ぺんぎんぺーぱーちぇーす -PennLawLL.M.留学記-

University of Pennsylvania Law School LL.M.(ペンシルベニア州フィラデルフィア)を修了し、日本に帰ってきました。留学時代のことやアメリカのことなどを細々と書いていきます。

司法試験合格(予定)体験記②

【中日】

朝9時過ぎに起きると大学へ向かいました。昨年は一日中ホテルで勉強してたのですがあの空間にずっと一人でいて気が狂いそうだったので、今年は友人がいる慣れた環境で勉強したほうが精神衛生上いいだろうと考えたからです。

若干友達と終わった試験の話などしてしまい安堵したり焦ったりしながらも、気を取り直して短答と刑事系に気持ちを向けました。短答がとにかく怖かったので刑法についてはだいたい中日に終わらせるようにしました。

それから時間がなくて消化できていなかった直前フォロー答練をザッと眺めました。刑法の不作為犯については結果的にドンピシャでした。不作為は26年の過去問もそうですが時間の経過とともに刻々と情況が変わっていくためどの段階で何の義務を認定するかが難しく苦手意識がありました。

刑訴も領収書がドンピシャでした。犯行計画メモや領収書についてはこの段階になっても自分できちんと理解しておらず、友達に色々質問したり、問題集を漁ったり、有明に戻る電車の中でもそこを重点的に確認していました。この努力が報われて良かったです。

刑事系は中日に期待する人が多いと思うんですが、2日間の疲れと、都合5日程度離れていたことから案外充実した勉強はできませんでした。そもそもわからないことをこの段階まで残しておくな、という感じですし……(結果的に出題されてよかったわけですが)。

早めに引き上げる予定でしたが中々ノルマが終わらず、結局22時に大学を出て有明に戻り、風呂に入って寝ました。

 

【4日目】

試験前

また緊張してしまい寝付けなかったのか8時に目が覚める。刑事系は苦手意識は無かったですが、論文最終日というだからでしょうか。ただ「今日は書くぞ〜」という感じでめっちゃアドレナリンが出ていたように思います。

 

刑法

問題文を開いて思わず声が出そうになりました。小問形式……?憲法に続きお前もか……。

刑法は近年はとにかくスピード勝負でいかに速くかを肝に銘じて挑む予定だったので、肩透かしを食らった感じです。おそらく、昨年が量が多すぎて単なる事務処理問題・事例演習の切り貼りじゃないかと批判されていたのでそれを受けて考えさせる問題を出そう、というコンセプトだったのだと思います。

設問1は名誉毀損の各構成要件の確実なあてはめが問われました。名誉毀損は模試でもガッツリ出題されたこと、マイナー犯罪の構成要件を確実にするのを個人的課題としていたことからここは丁寧に(むしろ丁寧すぎるくらい)できました。判例が8人で少数、25人で多数としていたことも覚えていたのでうまく処理できました。

実は模試のときは公然わいせつが3人でも多数になるんだから名誉毀損もなるんじゃない?と伝播性の理論を無視して5人くらいで多数と認定して失敗していたのでした。

 

設問2は刑法としては珍しい主張反論方式で戸惑いました。不作為の殺人それ自体は時間経過による状況変化がなく、過去問やフォロー答練に比べれば簡単でした。

しかし、不作為の殺人と保護責任者遺棄致死の違いは殺意の有無ということは知っていたのですが、問題文を読むとなんだか作為義務の程度や危険の程度でも違いを設けるべきような気がしてそれも書いてしまいました。試験現場での思いつきは良くないんですが、殺意だけで区別するのはどうにも納得がいかず……。

合ってるか怖くて確認できなかったのですが、先輩と話したところ殺意の有無だけではなく作為義務の程度でも区別するのが通説のようです(遺棄罪を生命・身体に対する危険犯と理解する立場。山口刑法各論第2版38頁など)。

ここ間違っていたら大幅な失点だったので安心しました……。しかし、ここはあまり議論されていない箇所のように思うのですが、相場観としてはどんな感じだったんですかね?単に僕が知らなかっただけでしょうか…笑

設問3は難問だったと思います。ろくに書けませんでしたが、ここでは差がつかないと信じたいと思います(自分がわからない問題は他の人もわからないはずだと自信をもつことが重要です)。おそらく今回の問題は設問1の丁寧さと設問2で作為義務の程度についても書けたか否かで勝負が決まっているはずです(と信じたい)。

 

刑訴

刑訴は前回の記事で書いたように直前に勉強していた領収書が出たので、問題文を開いて目に入った瞬間笑ってしまいました。

とはいえこういうときほど余計なことを書いて失敗するというので、落ち着いて問題文を読むように意識しました。捜査も超典型論点だっただけにあてはめで差をつけられないようにスピードは保ちつつ事実を拾い評価をつけていくことを徹底しました。結果、なんとか証拠に40分弱程度残しつつ捜査を4頁半書けました。

それにしても、伝聞は平成22年あたりの問題に比べればかなり素直になったと思いますが、それでも全体の検討量は多いですね。事前に理解していないとその場で考えているようでは確実に時間が足りなくなるだろうと思います。

 

