが原則である。
 もっとも、その時点でどの国にも属さない場所にある場合などで運送されている場合は、目的物の仕向地を「所在地」とすべきである。なぜなら、仕向地はその物の将来の所在地であり、物と最も密接な関係を有するといえるからである。
3 本件で、口頭弁論終結時において本件絵画は公海上の航行中の船舶というどの国にも属さない場所にある。そこで仕向地を検討すると、これは日本である。
4 したがって、日本が本件絵画の「所在地」となるから、日本法が準拠法となる。
以上

 

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第1問について

設問1の法性決定はこれで正しいか不明です…。ただ色々検討したので合っていれば結構点がつくと思います。甲国国際私法があったのは法廷地国際私法説について述べさせる意図だと思われます。

設問2は友達は公序で検討しておらず、初めて見た問題なのでこれで正しいか不明です。

設問3は判例があり、財産の帰属関係と物権変動で準拠法を分けるべきでした。設問1で生活関係で分けろとしながらここでは分けなかったのは矛盾ですね…。

 

第2問について

設問1はおそらくこれで正しいだろうと思います。国際裁判管轄を有するか、という問いではなかったので特別な事情による却下は検討してよかったと思います。特徴的給付や消費者の特例については直前に聴いた講座が役に立ちました。

設問2は薄い気がしますがこんなもんではないでしょうか……。