試験後

ホテルで一息つくとすぐに友達とモールに向かい短答を詰め込みました。

刑事系は2科目なので1日目、2日目に比べれば疲労はそうでもないですが、短答をしくじれば今までの努力が全て水泡に帰すと思うと恐怖心は一番であったかもしれません。それでも、模試でも論文は良かったこと、そして本番でも論文がそこそこできた自信があったことから、短答さえ通れば受かると自分に言い聞かせてがんばれました。

とはいえ、刑法はわりと完成に近くありましたが(それでも執行猶予とか総論部分は気力がわかず結構捨ててしまいました)、民法は全然全体が終わらないし憲法も統治をしばらく放置してしまったし、膨大な知識量を前にして絶望する思いでした。3科目で良かったと心底思いました。これを7科目もやっていた先輩方にはとてもではないですが頭が上がりません。

21時半過ぎにホテルに戻り、風呂に入って少しやり、しかし疲労がピークだったので残りは朝にやろうと諦めて寝ました。

 

 

【最終日】

試験前

7時過ぎに起きました。慌てて部屋を片付け(本当に直前に慌ててばかりだ……)、机に向かって民法を見直しました。もう時間がないのでパーフェクトの印がついているところをひたすら見ていくだけです、が、それでも集中力がものすごいので頭に入っていきます。

論文の試験前の詰め込みはあまり意味が無いと思いますし、それより答案全体やあてはめのイメトレをしたほうがいいと思いますが、短答は過去問がそのまま出ることが多いので直前までの勉強が本当に活きると思います。

会場についても直前まで勉強しました。緊張で頭がどうかなりそうでしたが、あえなく試験開始を迎えます。

 

民法

年度別に過去問を5年ほどやって時間管理に気をつけていたので時間内に一応終えることができました。しかし難しかったです。本当に民法が苦手で泣きそうになりました。これでも一応民法ゼミだったのですが……

試験が終わるとすぐさま憲法の百選とパーフェクトを見返しました。直前にできることを最後までやります。

 

憲法

案の定というか有名重要判例のオンパレードでした。どんだけ旭川保険条例事件が好きなんでしょうか??全体的に比較的スラスラ解けたと思います(とはいえ、蓋を開けてみれば細かい部分でひっかかっていましたが…)。統治はなんだかんだでそこそこできました。

試験が終わると昼食を食べながらひたすら刑法の詰め込みです。さっきも直前に見た判例が出たりしたので恥も外聞も捨て悪あがきを心がけました(試験前に余裕をぶっっこくのが目標でしたがその目標は恥とともに捨てました)。

他方で、不安だった民法憲法が終わったからか、はたまたいよいよあと残り一科目のみだからか、張り詰めていた緊張の糸がプツンと切れ猛烈な吐き気に襲われました。考えてみれば寝不足ですし起きてから試験中も休み時間もずっと勉強していたのです。おにぎり2個食べて糖分補給のロールケーキも半分食べたのですがなんでこんなものを食べてしまったんだろうと後悔しました。

 

刑法

学説問題でうへぇ……となり一度飛ばしましたが、戻って考えてみたらなんとか解けました。その他も徹底的に判例を読んだことが幸いしスラスラと解けました。

おそらく全体で肢2つだけ間違えたのですが、両方ともよく考えればわかったはずなので悔いが残るところです(信用毀損と横領の親告罪)。

とはいえ、最後まで考えて事なきをえた問題もありました。「おまえの妻Bをひどい目に合わせてやるという脅迫文が家に届いたが実際には妻ではなく内縁の妻。脅迫罪が成立するか」といった問題で、「別に内縁だろうと妻だろうとあんまり変わんないし……Bと名前も出てるから特定性も十分だし支配圏に到達してるし……。え、これ成立するよね?でもそうすると数が合わない……え?」と頭が爆発しそうだったのですが、終了10秒前くらいに、「あ、そうか脅迫の対象は民法上の親族に限られるんだから内縁の妻なら成立しないじゃないか」と気づけたのは本当にホッとしました。最後まで諦めず考えることが大事ですね。

 

 

試験後

というわけで試験が全て終わりました。短答の結果も気になりますし最終的な合否も気になりますし、論文の回答筋も気になりますし全く気が晴れません。とはいえ最後まで受けきれたことに一応は安堵です。

父に連絡をし、一緒にゼミをしてきた友達と苦労を労い合いました。そのまま打ち上げで飲みにでも行こうかと思っていましたが、疲れていたためまた今度ということになり友達とタクシーに分乗して家に帰りました。

家は現在シェアハウスに住んでいるので、そこの皆がおかえりーおつかれーと迎えてくれたのが嬉しかったです。試験前1ヶ月くらいは皆が顔を合わせる度に「試験いつだっけ!?そろそろ!?」と煽ってきて正直うんざりしていたのですが、何やかんやと言いつつ応援してくれていたので感謝です。「ま、多分受かったかな!」と虚勢を張りつつ内心はビクビクでした。とりあえず2ちゃんに張り付きサッサと短答の採点をしてしまいました。刑法が46点だったのでまぁこれなら足切りはないだろうと考える暇も与えないように憲法民法も採点し、無事に130点を超えていたのでやっと一安心し一息つけました。

 

というわけで長い長い5日間が終わり、久々に自分の家のベッドで眠りにつきました。本当にしんどい試験でしたが、目標に向かって毎日頑張る日々は幸せでもありましたし、論文で満足のいくあてはめができたときは楽しい勉強でもありました。

というわけで合格を祈りつつ体験記を終えます。